サバト

Shadow of the Elders War

THE SABBAT

 「サバト」(The Sabbat)は、「カマリリャ」と敵対するヴァンパイア組織(セクト)です。彼らは14世紀にカマリリャがヴェントルーを中心として創設された時、彼らに反発して離反した2つの氏族と、カマリリャ七大氏族からの離反者(反氏族:antitribu)、それに氏族不明の者たちによって構成されています。サバトのヴァンパイアたちは人間性をかけらも持たない真の悪鬼であり、食物連鎖の頂点として振る舞い、この世に悲惨と邪悪をまき散らす存在です。その一方で、サバトではヴァンパイア存在というものの真理を追い求める哲学者・求道者・宗教者が高い地位を占め、より高次の存在への進化を模索しているのです。

 しかしいずれにせよ、サバトはPCたちの前に立ちふさがる敵・あるいは誘惑者として登場するでしょう。この謎めいた組織の一端を以下で紹介します。


サバトの理念

Warriors of Gehenna

 サバトの理念は次の二つにおおよそ集約されます。

 サバトは自らがもはや人間ではないことを明確に自覚し、そのように行動します。自らの中にある人間性をある程度認めつつ、ヴァンパイアとしての欲求に良心の呵責を抱かないのです。極端な者になると、人間性を完全に否定し、自らを邪悪の体現者と見なしてさえいます(ただしこの考えはサバトの中でさえも異端です)。

 アンテデルヴィアンが全員目覚め、すべての血族を喰らうという「ゲヘナ」の時代が単なる伝説ではなく、真実であることを、サバトのメンバーは信じて疑っていません。彼らが同族の血にまみれながら戦い続けるのは、アンテデルヴィアンたちの餌とならぬためなのです。サバトはカマリリャの事を、アンテデルヴィアンによって周到に準備された手駒だと考えており、全世界にこの組織が広まり、カマリリャ内でかつてないほど世代間戦争が激化したこの現代を、まさに「ゲヘナ」の前兆であると考えています。

 サバトは自分たち以外の血族のことを、目前の危機に気づかず、自らをアンテデルヴィアンのディナーの皿に備えようとしている馬鹿者たちだと蔑んでいます。しかしサバトの数はカマリリャに比べてあまりにも少数です。それゆえにこの孤高の殺戮集団は、あらゆる手段を用いてカマリリャを破壊し、アンテデルヴィアンの計画を潰し、アンテデルヴィアン本人を永遠に抹殺しようとしているのです。


一味

Hunting Marauders

 サバトの基本単位となるのは「一味」(Pack)と呼ばれる集団です。これはさまざまな氏族出身の5人から12人のヴァンパイアで構成され、共に狩りを行い、戦い、時には住処を共有するのです。一味の精神的指導者は「司祭」(Priest:司祭)、共有の住処を管理する者を「院長」(Abbot)と呼びます。この他、戦闘指揮官などが任命されます。メンバーは一味に滅ぼされるまで忠誠を誓います。メンバーの交換が行われることはまれですが、その都市の大司教の命令で新メンバーを入れることは時折行われます。一味には都市に定住している者の他に、都市から都市を渡り歩く「遊牧民」(Nomad)もあります。いずれもサバトの利益のために暗躍しています。


ヴィンクルム

Unbreakable Oath

 サバトの一味はメンバー間で強力な忠誠を維持している事で有名です。これは「ヴィンクルム」(Vinculum)と呼ばれる神秘的な絆によって結ばれているからです。ヴィンクルムは一味のメンバーそれぞれが他の仲間全員の血を飲みあう「ヴァウルデリ」という儀式によって結ばれます。

 ヴィンクルムの強さは、何度相手の血を飲んだかにかかってきます。ヴィンクルムが強ければ自らを捨ててでもその仲間を救おうとするでしょうし、弱ければ友好関係以上のものではなくなります。いずれにせよ、このつながりが自由奔放で弱肉強食の掟の支配するサバトを結束させているといっても過言ではありません。

