マルカヴィアン

Method in the Madness

MALKAVIANS

 狂人。
 秩序紊乱者、社会不適格者、神に触れられた者、超越者。世界のあらゆる地域で現実から脱落あるいは超越してしまう人々は存在します。彼らはその地域それぞれのやり方で扱われ、時には弾圧され、隔離され、時には神の預言者として崇められたりするのです。彼らは秩序に打撃を与える存在であり、トリックスターなのです。

 マルカヴィアンはこの狂人たちの系譜を最も純化したようなヴァンパイア氏族です。彼らは狂気と混沌そのものであるといってもよく、その精神は他の血族には理解しがたいものばかりです。それゆえに、彼らは怖れられ、敬遠され、目をそむけられてきました。偏執的なプリンスの許では次々と処刑されたりもしたのです。

 しかしあえてここでは、この狂気の氏族の様相を垣間見ることにしましょう。ここに書かれていることは全く不十分です。なぜなら狂気には我ら常人には計り知れぬ深淵があるのでしょうから。あるいは、もはやあなた自身がそのとば口にいるのかもしれませんが。


幻視者の目

Visions of Mad Prophets

 マルカヴィアンに何か決まった行動理念があるのか?という疑問は、血族の学者たちを長年に渡って苦しめてきた問題です。他の氏族よりも遥かに多様なメンバーを抱えているこの氏族は、ただその狂気の赴くままに混沌とした活動を続けているように見えます…いえ、実際そうなのかもしれませんが、何事にも裏をかんぐる性分の血族たちはその狂った行動の背後に何かより大きな目的があるのだろうと考えてきました。マルカヴィアンの長老たちも、それを肯定するような言動をしてきているのですが、他の大部分のマルカヴィアンたちは、そんな大目標があるとしても気付いてもいないのでしょう。


混沌の伝承

March of Madmen

 マルカヴィアンの伝説と歴史は、血族の歴史家ですら気が狂ってしまうくらいぐちゃぐちゃに混乱して伝えられています。そもそもこの氏族の歴史などを統一的に記述することなど無謀極まりないことなのですが、それでもあえてこれに挑んでみましょう。もちろん、これを正しいと見るかどうかは見る者次第といったところですが。

 マルカヴィアンの四千年に渡る歴史は、一見するとめちゃめちゃのように見えますが、それでもあるひとつの目的をそこに伺い知ることができます。それは、現実を打破し、新しい何か、見えざる何か、感じることのできぬ何かへと超越的なブレイクスルーを果たすことです。マルカヴィアンは、自分の目や心が読みとることのできない遥かな世界があるという妄想(?)に取りつかれているのです。この考えにどのようにアプローチするかは個々のマルカヴィアンによって非常に多種多様ですが、共通しているのは、世界をよりよく理解するために、彼らは人や生き物の闘争に着目するということです。マルカヴィアンの伝承によれば、あらゆる生き物は即興的に次々と新しい感覚を生み出してきたのであり、「声の声」を聞くことで探求が進んできたのですから。

 マルカヴィアンの長老たちによれば、マルカヴィアンの長く悲劇に満ちた歴史は、氏族の創始者マルカヴが生まれる前から始まっていたといいます。それは無形の宇宙を創造し、混沌から秩序を生み出した原初の力に始まるというのです。

 宇宙はダイナミズムに溢れた存在であり、無限の可能性と矛盾に満ちていました。この宇宙に住んでいたのが時空を超越して存在する〈星の子〉らでした。彼らは純粋な可能性の存在であり、今や彼らを理解することは不可能です。〈星の子〉らは自らの有する永遠性を他者から守るために、永遠の可能性を言葉と音に加工したのです。これは他の住人や自分自身の存在を大きく変えていきました。宇宙の魔法サイクルは変容し、自由な可能性の流れは停滞しました。純粋な流動エネルギー体であった妖精たちは、生命線である魔力を乱されたことで、多くが滅んでいきました。生き残った者も幻想郷アルカディア界(Arcadia)を逃げ出す羽目に陥ったのです。

 この魔法的荒廃は今日まで続いており、地球の現実は科学の“客観的現実”という十字架にからめ取られ続けています。マルカヴィアンは、妖精の秘密の味方として、現実を再構成し、魔力を復活させようとしているのです。

 こういったわけで、マルカヴィアンは宇宙の創造自体について異なる見方を持っています。同様に、ヴァンパイアの始祖カインについても異なった見方を持っています。他の氏族同様、彼のことを卓越した人物であり、ヴァンパイアの力によって人々から傑出した存在だったと見ていますが、他の氏族と違うのは、マルカヴィアンは彼の事を、人工的に固定化されてしまった現実の障壁を打破しようとした人物だと見ているという事です。
 人々に恐怖と尊敬をもたらす彼に押された印とは、ヴァンパイアとしての魂だけではなく、内なる悟りをも意味していたのです。彼は、固定化された変容不能な現実の障壁を打破し、永遠の可能性を持つ宇宙へと帰そうという崇高な目的を持っていたからです。

