トレメール

Price of Eternity

TREMERE

 簒奪者。黒魔術師。
 トレメールは中世における勃興以来、絶えず不信と疑惑の目で見られ続けてきました。最初期においては他の全氏族からの全面包囲という危機に見舞われるなど、その歴史は常にサバイバルと戦いに彩られてきたのです。他の氏族のような太古からの伝統もなく、数も少ないこの氏族が生き延びてこられたのも、ひとえにその強大な黒魔術と、狡猾な外交工作に他なりません。そして少数であるがゆえにその団結力は他の氏族が及ぶべくもない強固なもので、逸脱者は即座に処刑されるほど苛酷な掟が敷かれています。

 しかし、このピラミッド状の厳格なヒエラルキーの内情は、一枚岩という言葉で語れるほど簡単ではありません。他の血族たちが知らぬ真実が、トレメールの塔の内側にはまだ無数に隠されているのです。ここではその一端を垣間見ることにしましょう。


魔術師たちの野望

Unholy Ambition

トレメール勃興

 中世に突然出現したトレメール氏族の成り立ちは、他の氏族にはよくわかっていません。しかし氏族メンバーにはある程度の歴史が伝授されます。それは、今を遡ること九百年の昔、中世盛期に起こった超自然的な事件から始まります。

 中世盛期、「ヘルメス梯団」と呼ばれるヨーロッパ規模の魔術師の組織は隆盛を極めていました。その中の一派「トレメール派」は、長であるトレメールを頂点に、他の派閥と抗争しながら力と知識を集めていました。彼らの野心と探求心は、魔術師の基準から言っても卓越したものであり、強固な組織力と意志の力を発揮したメンバーたちは、様々な超自然的パワーを開拓し、自らの力を高めていました。

 しかし、10世紀頃、突如として魔術師たちに史上最大の危機が訪れました。それがなぜ起こったのかははっきりとは解明されてはいません。しかし、それは確実に魔術師たちの隆盛に影を落としていきました。世界全体の超自然的な力が急激に衰え始めたのです。グリフィンやドラゴンといった幻獣たちは激減して、人目につかぬ場所へ、やがては異界へと退去していきました。魔術師たちの魔力源や研究材料となっていた数多くの魔法の品々も力を失っていきました。そして何よりも、魔術師たちが世界の真理を解き明かす時間を得るために調合し、服用していた不死の霊薬までもが、その効果を薄れさせていったのです。

 世界的な規模での魔法の衰潮の中、トレメール派の長であり野望多き魔術師だったトレメールは、不死の霊薬に代わる不死の手法を手に入れるべく、必死で様々な研究に取り組みました。しかしそれらは全て失敗に終わりました。焦燥感にかられたトレメールと、その忠実な七人の弟子たちは、ついにヘルメス梯団では異端とされる禁断の研究に手を染めました。彼らは、不死の魔物であるヴァンパイアの力を奪取しようとしたのです。

 不死を追い求めるトレメールの魔術師たちは、東欧のトランシルバニアの山奥で、恐るべき実験を行いました。それは捕縛したヴァンパイア(ツィミーシィだったと言われる)を実験台にして、その血が蓄えている不死の力を研究するものでした。そして運命の1022年、トレメールの弟子のひとりゴラトリックスは、血族の持つ不死の秘密を解き明かすことに成功しました。調合された霊薬を飲んだトレメールと七人の弟子は、定命者としての命を捨て、永遠に真理を探究するべくヴァンパイアへと生まれ変わりました。

 彼らは自分の受けた不死の呪いを隠しつつ、トレメール派全体を次第にヴァンパイアに染めていきました。しかし、この過程で七人の長老の間に確執が生まれました。その中心となったのは、何も知らない魔術師たちをヴァンパイアにすることに慎重論を唱えるエトリウスと、急進的な意見を唱えるゴラトリックスとの対立でした。やがてそれはおおっぴらな抗争へと転じ、トレメールは七人の長老を招集して、事態の収拾とトレメール派内の団結を高めるために、全員に自分への〈血の契り〉を命じました。この逸話は現在のトレメール氏族では否定されています。なぜなら、同氏族の者を〈血の契り〉を結ぶことは「トレメールの掟」で固く禁じられているからです。ともかくも、この処置の結果、長老の間の争いには調停がなされ、トレメールたちは派全体のヴァンパイア化をゆっくりと押し進めていったのです。

