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サーター王国

(5)サーターの部族

Tribes of Sartar

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2002/01/03 ぴろき
この記事はホビージャパン刊『グローランサ年代記』、『Questline #1』誌を参考にして書いたものです。

 今では「古サーター」と呼ばれるクイヴィン山脈の麓の土地には、ヒョルトランドから移住してきたオーランス人の部族が数多くあります。それらは賢者サーター王によって統合され、およそ百二十年前にサーター王国としてまとまりました。しかし、サーター王家の滅亡、ルナーの占領、反乱と弾圧を経た今、かつては24あったサーターの部族もあるものは滅び、あるものは先祖からの生き方を捨てました。しかしいまだ伝統を失っていない部族も残っています。ここでは、1621年の時点での旧サーター王国の諸部族の動向について概観してみることにしましょう。

 なお、「□」が部族名の頭についている部族は、1621年の時点ですでに滅亡している部族です。

サーターの部族地図


ジョンスタウンの輪

 サーター王国成立直前のころ、テルモリ族に苦しめられていた周辺部族を“鎖帷子の”ジョンが率いていました。賢者サーターはテルモリ族との和平を実現してジョンや諸族の信頼を得ると、クイヴィン山の北麓に都市を築きました。これがジョンスタウンです。ランカー・マイの大寺院があることで知られるこの都市に集まるのは、次の四つの部族です。

■クルブレア族 Culbrea

 ジョンスタウンの南東の丘陵地帯に暮らす部族。人口は約6,000人。スターブロウの反乱ではクルブレア王“木々を跳び越す者”ホフスタリングとともに蜂起に加わりました。このため、敗戦後にルナーの命令で三つの氏族をアランウィース族とシンシナ族に移譲させられました。また、1615年にシンシナ族と戦った結果、さらにひとつの氏族を奪われ、もはや往事の威勢は失われています。

■シンシナ族 Cincina

 ジョンスタウンの北方の平野部に暮らす部族。人口は7,500人。スターブロウの反乱では帝国に与したために、戦後、版図を広げました。1615年に起きたクルブレア族との戦争では帝国の加勢を受けてこれに勝利し、ひとつの氏族を奪うことに成功しています。

■トーカニ族 Torkani

 ジョンスタウンの北東の彼方、藍の山脈の麓に暮らす部族。人口8,000人。かつてはクイヴィン山麓に暮らしていましたが、1460年ごろにやってきたテルモリ族によってその地を追われ、北東の藍の山脈に移住を余儀なくされました。トロウルの王国ダゴーリ・インカースが近いこともあって、暗黒の通商の神アーガン・アーガーが信仰されています。しかしこのことが、太陽神を奉じるファーポイントの諸部族による襲撃を招き、たいへんな被害を受けてしまいました。

■マラニ族 Malani

 ジョンスタウン西方の丘陵地帯に暮らす部族。人口1,1000人。コリマー族と並んで昔から大きな勢力を誇っている部族です。1350年ごろ、族長の娘リスメルダーが一団を伴って出奔し、アップランド湿原ばたにリスメルダー族を築きました。スターブロウの反乱では蜂起に参加しなかったため、鎮圧後にコリマー族から氏族を奪いました。

□マボダー族 Maboder

 ジョンスタウンの北東、現在“狼の地”と呼ばれる土地に暮らしていた部族。ボールドホーム侵攻には参加しませんでしたが、昔から親ルナー派でした。しかし1607年にテルモリ族の大侵攻を受けて全滅しました。ルナー帝国軍はこれを機にテルモリ族を討伐し、旧マボダー領をこの戦いで活躍したアガー人“狼の”ジョムズ・ホストラロスに与えました。


スウェンズタウンの輪

 1486年、“平和をもたらす者”サーターはバルコス族の戦士“跳ね足の”スウェンに請われてこの地に到来し、当時「守護者の丘」と呼ばれていた場所に都市を築きました。これがスウェンズタウンです。プラックスの遊牧民から幾度となく襲撃を受けて悩んでいた周辺の部族はこぞって輪に参加して力をあわせました。

 プラックスへの交易の始点であり、帝国に対する反乱に敗れた人々が逃げ込む場所になっていると目されています。

■アランウィース族 Aranwyth

 スウェンズタウンの北西にある盆地に暮らす部族。人口7,500人。スターブロウの反乱後、クルブレア族とケルドン族から氏族を奪って勢力を広げました。

■ケルドン族 Kheldon

 スウェンズタウンの西部にある渓谷を中心に暮らす部族。人口4,000人。1613年の大反乱の指導者カリル・スターブロウはこの部族の女王でした。乱後、厳しいルナーの弾圧を受けて受難の日々を送っています。