 カインは、自分の探求に子らが皆ついてきてくれると信じていましたが、そのほとんどは彼の目的を誤解し、かわりに利己的な目標を追求するようになりました。カインの子の中で唯一人マルカヴのみが、始祖の探索行をよく理解していたのです。彼は自分の知覚・解析能力を様々に変えていくことで、内なる目と永遠との間にあるとばりを取り去ろうと努力しました。その結果もたらされたのは狂気でした。彼はもはや他者のように宇宙を見ることはなく、狂気を通して、宇宙がばらばらにされた時に固定化された可能性を見つめることが可能となったのです。

 マルカヴも自らの新たなヴィジョンを完成したわけではありませんでしたが、試行錯誤を絶え間なく続けました。彼は自分の子に新たなヴィジョンを伝え、彼らを用いて、心理的障壁を破るための永遠の実験を行いました。流動的な現実によってもたらされる精神錯乱が彼らの多くの意志を破壊してしまうことをマルカヴは知っていましたが、それでももたらされる成果はそれに値すると思っていたのです。

 マルカヴは他の第三世代たちとともに「第二の都」に住んでいました。彼とそのしもべたちは他の者が受け入れて生の土台としている現実を拒絶したため、都に大きな混乱をもたらしました。他の第三世代たちは皆の脅威となる危険人物としてマルカヴを糾弾しました。都が崩壊すると、マルカヴとその眷属たちは、ペトラの街へと逃げ延びました。しかし、マルカヴはそこで追っ手によって打ち倒されてばらばらに引き裂かれてしまったのです。大いなる父を失った眷属たち(マルカヴの子ら…マルカヴィアン)は、散り散りになり世界中へと去っていきました。しかしマルカヴは滅んではいないと言われています。一説によれば、この地にマルカヴが眠っているために、いつまでたってもこの地から争乱がなくならないのだとも言われています。

 マルカヴィアンは全世界に散らばり、各所で破壊的な影響をもたらしました。彼らは人々を狂気に陥れ、都市を混乱に導きました。マルカヴィアン自身が植民地や宗教団体、あるいは軍隊を持つことはめったにありませんでしたが、彼らはあらゆる植民地、宗教、軍隊そして都市を自分の奇怪な見解に染めていきました。

 マルカヴィアンの中でも高度な悟りに達した者は、妖精の世界を見、アルカディア界への螺旋状の道をたどって、新たな世界を旅することができました。彼らは妖精と契約を交わしましたが、その多くは、妖精という存在を消してしまう、可能性エネルギーと矛盾の人類による消去を全力で阻止するというものだと認知されています。

 マルカヴィアンの中には神秘的な指導者となり、今日に至るまで正統と見なされるような教主になったものもいます。彼らは数人の弟子を連れて、宗教組織を揺るがすような知的革命を強力に推進し、その行く先々に大混乱を招いたことで知られています。

 インド、ペルシア、メソポタミア、エジプト、原始ヨーロッパ、そのすべてでマルカヴィアンは狂気と悟りを広め続けました。彼らは謎めいたアジアの国々にまで分け入り、東洋のヴァンパイアとも交流したと言われています。文明の中にはマルカヴィアンを聖人と崇めたものもありましたが、多くの者は彼らを拒絶し、追放しました。

 マルカヴィアンは、住み着いた文化圏で、狂人たちの守護者として暗躍しました。自ら身を守ることのできない狂人たちに代わって(?)マルカヴィアンは、彼らを預言者などに祭り上げることで虐待から守ったのです。さらに、既存の権威をかき回すことで、その社会の活性化をうながし、時にはある種の方向性すらもたらしました。結果として、マルカヴィアンは容易に弾劾の対象となりました。他の氏族の長老の中には、マルカヴィアンの悪質ないたずらに激怒して復讐を誓う者も少なくありませんでした。このため、マルカヴィアンの数は少数にとどまり、世界への影響力もそれほど大きなものにはなりえなかったのです。

 大叛乱が中世に発生すると、マルカヴィアンたちは長老側でも叛徒側でも多種多様ないたずらを起こし、戦況を引っかき回し続けました。彼らの悪さに仕返しをすれば、それは千倍になって跳ね返ってきたのです。叛徒たちはしばしばマルカヴィアンへの復讐のために、真の敵との戦いを放り出すことすらあったと言われています。

 一方、カマリリャの長老たちは、このトリックスターたちを敵に回すよりは、予測不可能ながらも味方につけておいたほうがよいという結論に達しました。具体的にどうやって味方につけるかはさすがの強大な長老たちですら皆目見当がつかなかったのですが。ところが、この頃、マルカヴィアンも第七世代のインド出身のバラモン僧ウンマーダの下で大部分が結束していたのです(!)。彼らは一斉にカマリリャの門戸を叩き、疑惑に満ちた長老たちの視線の中、氏族全体でのカマリリャへの参加を表明しました。