 一方、太古より東欧を根城にしてきたツィミーシィ氏族は、ヴァンパイア血脈としてのトレメールの出現に恐怖しました。同胞が実験台にされたことに加えて、トレメールの強大な魔力は十分脅威に値したからです。地元のノスフェラトゥとギャンレルと同盟したツィミーシィは、猛然とトレメールの拠点に攻撃を仕掛けました。魔術師の塔は堅固な要塞ではありましたが、そこに住まう多くの者はいまだただのモータルだったため、トレメールは次第に押され始めます。この時、卓越した錬金術師だったゴラトリックスは、捕獲したツィミーシィとノスフェラトゥを使って実験を行い、「ガーゴイル」と呼ばれる翼持つ吸血妖魔を作り出しました。本能的な憎悪を植え付けられたガーゴイルたちは、アンデッド軍団の攻勢に対抗する決戦兵器として用いられたのです。

同族喰らい

 ガーゴイルの投入によって他の氏族との戦いが一応の終息を見ると、トレメールはヴァンパイアについての研究に没頭し、世代によって血が薄くなっていくことを知りました。彼はより強力な力を得るために、眠れるアンテデルヴィアンの力を奪う計画を立てました。その標的となったのは、サルブリ氏族の始祖サウロットでした。トレメールと弟子たちは、儀式や呪文を用いて彼の寝所を探り当てることに成功します。

 そして1133年、山奥に隠された墓所の中で、トレメールはついにサウロットを喰らうことに成功します。驚くほど抵抗なく侵入に成功したトレメールは、サウロットの眠る石棺の蓋をこじ開けて牙をその首に埋めました。アンテデルヴィアンは不思議なことにほとんど抗うこともなく、安らいだ表情で死を迎えました。しかし、トレメールは同族喰らいの法悦から我に返ると、サウロットの額にある第三の目がじっと自分を静かに見つめていることに気付きました。恐怖にかられたトレメールは石棺を閉めると、逃げるように山を下りました。サウロットの第三の目の凝視が意味していたことが何だったのかは、今でもわかりません。

 同族喰らい後、トレメールは頻繁に眠りにつくようになりました。これ以降、彼は氏族の指揮を七人の長老に委任したと言われています。最高指導者が一線を退いたことで、長老たちの間の確執が再燃しました。彼らは内紛を避けるために、勢力圏を七つの地区に分けておのおのがひとつの地区を管轄することにしました。また、この「長老評議会」は毎年一回の定期的な会合を持つことになりました。

異端審問とカマリリャ

 1205年に始まった第四回十字軍を機に、ヨーロッパ全土に異端審問の嵐が吹き荒れ始めました。魔術師たちは悪魔崇拝者として排斥され、次々と殺害されていきました。自分のテリトリー内での蛮行に激怒したゴラトリックスは、教会に影響力を行使しようとして失敗し、全面的な排斥運動を引き起こしてしまいます。彼は必死で自分の本拠地から脱出しましたが、ゴラトリックスの失策はトランシルヴァニアでの評議会で厳しくとがめられ、身の危険を感じたゴラトリックスは東欧の山岳地帯へと姿を消しました。彼の失踪で空席となった評議会には、グリムグロースが就任しました。

 異端審問が狂乱の度合を深める一方、大叛乱も燃えさかっていました。13〜14世紀、安閑としていたヴァンパイアたちは次々とその住処を追われ、異端審問官や復讐心に燃える叛徒たちに滅ぼされました。さらに、アサマイトたちまでもが虐殺を実行するべくヨーロッパになだれ込み、ヴァンパイア社会はかつてない大混乱に見舞われたのです。トレメール氏族は比較的無事でしたが、それでも忠実な部下だったガーゴイルたちの全面的な離反を被ります。

