サーターの山間で素朴な田園生活を営むヒョルト人たちは、一年を1サイクルとした農耕・牧畜生活をはるかな古の時代からずっと続けてきました。一年のそれぞれの時期には決まった祭日と決まった作業があり、人々は父祖から伝えられてきた伝統と知恵にのっとって、日々の糧を得、神々に感謝し、生を楽しむのです。この神聖な周期が乱れることは、即、生活にとって大きな障害、時には氏族全体の命運をも左右する大事となります。それだけに、ヒョルト人たちは、いつどのような風が吹き、天候が移ろっていくかということをいつでも注意深く観察しているのです。
ここでは、ヒョルト人の一年の暮らしを概観してみることにします。
ヒョルト人は、一年の暦をはかるために、グローランサでおそらく最もよく使われている「太陽暦」を使っています。太陽暦では、1週間は7日で、季節は8週間ずつ5つあり、1年のおわりには「聖祝期」と呼ばれる特別な2週間があります。したがって、1年の長さは294日です。
【一季節】
日 | ||||||||
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週 | 闇 | 水 | 大地 | 風 | 火 | 荒 | 神 | |
混乱 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | |
調和 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | |
死 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20 | 21 | |
豊穣 | 22 | 23 | 24 | 25 | 26 | 27 | 28 | |
安定 | 29 | 30 | 31 | 32 | 33 | 34 | 35 | |
移動 | 36 | 37 | 38 | 39 | 40 | 41 | 42 | |
幻影 | 43 | 44 | 45 | 46 | 47 | 48 | 49 | |
真実 | 50 | 51 | 52 | 53 | 54 | 55 | 56 | |
月相 | 下弦 の月 |
新月 | 暮月 | 上弦 の月 |
上弦 半月 |
満月 | 下弦 半月 |
注意しなければならないことですが、ヒョルト人は1日を日没から日没までの間、と見なしています。つまり、太陽が没すると1日が始まります。そして、夜が過ぎ、日が昇り、中天を走って、また西の空に日が没すると、1日が終わって、また新しい日が始まるわけです。
五つの季節とは、海の季(春)、火の季(夏)、地の季(秋)、闇の季(冬)、嵐の季(晩冬)です。それぞれにどのような生活が送られるかは、下で詳しく述べます。
なお、ヒョルト人は一年のうち二十八個の日を「聖祝日」として神をたたえる祭りを行います。どの日がどの神の聖祝日なのかは決まっています。オーランスとアーナールダについては毎季節、聖祝日が設けられていますが、オーランスならば嵐の季、アーナールダならば地の季の聖祝日は、特に神聖なものとされ「大聖日」と呼ばれます。
一年の終わりである聖祝期は、グローランサの住人にとって特別な2週間です。なぜなら、グローランサを構成する五つのエレメントの移り変わりに従って、海、火、地、闇、嵐と遷ってきた季節が巡り終わると、いったん世界は終焉を迎えてしまうからです。新しい年を始めるためには、地上、異界を問わずグローランサ全体に住まうすべての者たちが、神話時代の故事にのっとって、世界を再創造しなければなりません。終わってしまった世界に再び活力を吹き込むために、世界中で“大いなる盟約”を再現する神事が催されます。これは全世界の住人が参加する一大ヒーロークエストであり、2週間の間、人々は混沌と戦い、混沌を打ち破り、世界を統べる“盟約”を結び、“曙”をもたらすために活動するのです。
また、この期間には翌年の作物の出来柄をはじめ、人々の運勢に関するお告げが神々からもたらされます。もし凶兆が示されれば、次の年は供犠を多く行い、神々にさらなる加護を求めなければならないでしょう。
ヒョルト人は、この2週間の間に、主に以下のような祭事を執り行います。
【聖祝期の暦】
日 | ||||||||
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週 | 闇 | 水 | 大地 | 風 | 火 | 荒 | 神 | |
幸運 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | |
運命 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | |
月相 | 下弦 の月 |
新月 | 暮月 | 上弦 の月 |
上弦 半月 |
満月 | 下弦 半月 |