 なお、ヴィンクルムは〈血の契り〉を破る力があります。これがカマリリャの圧制を嫌ってサバトへやってくる血族の主な動機となっています。


創造の儀式

Return from Grave

 サバトはいわば秘密結社ですから、さまざまな儀典が設定されています。その中でも最も重要な儀式が、サバトに加入する際に行われる「創造の儀式」(The Creation Rites)です。

 これはまずサバト加入候補者を墓地に数人集め、その血をすべて吸い取ります。その後、その者の血親になることを指示されたサバト・ヴァンパイアが血を少量候補者に与えてヴァンパイアにします。

 しかし本番はこれからです。候補者たちはまだ身動きできぬ状態で、あらかじめ掘られた墓穴に埋め込まれます。候補者は目覚めた時には数メートルも地下に埋められた状態なのです。そして強烈な〈飢え〉にさいなまれる候補者は必死で土を掘りながら地上を目指します。血が尽きる前に地上に到達できた者は、試練に合格した者としてサバトに迎え入れられます。しかし、失敗者は土の中で終わることのない永遠の時を過ごさねばならないのです。おそらく気が狂ってしまうでしょう。このようにして、サバトは意志の強固な者だけを選抜するのです。


サバトの氏族

Black Angels

 サバトは「創造の儀式」を受けたなら誰でも参加を認めていますが、大半は以下の2つの氏族出身です。

ラソンブラ Lasombra

 かつて地中海沿岸の諸王国や腐敗したローマ教会を影から支配してきたこの闇の氏族は、イタリア、スペイン、北アフリカの血筋を受け継いでいます。「闇の貴族」を自任する彼らは、酷薄非情で人間を家畜程度に考え、さらに強烈な上昇志向を持っています。伝説では地獄の悪魔と契約をかわし、代償に自分たちの鏡像を譲り渡したために鏡に映らないようになったともいわれています。

 ラソンブラはサバトの指導的氏族であり、氏族の創始者を殺し、同じく創始者を滅ぼしたツィミーシィと組んでサバトを結成した者たちです。その性格上、極めて有能かつ合理的なリーダーたることのできる彼らは、サバトの着実な拡張をなしとげてきました。しかしその上昇志向ゆえに、すさまじい権力闘争も氏族内で展開しているのです。

ツィミーシィ Tzimisce

 東欧に端を発するこの氏族は、13氏族の中で最も非人間的な氏族として怖れられています。彼らはサバトの成立以前には、夜な夜な悲鳴の響く東欧の城に住む恐怖のヴァンパイア・ロードとして君臨していました。しかしサバトの成立時、長老たちはほぼ皆殺しにされ、現在では悪魔的なパワーを持った強力な氏族としてサバトの多数を占めています。

 一方、彼らは遥か昔より、生と死の深遠なる秘密を探ることにその不死の生を費やしてきた氏族です。人体実験や死者の冒涜などを平気で行い、踏み込んではならない領域に踏み込んだヴァンパイアたちでもあります。

反氏族 Antitribu

 上記2氏族以外は、カマリリャに参加している氏族および独立氏族の裏切り者たちです。裏切り者というと聞こえが悪いですが、カマリリャや元々の氏族の姿勢に満足できない異端児たちです。こうした者たちのことを一括して「反氏族」(アンチトリビュー)と呼びます。彼らは全体としてはラゾンブラ・ツィミーシィを合わせた数よりは少ないものの、その独特の能力ゆえに非常に重宝されており、指導的立場についている者も決して少なくありません。ただ、アサマイトのような特殊例を除けば、ほとんどの者はもともとの氏族からひどく憎まれており、近年滅ぼされた反トレメールに至っては、不可視の裏切りの烙印まで額に押されていました。

パンダーズ Panders

 氏族無しであるケイティフの地位向上を目指して、ジョセフ・パンダーというヴァンパイアのもとに集ったケイティフの集団。しかしサバトの鉄砲玉以上の存在にはなりえていません。

黒手団 Black Hand

 氏族ではありませんが、サバトの中には「黒手団」と呼ばれる強力な戦闘集団が存在します。中世のデス・カルトを発祥とする(らしい)この集団は、サバトの指揮系統とは違った独特の組織を持っており、謎めいた行動をとっています。しかしその戦いとスパイの能力は想像を絶しているため、他のサバトも恐れながら彼らに頼っているのです。