 虐殺と破壊の炎が血族壊滅の危機にまで高まった頃、カマリリャ構想が長老たちの間で提起されました。トレメールは積極的にこのプランに賛同しました。いまだ弱小だった彼らは同盟者と安定を求めていたからです。1349年、最初の長老会議が開催され、各氏族の代表が集まりました。しかしこの時は、指導者であるヴェントルーのハードシュタットが翌年に暗殺されたために、半世紀にわたって計画は頓挫してしまいます。再びカマリリャ構想が実体化したのは、ツィミーシィの始祖の暗殺が契機でした。長い討議の末、1450年、トレアドールのラファエル・デ・コラゾンの有名な演説をもって、カマリリャの創設と“仮面舞踏会”の厳守が宣言されたのです。

 カマリリャ創設に多大な貢献はしたものの、トレメールは依然として不信のただ中にありました。トレメールはアサマイトに呪いをかけるなど様々な業績を成しましたが、それを殊更に強調しようとはしませんでした。その代わりに、巧妙な外交政策を展開し、中世末期の様々な人間の組織に浸透を果たしていきました。一方で、既に衰退激しかったヘルメス梯団は消滅の憂き目を見ることになります。これにはトレメールが一役かっていたとも言われています。トレメールはテクノクラシーと呼ばれるようになる科学者の組織と結託し、この古巣を滅ぼしたのです。しかし、梯団は完全に滅亡したわけではありませんでした。彼らは雌伏し、後に驚異的な復活を遂げます。

ウィーンと新世界

 この頃から、トランシルヴァニアのトレメールの拠点では奇怪な噂が流れ始めました。その中でも最悪のものは、始祖トレメールの眠れる体に深刻な変化が訪れたというものでした。その真偽は不明だったのですが、ともかくも数年後にはエトリウスは氏族の本部をウィーンへ移すことを宣言します。

 16世紀初頭、ヨーロッパ諸国は新大陸へ手を伸ばし始めました。トレメール氏族は新世界の豊富な魔力源に目をつけ、長老メアリンダはヨハネス・ディー博士を通してイギリスの新大陸進出に手を貸しました。ピルグリム・ファーザーズに始まる東海岸の英国植民地に始まる北米圏は、メアリンダの管轄となりました。一方、既にトレアドールやヴェントゥルーの勢力が浸透しつつあった南米のスペインやポルトガル植民地には、スペインのトレメールであるザビエル・デ・チンチャオが進出し、他の氏族と激しい覇権争いを繰り広げました。続く百年間で、南北大陸の重要性はどんどん増大し、新たに「大教正」の職務が創設されました。

 その頃、ヨーロッパは東西の地区に分割され、東欧はエトリウス、西欧はグリムグロースが統轄することになりました。中近東地区はアベトリウスが、そして謎に満ちた極東はトーマス・ウィンチャムが管轄を任され、全世界が七つの領域に正式に分けられたのです(アフリカは現在までに二人の背前任者がおり、現在はエレーヌ・ド・カリノーが管轄)。

現在まで

 18世紀中葉、サバトの中にトレメールの反乱分子が潜んでいることが判明しました。それを率いていたのは異端審問の最中に姿を消したゴラトリックスでした。彼はゴラトリックス派を名乗り、外部からは「反トレメール」と呼ばれました。この発見に激怒したトレメールの長老たちは、トレメール魔術師ならば誰にでも分かるような形で魔法的な印を反逆者たちの額に彫りつけたのです。

 20世紀末に至り、トレメールの長老会議は頻繁な会合を開いています。悪い噂は絶え間なく広まっており、その中には、エトリウスが始祖トレメールの柩を開けたところ、そこにはヴァンパイア魔術師の姿はなく、何か恐るべき特徴を備えた巨大な白い長虫が横たわっていたという奇怪極まりないものまであります。それは長虫ではなく、何かもっととんでもないものの幼虫に過ぎないという話も流れているくらいです。そして1997年、ゴラトリックスの一党は謎の滅亡を遂げました。終末の時に向け、トレメール氏族の運命は加速の度合を強めています。


トレメールの掟

Code of Tremere

 トレメールに(〈抱擁〉によって)入信した者は、すべからく入信儀式の際に「トレメールの掟」を誓わされます。これは氏族にとって最も神聖な誓いであり、永遠の忠誠を氏族に捧げることの表明です。