聖祝期が無事終わり、新たな一年が始まると、最初に訪れるのは新たな生命と芽吹きの春である海の季です。この季節は畑の耕しと種まきが行われる農繁期です。風吹く春のうららかな陽気の中、初春に北西からやってきた嵐(雷鳴轟かすオーランスの姿のひとつである)によって潤された畑で、農夫たちは野良仕事に精を出します。牧人たちは新しく生まれた子羊を世話し、おなかをすかせた牛たちを春の乙女ヴォーリアの祝福を受けた緑豊かな牧草地へと連れ出します。さらに、氏族の間での交渉ごとや婚礼が新年を機に盛んに行われるのです。
【海の季の暦】
日 | ||||||||
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週 | 闇 | 水 | 大地 | 風 | 火 | 荒 | 神 | |
混乱 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | |
調和 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | |
死 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20 | 21 | |
豊穣 | 22 | 23 | 24 | 25 | 26 | 27 | 28 | |
安定 | 29 | 30 | 31 | 32 | 33 | 34 | 35 | |
移動 | 36 | 37 | 38 | 39 | 40 | 41 | 42 | |
幻影 | 43 | 44 | 45 | 46 | 47 | 48 | 49 | |
真実 | 50 | 51 | 52 | 53 | 54 | 55 | 56 | |
月相 | 下弦 の月 |
新月 | 暮月 | 上弦 の月 |
上弦 半月 |
満月 | 下弦 半月 |
夏である火の季は、活動と成育の季節です。海の季にまかれた麦の種は、ヘラー神のもたらす豊かな雨と太陽であるエルマル神の熱によってすくすくと育つため、この時期、人々は野良仕事から解放されます。この農閑期は、戦争の季節でもあります。手が空いた男たちは隣の氏族へ牛泥棒に出かけたり、あるいは氏族全体でまとまって宿敵の土地に攻め込むこともあります。男たちはこうした戦で勇気を証立て、戦利品とともに家族の待つ農場へと帰るのです。一方、人手を使ってさまざまな行事も催されます。氏族の長たちは誉れを勝ち取るべくさまざまな宴や祭りを挙行して近隣の人々を集めるのです。
【火の季の暦】
日 | ||||||||
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週 | 闇 | 水 | 大地 | 風 | 火 | 荒 | 神 | |
混乱 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | |
調和 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | |
死 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20 | 21 | |
豊穣 | 22 | 23 | 24 | 25 | 26 | 27 | 28 | |
安定 | 29 | 30 | 31 | 32 | 33 | 34 | 35 | |
移動 | 36 | 37 | 38 | 39 | 40 | 41 | 42 | |
幻影 | 43 | 44 | 45 | 46 | 47 | 48 | 49 | |
真実 | 50 | 51 | 52 | 53 | 54 | 55 | 56 | |
月相 | 下弦 の月 |
新月 | 暮月 | 上弦 の月 |
上弦 半月 |
満月 | 下弦 半月 |
アーナールダの祝福を受けた秋が地の季です。これは恵み深い収穫期ですが、同時に戦いではなく和平を求める時期でもあります。人々は再び畑や放牧地に赴いて終日忙しくはたらきます。やがて来る厳しい冬にも備えなければなりません。牛が屠られて肉にされ、狩人は森で獲物を捕らえて皮をはぎ、それらは収穫された麦とともに食糧倉庫に大切に保管されます。男たちは冬の寒気と雪に耐えられるよう、農場の補修に汗を流します。森で集められた枝や泥炭は、炭焼き小屋で冬用の炭や蝋燭にされます。また、最初の霜が降りると、冬の数少ない楽しみである麦酒が晩秋の冷気を利用して酒蔵で醸造されます。
地の季の二十四日目にあたる豊穣の週/大地の日はアーナールダの大聖日にあたり、盛大な感謝祭が開かれます。また、この日に収穫のための道具出しを一斉に行います。
【地の季の暦】
日 | ||||||||
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週 | 闇 | 水 | 大地 | 風 | 火 | 荒 | 神 | |
混乱 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | |
調和 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | |
