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サーター王国

(4)異邦の神々

Foreign & Enemy Gods

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2000/12/03 ぴろき

 オーランスと嵐の部族は、神話の中で幾人もの他の神々と争ってきました。圧政を敷く火の部族、地底からやってきた暗黒の部族、世界を大洪水にしようとした水の部族、そして古の種族の神々。猛々しい嵐の神々は、こうした外つ国の神々とぶつかるたびに、その勇敢さと知恵によって難局を切り抜けてきました。

 そして今、新たにルナーの神々がオーランスの前に立ちふさがっています。“中空”と地上の統治をめぐる両者の争いは、英雄戦争というかたちで決着がつこうとしているのです。

 ここでは、オーランス人の神話に登場した異邦の神々について概観します。


火の部族

 火の部族は、嵐の部族の昔からのライバルです。太古、彼らは“皇帝”イェルムを族長に戴いて、世界を圧政のもとにおいていました。オーランスは“皇帝”に挑んでこれを倒し、世界を彼らのくびきから解き放ったのです。

 火の部族の神々は、ドラゴン・パスの北方に位置するペローリアの地で盛んに信仰されています。そこの民とオーランス人の間は、父祖以来の確執があり、現在も北方人はルナー帝国というかたちで嵐の民の土地を侵略しようとしています。

イェルム、皇帝 Yelm

 イェルムは老いたる“皇帝”です。彼はかつて世界をその窮屈な法と弾圧によって束縛していました。これに異を唱えたオーランスは、腕比べと技比べをして“皇帝”に挑みましたが、いずれも頭の固い廷臣たちに負けを宣告されました。最後の武器比べでオーランスはフマクトから借りた“死”を抜きはなって“皇帝”を斬り殺しました。以来、オーランスは世界の王としての地位を得たのです。

 イェルムはペローリアの貴族たちによって礼拝されています。サーターにやってくるルナーの高官の中には、時折この支配者の神に帰依している者がいるといいます。イェルムは皇帝の身なりをした中年の男性として描かれますが、“光持ち帰りしものの探索行”に登場する痩せ細った“死せる皇帝”として表されることもよくあります。

ロウドリル、火山の神 Lodril

 ロウドリルはぐつぐつと煮えたぎる火山の神です。彼はかぎりなく貪欲なことで知られ、あらゆるものを飽くことなく呑み込んで辺りを焦土に変えてしまいます。また、彼は火の部族の中でも評判の俗物で、いろんな欲望に耽溺するだらしのない肥満した男として描かれます。南方のケタエラ地方の一角にある火山地帯では、子供たちとともに祟り神として恐れられ、敬われているといいいます。

イェルマリオ、陽の天蓋 Yelmario

 イェルマリオはイェルムの息子であり、日没直後に西天に輝く残光、すなわち“陽の天蓋”の神であり、辺境の開拓民を守護する光の神です。彼はかつて父親を殺したオーランスに刃向かって打ち倒された経緯を持ちます。その後、暗黒の戦神ゾラーク・ゾラーンによって火の力を奪われたイェルマリオは、火の部族出身でありながら熱の力を持たぬ神となりました。しかし、混沌戦争では、仇敵オーランスに協力して戦いました。

 イェルマリオの信徒は、彼を祀っている陽の天蓋寺院の聖堂戦士となります。彼らの集団戦術は世に名高く、加勢を必要とする者たちは競ってイェルマリオ戦士を傭兵部隊として雇い入れるのです。ドラゴン・パスの南東部にあるイェルマリオ信徒の領地は、サーターの五代目の王ターカロールから譲り受けたものです。

 イェルマリオは、長い槍を持って黄金の鎧を身につけた戦士として描かれます。頭の後ろに後光が書き加えられることもあります。


暗黒の部族

 暗黒の部族は、死んだ“皇帝”が地界に降りたために、地上に追われるに至った暗黒の神々です。彼らは古の種族トロウルによって篤く信仰されています。地上に現れた暗黒の部族とオーランス率いる嵐の部族は、世界の支配をめぐって激しく争いました。

 暗黒の神々は、ドラゴン・パス南方の“影の高原”と、北東のダゴーリ・インカースというトロウルの集落でさかんに礼拝が行われています。こうした地域に近く、トロウルと交流の深い氏族の中には、暗黒の部族に供物を捧げるところもあります。