 この誓約は、始祖トレメールによって15世紀はじめに作られたもので、崩壊したヘルメス梯団の掟になぞらえた形から成っています。現在では他の氏族にもこの誓いの内容は広く知られており、トレメールの結束の固さを誇示する結果になっています。誓いの内容は以下の通りです。

『我、(入信者の名前)はここに、トレメール派および氏族とそのすべての成員に対し永遠の忠誠を捧げることを誓う。我は彼らの血縁であり、また彼らも我が血縁である。我らは命と、目標と、成果を分かち合う。我は、我が上位者の名において適切と決められし事に従い、我が下位者を全幅の敬意をもって扱い、その成長を助けるものである』
『我はトレメール派および氏族とそのすべての成員より魔術の力を奪う企てに参じない。そのような企ては我らが派の力に立ち向かうこととなろう。我は派と氏族の何ものをも殺さない。ただし自衛と正当な審問会において無法と断じられた魔術師に対してはその限りではない。魔術師が無法と断じられれば、その者に裁きを下すべく全力を尽くす』
『我は審問会のすべての決定に従い、七者の内陣と我が上位者の意向を尊重する。審問会は「トレメールの掟」の精神によって縛られる。「掟」は「附則法典」によって補助され、そして魔術師の会議によって解釈される。我は申し立てが許されれば、より上位の審問会に提訴する権利を有する』
『我は自らの行動によってトレメール派および氏族を危険にさらさない。また我が派および氏族を滅ぼすようないかなる俗事にも関わらない。悪魔などに対する場合にも我は氏族を危険にさらすことなく、妖精と対する場合にも我が派および氏族に報復が及ばぬようにする。また我はカマリリャの価値と目標を奉じることを誓い、“仮面舞踏会”を守る。これらの目標が我が目標と衝突した場合には、我は“仮面舞踏会”をおびやかすようないかなる我が目標をも捨て去る。トレメール派および氏族の力は、“仮面舞踏会”の力によるがゆえ』
『トレメール派および氏族の成員を盗み見るために魔術を使わず、その行いをのぞき見るためにも使わない。これは厳禁される』
『我はこの掟に誓いを立てた弟子のみを訓練し、弟子の誰であれ派および氏族に刃向かわせることはさせない。我は彼らを最初に打ち倒し、裁きの場に引き据える者である。我が弟子の中で、はじめて掟を奉じると誓う前に魔術師と呼ばれる者はいない。我は我が弟子を、注意と敬意をもって扱う』
『我は、我が弟子が長老の仕事に役立つとされた場合には、長老が我が弟子を連れて行く権利を認める。弟子全員は派および氏族の成員であり、まず長老にとって価値あるものである。我は、我が上位者のかくのごとき決定を下す権利に従う』
『我は派および氏族の知識を深め、我が叡智と力を求めた上で得た者を成員全員と分かち合う。魔術についていかなる秘密もあってはならないし、派および氏族に害をなすような他者の行いを秘密にしてもならない』
『我要求す。我がこの誓いを破れば、我は派および氏族より放逐されることを。我放逐されれば、我は不名誉と悪名の中で生を送り続けることなきよう、同胞に我を見つけ殺すことを望む』
『我、派および氏族の敵は我が敵、派および氏族の友は我が友、派および氏族の盟友は我が盟友と認む。我らひとつとなりてはたらき、栄光と力を増さんと望む』
『我、(日付)、ここに、この誓いを誓約する。この誓いを破らしめんと誘う者に呪いあれ。その誘いに乗りたれば我呪われよ』


トレメール・ピラミッド

The Piramyd

 トレメール氏族は、厳格な全世界的なヒエラルキー網を構築しています。メンバーはこの組織網を「ピラミッド」と呼んでおり、すべての者はこの中のどこかに位置づけされます。

■トレメール Tremere, the Third Generation:強大な魔術師でもある氏族の創始者トレメール本人(第3世代)は、現在もウィーンで眠りについていますが、時々目覚めて元老たちに指示を出すという噂です。一説によれば、もう人間の姿をしていないと言われています。真相は誰にもわかりません(あるいはトレメール本人ですら)。