■バルコス族 Balkoth

 スウェンズタウンの東にある平野部に暮らす部族。人口5,500人。スウェンズタウンの名の由来となった“跳ね足の”スウェンはこの部族出身でした。

□ダンディーロス族 Dandealos

 スウェンズタウンの南方、嵐の山脈の東麓に暮らしていた部族。東にポルジョニ族をつくったデリク・ポルジョニはこの部族の出身でした。ルナーの徴税官が族長の娘を陵辱したことに怒り、1618年に帝国に対して反乱を起こしました。ルナー軍は徹底してこれを弾圧し、ダンディーロス族は滅ぼされました。生き残った者は奴隷に売られるか、ポルジョニ族のもとに亡命しました。ルナー教に改宗して残留を許された者もおり、彼らは帝国からの移民とともにエンスタロス族をつくりました。


ウィルムスカークの輪

 “都市建設者”サーターが最初に建てた都市がウィルムスカークです。1476年、クルタイン族とロカエム族がバルミール族とサムバリ族を追い払おうとしたとき、サーターはこれを仲裁することに成功しました。このとき、諸部族が集うためにウィルムスカークが建てられたのです。都市の名の由来となった人物ウィルムスはサーターの友人であり、現在もサーターの職人や工芸家に敬われています。

 1602年に帝国の手に落ち、スターブロウの乱に荷担したかどで帝国軍の進駐を受けています。

■サムバリ族 Sambari

 ウィルムスカークの東、嵐の山脈の北麓に暮らす部族。人口8,000人。1618年に“火の雄牛”氏族にからむ内戦に見舞われ、大きな被害を受けました。

■バルミール族 Balmyr

 ウィルムスカークの北東、クイヴィン山脈の南麓に暮らす部族。人口9,500人。もともとはもっと南の土地に暮らしていましたが、1400年ごろに南方から移住してきたロカエム族とクルタイン族によって父祖の地を追われました。

■ロカエム族 Locaem

 ウィルムスカークの西の平野に暮らす部族。人口8,500人。西境が陽の天蓋領と接しているため、イェルマリオ信徒との交流が篤く、エルマルを部族第一の守護神として奉じていることで知られています。スターブロウの反乱には加わらなかったため、乱後、帝国の命令でコリマー族から氏族の割譲を受けました。

□クルタイン族 Kultain

 ウィルムスカークの南の平野部に暮らしていた部族。1400年ごろにバルミール族を追い出して住みついていました。しかし1617年にルナー軍がヴォルサクシの地に侵攻した際、抵抗して敗北したクルタイン族は解体されて近隣の部族に吸収されました。その多くはヴォルサクシ王国のサイランギ族に入ったといわれています。


独立部族

 都市の輪に加わっていない部族もいます。

■コリマー族 Colymar

 クイヴィン山脈の西麓一帯を領する部族。人口15,500人。サーター地方でもっとも古く、かつもっとも大きな部族であるコリマー族は、1300年ごろにドラゴン・パス移住の第一波としてクイヴィン山麓に到来し、クリアワイン砦をつくって住みつきました。スターブロウの反乱では“岩砕きの”カライ族長のもと、帝国に対して蜂起しました。敗戦後、ルナー帝国はカライを追放し、その後に女王となったベティ・レイカをも陰謀によってしりぞけました。現在、帝国の支援を受けたブラックマー・カングハールが族長として人々にルナーへの服従を強いています。

■サイランギ族 Sylangi

 ウィルムスカークの南、かつてのクルタイン族の土地に暮らしている部族。人口6,000人。もともとはヴォルサクシの都市ホワイトウォールの北に住んでいましたが、クルタイン族が1617年にルナーによって滅ぼされた後、生き残りと彼らの領地を吸収しました。この結果、サーターからケタエラへ通じる交易路をおさえた彼らは繁栄を謳歌しています。

■リスメルダー族 Lismelder

 アップランド湿原の東側の平野部に暮らす部族。人口5,000人。1350年ごろ、マラニ族の族長の娘リスメルダーが、父親とたもとを分かって付き従う者たちとともにコリマー族の土地を渡り、当時無人だった平野に住みつきました。その後できたアップランド湿原のアンデッドに悩まされながらも、フマクトの英雄インドロダール・グレイドッグの指導のもと、近隣のダック族と同盟して勢力を強めました。

■エンスタロス族 Enstalos

 かつてのダンディーロス族の土地に暮らす部族。人口3,000人。1618年に帝国に反旗をひるがえして滅ぼされたダンディーロス族の生き残りと、ターシュやアガーからの移民が結成した新しい部族。ルナー信徒が多いため、周辺のサーター人には信頼されていません。

■ダック族 Ducks

 アップランド湿原の南にあるダック谷に暮らすダックたちの部族。人口7,000人。1380年にコリマー族と新興のリスメルダー族に土地を奪われましたが、その後これを取り戻し、リスメルダー族と同盟して湿原のアンデッドに対抗しています。スターブロウの反乱が起きた後は、ルナーと僣王テマーティンによってスケープゴートにされたため、ダックたちは野盗や川賊となるか、サーター地方から離れていきました。