カイガー・リートール、トロウルの母 Kyger Litor

 すべてのトロウルを生み出した女神であるカイガー・リートールは、暗黒の部族の女王です。彼女は神代以来オーランスの敵であり、暗黒の中を徘徊して、世界から宝と生命を奪おうとたくらんでいます。トロウルはカイガー・リートールを大いなる母神として崇めており、彼らの集落ではこの女神に捧げられた粗野でぶこつな祭壇が見つかります。

 カイガー・リートールが人間によって描かれることはあまりありませんが、神話の中に登場するときには、多くの乳房を持つ巨大な雌トロウルとして表されます。トロウルたちは、岩を噛み刻んで彼女の大きな神像を作るといわれています。

ゾラーク・ゾラーン、憎悪の神 Zorak Zoran

 ゾラーク・ゾラーンは、暗黒の部族の戦さ長であり、憎しみと復讐心に猛り狂った恐るべき暗黒神です。彼は、ユールマルにひとつかみの菓子をつかませて“死”をもらい受けると、それを使って植物の王であったフラマル神を切り倒してしまいました。そしてこの世の森という森はトロウルたちによってむさぼり食われたのです。混沌との戦いでも、ゾラーク・ゾラーンは凶暴な戦い振りを見せたことで知られています。

 ゾラーク・ゾラーンはトロウルの戦士たちのほか、復讐に我を忘れた人間によって信仰されています。彼の姿は、三つの目を持ったトロウル(あるいは人間)の戦士として描かれ、メイスを手に持ち、魔術をかけるしぐさをしています。

アーガン・アーガー、地表の暗黒 Argan Argar

 暗黒の部族が地上に現れた後に生まれた暗黒神であるアーガン・アーガーは、トロウルが外界と接触を持つときに仲介役となる神です。彼の信徒は、トロウルの使者や商人、通訳として活躍するのです。暗黒の勢力と接触を持つ人間たちも彼に助力をあおぎます。また、アーガン・アーガーはドラゴン・パス南方のトロウル王国“影の高原”の守護神でもあります。

 アーガン・アーガーは、大きな目のトロウルとして描かれ、左手には槍、右手は大きく広げた姿で表されます。トロウルと交流のあるオーランス人氏族では、寺院に彼のための祭壇がしつらえられているところがあります。


水の部族

 水の部族は“神々の戦い”で激しく陸地を侵略した海や川の神々です。彼らは海に住む魚人やウェアタグ人(水陸両棲の緑色の肌をした人間)たちに熱心に礼拝されています。地上を大洪水によってすべて沈めてしまおうとする彼らの野望を、オーランスは雄々しく戦ってくい止めました。

 その一方で、混沌が世界の中心スパイク山を破壊したとき、そこに開いた大穴をふさぐために水の部族の多くの者がその身を犠牲にしました。そしてそれ以来、水は上から下に向かって流れるようになったのです。海の神々はオーランス人にとって洪水と津波を連想させる祟り神ですが、ドラゴン・パスに暮らす河川の神々は昔から嵐の部族の仲間となって恵みをもたらしてきました。

マガスタ、海の王 Magasta

 水の部族の長であるマガスタは、広大な海を支配する大いなる神です。彼は膨大な数の眷属をしたがえており、神代にはオーランスら嵐の部族と激しく戦いました。そして、マガスタは混沌が世界に大穴をあけたときに、飛び込んでそこを埋め尽くしました。そのため、今でも世界の真ん中には“マガスタの大渦巻”があるのです。


月の部族

 月の部族は、歴史時代になって現れた新しい神々です。第3期に七人の英雄によって生み出された赤い月の女神セデーニアを族長として、ルナー帝国を守護する神々はこの部族に属しているのです。昇天して“中空”に位置を占めた赤い月は、本来の支配者であるオーランスと激しく争っています。この戦いは地上ではルナー帝国のサーター侵略というかたちで現れました。

 圧制者であるルナー帝国の神々は、混沌を手先として使役することもあって、オーランス人から非常に憎まれている存在です。と同時に、赤い月の教えをサーターの民の間に広めようとする宣教師は、引きも切らず帝国から派遣されてくるのです。

赤の女神、赤い月 The Red Goddess

 第3期に、北方はペローリアの地で七人の英雄によって生み出された赤の女神は、人間として育ち、その後いくつかのヒーロークエストを経ることで神へと生まれ変わりました。彼女は生前から周辺の土地を侵略してルナー帝国を打ち立てると、自ら赤い月となって“中空”へと昇天を果たしたのです。七日間の周期で満ち欠けを繰り返すこの不気味な赤い球体は、昼間でも北方の空にくっきりとその姿を見ることができます。それは、サーターの人々にとって圧政の象徴でもあります。