死 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20 | 21 | |
豊穣 | 22 | 23 | 24 | 25 | 26 | 27 | 28 | |
安定 | 29 | 30 | 31 | 32 | 33 | 34 | 35 | |
移動 | 36 | 37 | 38 | 39 | 40 | 41 | 42 | |
幻影 | 43 | 44 | 45 | 46 | 47 | 48 | 49 | |
真実 | 50 | 51 | 52 | 53 | 54 | 55 | 56 | |
月相 | 下弦 の月 |
新月 | 暮月 | 上弦 の月 |
上弦 半月 |
満月 | 下弦 半月 |
次にやってくるのは一年でもっとも厳しい季節である闇の季です。その名のとおり、ドラゴン・パス地方は厚い雪と暗闇に閉ざされてしまいます。この間、ヒョルト人たちは家畜とともに農場の中に閉じこもり、ひたすら冬が過ぎ去るのを待ちます。農場の外では、深い闇の中でトロウルの群があちこちを略奪し、豪雪の上を冬の神ヴァリンドのしもべである氷の魔物が跳梁しているのです。死に至る寒気をしりぞけるのは、フマクト神である冬の北風と、家をあたためる優しい炉の女神マホーメイの灯火だけです。人々は暖かい家の中でほらばなしを競い、古の物語を語り、詩人の歌声に耳を傾けます。家の祭壇や農場の寺院では、加護を願って神々への供犠も盛んに行われます。
【闇の季の暦】
日 | ||||||||
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週 | 闇 | 水 | 大地 | 風 | 火 | 荒 | 神 | |
混乱 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | |
調和 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | |
死 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20 | 21 | |
豊穣 | 22 | 23 | 24 | 25 | 26 | 27 | 28 | |
安定 | 29 | 30 | 31 | 32 | 33 | 34 | 35 | |
移動 | 36 | 37 | 38 | 39 | 40 | 41 | 42 | |
幻影 | 43 | 44 | 45 | 46 | 47 | 48 | 49 | |
真実 | 50 | 51 | 52 | 53 | 54 | 55 | 56 | |
月相 | 下弦 の月 |
新月 | 暮月 | 上弦 の月 |
上弦 半月 |
満月 | 下弦 半月 |
冬の蓄えも少なくなった頃、嵐の季がやってきます。晩冬であるこの季節には、嵐の神オーランスが兄である冬の神ヴァリンドと激しく争います。強い嵐が吹き荒れますが、それは冬の寒気を徐々に吹き飛ばしていくのです。そろそろ食べ物が尽きそうな氏族は、生き延びるために近隣の氏族に襲撃をかけることもしばしばです。この騒々しい季節の間、人々は残り少ない食糧を宴に饗すると、冬の終わりに向けて活動をはじめます。オーランスがヴァリンドに勝利するころ、最初の耕作と種まきが行われ、牛小屋から家畜が野原へと連れ出されるのです。
嵐の季の三十九日目にあたる移動の週/風の日はオーランスの大聖日です。儀式の中、オーランス信徒は全員で神界におもむいて、オーランスとともに冬と暗黒との戦いに挑みます。凧や旗や煙が盛大にあげられて偉大なる神を終日たたえるのです。
【嵐の季の暦】
日 | ||||||||
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週 | 闇 | 水 | 大地 | 風 | 火 | 荒 | 神 | |
混乱 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | |
調和 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | |
死 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20 | 21 | |
豊穣 | 22 | 23 | 24 | 25 | 26 | 27 | 28 | |
安定 | 29 | 30 | 31 | 32 | 33 | 34 | 35 | |
移動 | 36 | 37 | 38 | 39 | 40 | 41 | 42 | |
幻影 | 43 | 44 | 45 | 46 | 47 | 48 | 49 | |
真実 | 50 | 51 | 52 | 53 | 54 | 55 | 56 | |
月相 | 下弦 の月 |
新月 | 暮月 | 上弦 の月 |
上弦 半月 |
満月 | 下弦 半月 |
長い冬が終わると、一年のしめくくりとして聖祝期がやってきます。人々は新たな年をはじめるために、一年でもっとも神聖な儀式を再び執り行うのです。