■テルモリ族 Telmori

 かつてグバージを崇めたために、呪われて人狼となった人々の末裔であるテルモリ族は、1460年ごろにクリーク川を渡り、周辺の部族を襲って大きな被害を出しました。その後、賢者サーターの調停で和平を結んだテルモリは、以来、歴代サーター王に忠誠をささげたのです。1607年、テルモリ族は隣にいたマボダー族を滅ぼし、ルナー軍の討伐を受けました。戦後、彼らは旧マボダー領を“狼の地”として拝領したアガー人のジョムズと和平を結びました。テルモリ族はサーター王に忠誠を誓っているため、僣王テマーティンの近衛兵もつとめています。人口8,500人。

■ポルジョニ族 Poljoni

 昔、ダンディーロス族の戦士デリク・ポルジョニは家族をプラックスの遊牧民に殺されました。復讐を誓ったデリクはターシュ王に仕えて機会を待ち、ついにプラックスの遊牧民が英雄“牙傑”ジャルドンに率いられてターシュに襲来したとき、この英雄を倒して家族の仇を討ちました。1420年ごろ、デリクと部下たちはサーター地方の東、プラックス平原の西端にある「入らずの平原」に入って土着の遊牧民をしりぞけて住みつきました。デリクはふさわしい勇気と技量を示せばオーランス人でなくとも部族に入れるという法を定めたため、ポルジョニ族はいろいろな民族が混成する奇妙な部族となりました。後にポルジョニ族は賢者サーターにしたがって周辺の部族と和解し、王国の一員となりました。ルナーのサーター占領後も、ポルジョニ族は遠隔地にいるために中立の立場を保っています。

■狼の地 Wulfland

 1607年にマボダー族がテルモリ族に滅ぼされた後、テルモリの討伐に功績のあったアガー王国の傭兵“狼の”ジョムズ・ホストラロスに与えられた旧マボダー領のことです。ここの住民はルナー・ハートランドからやってきた農夫やルナー軍の退役軍人たちです。人口3,000人。


ファーポイント(アルダチュール同盟)

 サーター地方から北にドナルフ平原を越えた先にあるファーポイント地方は、もともとサーター王国には属していませんでした。しかし、ターシュ王国が完全にルナーの手に落ちた1582年、サーターの輪に参加しました。それから王国滅亡までわずか二十年しかなかったため、他の部族にくらべて王国への忠誠心は薄いといわざるをえません。

 1611年に起きた「正しき風の反乱」は、ヴァンタロス族の“鉄拳”ハーヴァーによって鎮圧されました。彼はプリンセロス族および大半のトヴタロス族に支持されています。彼に逆らったバハッド、トレス、アマドの三部族は大きな被害を受けました。現在、“アルダチュール公”を名乗るハーヴァーに率いられた部族連合「アルダチュール同盟」は、サーターにもターシュにも支配されていない親ルナー派の自治領となっています。

 東にあるアローンの街は、1583年にサーターのテラサリン王によって、ルナーの支配を嫌って亡命したターシュ人たちのために建設されました。1602年にルナーに征服されましたが、ダゴーリ・インカースや花の谷の巨人など古の種族の脅威が近く、ルナーの守備隊が進駐しています。

■ヴァンタロス族 Vantaros

 人口9,500人。アルダチュール同盟の盟主であり、“鉄拳”ハーヴァー公の出身部族であるヴァンタロス族は、ファーポイントでもっとも勢力の強い部族です。ルナーの支援を受けている彼らは、その覇権に刃向かう部族を弾圧しています。

■プリンセロス族 Princeros

 アルダチュールの北西に暮らす部族。人口10,000人。ファーポイントでもっとも数の多いプリンセロス族は、ハーヴァー公を支持しています。

■トヴタロス族 Tovtaros

 アルダチュールの北東に暮らす部族。人口4,000人。ハーヴァー公を支持するかどうかは部族の中でも意見が分かれています。

■アマド族 Amad

 ダゴーリ・インカースに近い北東の山奥に暮らす部族。人口2,000人。トロウルやドラゴニュートといった古の種族と接触することが多い異色の部族。アルダチュール同盟では非主流派。

■バハッド族 Bachad

 藍の山脈の西麓に暮らす部族。人口4,500人。ハーヴァー公の支配に逆らったために討伐され、逼塞を余儀なくされています。

■トレス族 Tres

 アローンの街周辺に暮らす部族。人口3,000人。アルダチュール同盟の中では弱い力しか持っていません。

■ディナコリ族 Dinacoli

 ファーポイントとサーターの間にあるドナルフ平原に暮らす部族。人口9,000人。1613年のスターブロウの反乱後に、ファーポイントの部族連合に参加しました。それまではジョンスタウンの輪に所属していました。


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