 赤の女神はルナー帝国の主神であり、帝国からやってくる者はみな何らかのかたちで彼女を崇めています。しかしそのカルトの実態は謎に包まれており、彼女の高位信徒は混沌をも許容とする邪悪な教えを広めようとしているといわれています。そしてそれはあまり間違ってはいません。

 オーランス人の間では、赤の女神はおそろしい混沌の魔物を乗りこなす、赤い肌をした女性として描かれます。一方、ルナー人によって建てられた寺院では、白いガウンをはおってあぐらをかき、両手で印を結んだ禿頭の赤い女性として表されています。

七母神、女神の復活者 The Seven Mothers

 七母神は、赤の女神をこの世に生み出した七人の英雄のことです。彼らは死後神格化されてルナー帝国の守護神となりました。七人とは、軍神ヤーナファル・ターニルズ、癒し手にして女祭ディーゾーラ、茶色の賢者イリピー・オントール、贖罪の神ダンファイヴ・ザーロン、弱き者の女神ティーロ・ノーリ、暗黒の魔女ジャーカリール、そして謎めいた“待つ女”です。最後の“待つ女”をのぞいて七母神各人は、それぞれに対応する職業の者たちに信仰されています。

 七母神はサーターにやってくるルナー軍人や徴税官の多くが帰依している神々であり、そのカルトはルナーの支配を憎む者にとって一番最初に立ちふさがる強力な組織です。七母神はしばしば、七人全員が三日月型のボートに乗っている姿で描かれます。

エティリーズ、月の女商人 Etyries

 エティリーズは、ルナーの通商の女神であり、各地で活動しているルナー帝国出身の商人や伝令たちによって篤く信仰されています。彼女はかつて人間の商人の娘でしたが、赤の女神の教えを受け入れたことで神となったといわれています。エティリーズは、右手に天秤、左手で胸元に壺をかかえた女性として描かれます。


混沌の部族

 “神々の戦い”に乗じてこの世に破滅をもたらすべく到来した邪悪な神々が、混沌の部族です。彼らは“不浄の三神”と呼ばれる強姦の女神セッド、狂った風の神ラグナグラー、病の母マリアの三人によって呼び込まれました。

 部族の長は“悪魔”ワクボスと呼ばれ、ありとあらゆる悪を体現した究極の邪神です。オーランスをはじめとする嵐の部族の神々は、正しく統治されていた世界を蹂躙する彼らと果敢に戦いましたが敗退し、世界は一時滅亡の淵にまで追いやられました。しかし“光持ち帰りしものの探索行”の成功によって、混沌の部族はすべて捕らえられて封じられました。残ったものたちもその力を多く弱め、もはや混沌戦争のときのように世界をばらばらにすることはできません。

 歴史時代に入ってからも、混沌は何度から世界に侵入をはかりました。“裏切り者”グバージや赤の女神はその先鋒です。混沌はオーランス人にとって究極の敵であり、どんな犠牲を払ってでもくい止めなければならない悪魔の軍勢です。混沌との戦いの中で、古来より数多くの英雄が現れました。そして今もまた、世界は混沌の脅威にさらされています。

セッド、強姦の女神 Thed

 混沌をこの世に呼び込んだ“不浄の三神”のひとりであるセッドは、強姦の女神であり、忌まわしい混沌の種族ブルーの母神です。彼女は狂った風の神ラグナグラーに凌辱されたことから、暴行の女神となりました。そして、世界を支配する悪しき野望を成就させるため、混沌を召喚し、ワクボスを生み出したのです。セッドはブルー族に崇められており、オーランス人をはじめ他の種族からは蛇蝎のごとく憎まれています。

 セッドは房の付いた長い尾と、ぶかっこうな爪の生えた腕をもつ巨大でひょろながい姿として表されます。その頭からはねじ曲がった四本の角と、縄のような髪の毛が生えており、口の周りには5本の触手が伸びています。

マリア、病の母 Malia

 マリアはもともと暗黒の精霊でしたが、“神々の戦い”の中で病を広げて自らの力を増すすべを学び、それ以来、おそろしい病気をまき散らす女神となりました。彼女はセッドとラグナグラーの陰謀に加担して“悪魔”を作り出しました。マリアは醜く苦悶に満ちた死をもたらす祟り神として世界中で恐れられており、オーランス人も疫病がはやったときはマリアに供物を捧げてその怒りを鎮めようとすることがあります。彼女を積極的に崇拝するのは、病を広めようとする狂人か悪人だけです。