■七人会議 Elder Council of Seven:トレメールの七人の子(第4世代)で構成される最高幹部会議。会議はウィーンで開催され、氏族の方向性を決定します。全トレメールの恐怖の的です。誰が所属しているかは後述します。「ウィーン召喚」は、トレメールにとってほとんど死を意味する言葉ともいえるのです。七人の長老はそれぞれ世界の各地域のトレメールの活動を統轄しており、毎年一回定期的にウィーンで会合を開きます。その他、臨時にも会議を開きますが、近頃とみにこれが多くなってきていると言われています。

■大教正 Pontifex:長老1人に七人ずつ49人任命され、世界の各地域を監督します。

■主教 Lord:大教正1人につき七人ずつ任命され、各地方にいくつか存在する祭儀所を統括します。

■理事 Regent:各祭儀所を束ねる長であり、その祭儀所が統括する地方の中にいる見習いの行動の責任を負います。また、祭儀所内の魔術の師匠として弟子を教導する役目にも従事しています。

■見習い Apprentice:ほとんどの氏族構成員を占める見習いは、特定の祭儀所に所属し、理事の監督下におかれて魔術の研鑽に励みます。見習いの中にも、修業の進行度合いに応じて七つの階級があります。これは下から「第一のサークル」〜「第七のサークル」(Circle)と呼ばれます。「第一のサークル」に属する見習いは、週に一回祭儀所で師匠の指導を受けなければなりません。


祭儀所

War Base of the Jyhad

 「祭儀所」(Chantry)とは、ある都市におけるトレメール氏族の拠点となる場所・建物のことです。中世のギルド会館に似ているともいえるでしょう。ここで若いヴァンパイアたちは師匠の指導の下、魔術の修業・研究を行います。各ヴァンパイアは、自分が〈抱擁〉された地方の祭儀所に従属し、その所属が動くことはまずありません。

 各祭儀所は前述の理事によって統括されています。そしてこの館長の補佐をするのが「第七のサークル」まで進んだ見習いたちです。この高弟たちの下に、より低い段階の見習いたちがつき、階層構造をなしているのです。トレメールに属する者なら、どの祭儀所でもたいてい歓迎されます。祭儀所はトレメールが援助を受けたり、避難所として活用する場所でもあるのです。

 祭儀所の姿は千差万別です。普通は人目につかないように設けられています。都市部ならば、小さな貸しマンションを借りていることが多いようです。場合によっては遺跡の地下などに設けられているかもしれません。典型的な祭儀所には、三人以上の魔術師が暮らせる空間と客用の部屋があります。研究室(Labo)はしばしば地下室に設けられ、客人の目につかないようにされています。研究室のそこかしこには、特定の魔術師用であることを示す呪印が記されています。こうした場所には、許可がない限り入れません。


審問会

Conclave of Sorcerers

 トレメールを縛る法は複雑で、さまざまな解釈問題や判例についての議論などが魔術師たちの間でも頻繁に発生します。できる限り非公式な場でこうした争議は解決されますが、問題がより重大なもので、小規模な折衝では解決できないとなると、その議題は「審問会」(Tribunal)にかけられることになります。

 定例の審問会は、理事以上の階位を有する十二人の魔術師から成りますが、臨時の審問会では、七人いれば成立します。地域ごとの審問会の議員は、七長老のうちそこを統括するひとりによって、地域内のパワーバランスを勘案した上で選任されます。審問会は通常、毎年1回、氏族員の申し立てや意見を聞くために開催されます。会議では、上級の魔術師が“審問長”として議事を統括します。審問長は投票権を持ちませんが、賛否同数の場合に裁定を下す権限を有します。

 最も尊重されるのは、入信の際に全員が誓わされる「トレメールの掟」ですが、その他のさまざまな事態に対処するための法律集は「附則法典」(Peripheral Law)と呼ばれ、数百年前までさかのぼれる過去の先例から成っています。審問会での裁定は、ほとんどの場合、先例に従って処理されます。また、新たな問題の場合は審問会での決定が附則法典に記載されて先例となります。