 実は、この組織はもっと恐るべき秘密を持っています。彼らは密かにヴァンパイア社会全体に黒い翼を広げている存在なのです。


サバトの組織

Rule of Strongest

 サバトはカマリリャのように年功序列のヒエラルキーを持っていません。もともとそれを否定するところから始まった組織ですから当然ですが。そのかわりに存在するのが「弱肉強食」の掟です。

 サバトでは、強いことがすべてです。強い者が支配し、弱い者は従うしかありません。裏返せば、強い者も、いつより強い者に打ち倒されるかもしれない、非常に不安定な組織だともいえます。「強い者がすべてを得、弱い者はすべてを失う」。これがサバトの唱える自由、すなわち野獣の自由なのです。

 サバトの上下関係は単純な力関係で決まります。サバトでは、カマリリャのように「支配しやすそうだから自分の部下にする」などということは起こり得ません。弱い者は、無価値なのです。

 ●摂政(Regent):サバトは始祖カインこそが全の真の王であると見なしています。それゆえにサバトの指導者はカインの御名のもとに支配を行う「摂政」と呼ばれるのです。現在4人おり、実権を掌握しているのはメリンダというラゾンブラの第4世代です。

 ●枢機卿(Cardinal):サバトの最高幹部。

 ●古老(Priscus):摂政と枢機卿に助言を行う顧問枢密官。「内陣」と呼ばれる諮問会議を構成し、隠然たる発言権を有しています。

 ●大司教(Archbishop):サバトの支配する都市(大司教座と呼ばれます)を統べる指導者。その都市内の裁断権を有し、最前線では最高司令官として働きます。

 ●司教(Bishop):都市内の各地区を支配する指導者。統括地域の数一味を指揮する、サバトの大隊長として活動しています。

 ●司祭(Priest):前述したように、一味の精神的指導者であり、儀式などを一味単位で遂行する役目を負っています。たいていは事実上の一味・リーダーです。

 ●正サバト(True Sabbat):十分な研修期間を終え、正式なメンバーとして認められたヴァンパイア。一人前の戦士として扱われます。

 ●新参(Recruit):「創造の儀式」は通過したものの、まだ研修期間中で見習いとしての低い扱いしか受けないサバト。特定の一味で厳しい修練を受けます。または、無理矢理〈抱擁〉され最前線に駆り出される哀れなヴァンパイアも指します。


サバトの敵

Fight till Extinction

 サバトは極めて戦闘的なセクトです。彼らは自分たち以外はアンテデルヴィアンの手駒であり、滅ぼすべき相手だと考えているので、敵もまた数多くいます。

カマリリャ Camarilla

 サバト最大の敵はカマリリャです。北米では中西部、南部を支配しているこのセクトは、サバトが最も憎んでいる相手であり、勢力圏の境界線では激しい戦いが繰り広げられています。

裏ラソンブラ Lasombra Antitribu

 中世末、欧州を吹き荒れた大叛乱が発生した時にサバトは結成されました。この時、保守派のラゾンブラの長老たちは新興のサバト・ラソンブラたちによってほとんど全滅に追い込まれました。しかし生き残った長老たちによって創られた「反ラソンブラ」たちは現在でも古き良き氏族を復興させるべく、サバトの背後からナイフを突き立てようと狙っているのです。

古ツィミーシィ Old Clan Tzimisce

 もともとツィミーシィ氏族は東欧、特にルーマニアに多数住んでいたいわゆる「古城の主」であり、中世にはヴェントルー、ラソンブラと並んで最大勢力を欧州で誇った氏族でした。しかしサバトの成立時に発生した大虐殺によってその勢力は衰退し、新興サバトに参加して新大陸に渡った若者たちが中心となったのです。
 しかし今でも欧州の山奥に潜んで、旧態然とした生活を送っているツィミーシィがいます。彼らは「古ツィミーシィ」と呼ばれています。直接サバトを破壊しようという動きは見せていませんが、サバトの血塗られた歴史に不気味な影を落とし続けています。

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