 マリアは、巨大な胃袋と2本の頑丈な脚、上半身から多くの腕をはやして犠牲者をつかみとろうとする頭部を持たない醜悪な姿で描かれます。またはあばただらけで病気の腐汁をしたたらせる女として表現されます。

バゴッグ、混沌のサソリの母 Bagog

 巨大な蠍の体の頭部のあるべきところに別の生き物(人間など)の上半身がはえている忌まわしい混沌の怪物スコーピオンマンの母神であるバゴッグは、“大暗黒”のさなかにこの世に侵入してきた邪悪な女神です。すべてのスコーピオンマンは彼女の末裔であり、種族の巣を支配する女王スコーピオンマンは、混沌の儀式を行って犠牲者を喰らい尽くすことで、哀れな生け贄をスコーピオンマンに転生させることができます。

 バゴッグが描かれるときには、巨大でしわだらけなサソリの女として表されます。

ワクボス、悪魔 Wakboth

 混沌の総帥。あらゆる邪悪を体現した存在であるワクボスは、“不浄の三神”のくわだてによってこの世に出現し、混沌の軍勢をひきいて世界を滅ぼそうとしました。生命に対して一片の関心も抱かないこの恐ろしい無感覚の邪神は、残忍な破壊と耐え難い苦痛を引き起こします。

 ワクボスは大地の王ジェナートを殺し、土地を瘴気が吹き出す荒れ野に変えてしまいました。その後、ウロックスの挑戦を受けた“悪魔”は、長い戦いの末、スパイクのかけらである“大石塊”の下敷きとなって四散しました。わずかに残ったワクボスのかけらからはさまざまな混沌の化け物が生まれ、今も人々をおびやかしています。

 “悪魔”は“大いなる盟約”のときに再び現れて、神々の張った網の中に捕らえられて打ち負かされました。以来、ワクボスが姿を現したことはありませんが、その恐怖はオーランス人の中で語り継がれています。ワクボスは巨大で不潔な姿として描かれます。

グバージ、裏切り者 Gbaji

 混沌の光の神であるグバージは、“曙”の約五百年後、いろいろな種族が集まって行った創神の儀式の失敗によって生み出されました。一見すると善さそうに見えるものが実は極めつけに悪いものであるということの体現であるこの邪神は、“裏切り者”という名で罵られます。彼は英雄アーカットと戦い、姿を消しました。グバージの姿が描かれることはありません。

 当時、グバージの宣教師たちは世界各地で邪悪な考えを人々に吹き込み、混沌は善いものだと信じ込ませようとしました。今、同じ事をルナー帝国の宣教師たちもオーランス人にささやきかけています。こうした混沌の誘惑にオーランス人は負けてはならないのです。


その他の異神

 上記の神々のほかにも、オーランス人の神話にはいろいろな神々が登場して、オーランスら嵐の部族と争っています。特に、古の種族の神々はオーランス人にとって不可解な存在であり、時には悪と見なされることもあります。

アルドリア、植物の母 Ardrya

 アルドリアは緑の部族の女王であり、すべての植物を生み出した女神です。彼女は森の支配者であり、世界中の森をめぐって歩いています。しかしその館は地界にあると言われています。アルドリアは、多種多様な葉と果実をつけた樹木か、木の精霊(ドライアド)の姿で表されます。

 アルドリアの加護を受けた森は、人間にとっては禁断の領域です。彼女は動けぬ草木を守るために、“エルフ”を生み出しました。彼らは人の形をした植物であり、森にみだりに立ち入って、木々を切り倒す者たちを容赦なく打ち倒します。

モスタル、鉄の鍛冶 Mostal

 モスタルはドワーフの神であり、岩の部族の長です。彼は鉄を鍛えるすべを知る者であり、この魔法の金属を鍛える秘密を知っているのは、世界中でもモスタルの眷属だけです。彼の一族であるドワーフたちは、山奥や地下であやしげな作業に没頭しており、そこからまがまがしい魔法の道具を数多く生み出しています。彼らは伝統的にオーランス人の敵であり続けてきました。

マルキオン、魔道士 Malkion

 神々を信じない涜神者たちの奉じる悪しき神。彼は世界をねじまげて魔道というよこしまな技を生み出しました。この邪悪な魔術を用いる者の魂は破壊され、二度とこの世に生まれ変わることも、神々の祝福を受けることもできなくなります。マルキオンを崇める魔道士たちは、ルナー帝国や南方といった異国からまれにサーターに現れますが、オーランス人は彼らを忌み嫌っています。


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