 七人の長老は審問会の決定をくつがえす権限を持っていますが、それが振るわれるのは極めてまれなことです。


政治党派と秘密結社

Various Factions

 実はトレメールは文字通りの一枚岩ではありません。大きく分けて二つの政治党派が存在しているのです。一方は「保守派」(Traditionalist)。他方は「革新派」(Transitionalist)。前者は数百年前からの古典的な儀式や慣習などを固く守り続けており、後者は新たな儀式の開発や古臭い慣習の除去にいそしんでいます。保守派は一般に若者がピラミッドの上層に登ることを、秩序を揺るがせる事として嫌っていますが、革新派は天性や努力は報われるべきだと考えています。この二大政党は公の組織ではありませんが、不文律のように厳然として存在しており、トレメールたちの社会に強い影響力を有しています。一方の政党で高い立場にいれば、それだけ氏族全体に対する威信が高まるのです。もちろん、政党同士のいがみ合いは水面下で激烈に戦われています。

 また、この氏族内にはさまざまな秘密結社(Secret Orders)が存在しており、それぞれの理念と目標をかかげて魔術の研究をしています。フリーメーソンに似ているものもあれば、ドルイド僧、クトゥルフ神話の教団みたいなものまで、多種多様です。


鮮血魔術

Blood Magic

 トレメールを特徴づけているのは、なんといってもその独特の『魔術』(Thaumaturgy)という訓えです。この訓えは、ヴァンパイアの血という極めて強力な力を秘めた触媒を使って、神秘的なパワーを引き出そうというものです。『魔術』は二種類に分類できます。即座に使用可能な「系統魔術」と長い時間をかけて行う「儀式」です。当然、儀式魔術のほうがいろいろ複雑な効果が得られます。

系統魔術(Path)

 血と意志力を消費することで、神秘的な効果を得ます。代表的なものとして以下のような系統があります。

儀式(Ritual)

 レベル1から5までに分類されます。特定の相手や状況に対する魔法的防護を施したり、いろいろなマジックアイテムを造り出したります。たいてい数時間かかり、何か特別な触媒(フクロウの目とかネズミの死骸とか、薬草とか人間の血)が必要となります。

鮮血魔術についてのより詳しい情報はここを見てください。


トレメールの下僕

Slave Abomination

 トレメール氏族は魔術師らしくいろいろと超自然的な下僕を持っています。こうした下僕は、血の儀式と錬金術を駆使して、中世に考案されたものがほとんどです。

ガーゴイル(Gargoyle)

 西洋の建物によく飾ってある魔除けの像のような姿をした疑似吸血鬼。

 もともとは中世にツィミーシィら敵対氏族から祭儀所を守るために造られた錬金術の産物ですが、自我が発達しすぎてアナーク大反乱当時に反乱を起こし、現在はほとんどがトレメール氏族の外で独立して活動しています。

ホムンクルス(Homunculi)

 血と肉で造られた疑似生命。錬金術では有名な存在です。低い知能を持ち、魔術師の伝令やスパイとして活動します。いろいろ種類があります。例えば、

妖魔憑き(Demon-Bound)

 魂を抜いた人間の身体に、悪霊を取りつかせて使役したもの。最初こそ人間に似ていますが、やがてその目は瞳がない金色になります。常人の四倍の力を持ち、優秀な下僕として働きます。

死せる下僕(Corpse Servant)

 いわゆるゾンビ。魂を無理矢理死者の国から引きずり戻して、死体に封印したもの。多少の記憶や生前の知性も持ち合わせているので、優秀な下僕や助手となります。


トレメールの野望

Struggle for Apex

 トレメールたちが最終的に何を目指しているのかは誰にもわかりません。しかし、彼らはこう新生児たちに告げるといいます。

「我らはゲヘナを勝ち抜かねばならぬ。そのためならばたとえ最も親しき友が関わろうとも、氏族を優先せねばならぬ」

 こうした態度が、この氏族をして最も不信を集める原因となっているのですが、彼らはそれを顧慮することはないでしょう。しかし、トレメールに忠誠を誓うことは、果たして永遠の生に見合うものなのかどうなのか、それはその個人の力如何にかかっているのです。


トレメールの長老

The Most Powerful

 トレメールには卓越した魔術師たちが多数存在しています。その中でも特に有名な人物をここで数人挙げましょう。

始祖と七大長老 Seven Elders

著名なトレメール

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