 しかし、カマリリャが叛徒に辛勝をおさめたとき、ウンマーダの女弟子だったヴァサンタセナ王女は、叛徒たちへの寛恕を求めました。苛烈な処断は新たな争いの火種を生むだけだと主張した彼女でしたが、怒りに燃える長老たちにその意見は聞き入れられませんでした。結局、叛徒たちは徹底的に討伐されることになりました。失意のヴァサンタセナは秘かに叛徒の囚人たちを脱走させ、自分もサバトへ入会したのです。カマリリャの長老たちは激怒しましたが、彼女の言った警告ゆえにマルカヴィアン全体を処罰することはできませんでした。現在でも、ヴァサンタセナの系統は反マルカヴィアンとして、サバトの中で最も混沌とした勢力として生き残っています。そして、彼女こそがサバトの間に「啓発の道」を広めた人物だと言われています。


狂人の掟

Tradition of Non-Tradition

 マルカヴィアンにも数多くの掟が実際には存在します。ただ、その内容は狂気の気まぐれに応じて常に変転しています。彼らは正気の者にはうかがい知れない深遠な目標を目指して動いており、他のヴァンパイア同様に真の本性を何重もの心の層の奥底に隠しています。彼らによれば、マルカヴィアンは皆、狂気と無秩序の仮面をかぶって悟りへの道をたどっているのだそうです。本当のところはわかったものではありませんが。

 マルカヴィアンを理解するのに鍵となる掟は七つ(あるいは八つ?)あります。他の血族の学者によれば、これらの掟を知らずにマルカヴィアンにつきあうと、その悪戯のためにひどい被害を被ることは間違いないとのことです。

第一の掟:掟は可変の掟

 マルカヴィアンの中心的な掟です。現実とは可変なものであり、こね直すことができる粘土のようなものです。知性ある生き物は自分の心を形作るように、現実も形作ることができるのです。ただ、ほとんどの人々はあらかじめ他の者によって用意された鋳型に、現実を当てはめてしまうため、固定化した現実しか生み出すことができません。このようにかちかちになった脳味噌が生み出した現実は、逆に脳味噌自身を縛ってしまいます。これが現在の世界のありようなのです。

 マルカヴィアンはこういった鋳型に囚われません。彼らは自分の思考をいろんな形で放出して、実に様々なテーマの下で現実を再構築しようとします。悪戯によってマルカヴィアンはモータルにせよ血族にせよその思考をリフレッシュして再形成していきます。奔放な心の働きによって、粘土から現実を作り上げ、現実を粘土へと戻す。これがマルカヴィアンの実行していることです。

第二の掟:割れ鏡の掟

 マルカヴの血を引くマルカヴィアンは、精神を普通は呪縛している常識のくびきから自由です。この結果、彼らは魔法的な洞察力を有することになります。言い換えれば、世界を別の視点から見ることができます。この視点を得るために、マルカヴィアンの多くは生前の世界観を捨て去ります。ごく少数の者はセルフイメージすら捨て去ってしまいます。これを「割れ鏡」の比喩で表現します。この氏族のシンボルはこの比喩を暗示しているわけです。

 セルフイメージの鏡を壊したマルカヴィアンは、新たな世界の可能性に目を開きます。従来の現実とは異なった視点から世界を見るため、彼らの見聞き感じる物事は、いわゆる正気の者には全くうかがい知れないものとなるのです。彼らは独自の知覚能力を持つようになり、それがどのような知覚なのかはそのマルカヴィアンによるのです。

第三の掟:血には狂気の掟

 マルカヴィアンは、現実という鏡を壊して新たな視点に目を開く際、心のくびきを脱することで、同時に暗く悪意に満ちた心の闇に苦しめられることになります。これはマルカヴの血のもう一方の遺産でもあります。この苦悩の中にあるマルカヴィアンは、カタトニアに似た状態に陥り、ぶつぶつとわけのわからない事をしゃべったり、いきなり激怒したりし、大変危険な存在となります。この内なる苦痛が支配している間は、外部からの苦痛などものの数ではありません。いわば〈狂乱〉しているのと同様な状態になってしまいます。

 あまりに内なる苦痛が強い場合、マルカヴィアンは自己破壊に走ってしまうこともあります。この事から、マルカヴィアンは特に自殺率の高い氏族として知られています。また、あまりの苦痛に耐えかねて、旧来の世界観に立ち戻ってしまう者もいます。こうしたマルカヴィアンは、自己の信念を自己に覆い被せることで、苦痛から逃れようとします。

第三の掟:世界的狂気の掟

 現実を構築するときにはマルカヴィアンは孤独ではありません。彼らは世界全体を狂人の巣だと見ており、狂気こそが真なるものであると見ています。マルカヴィアンは自分たちを、正気という檻から逃げ出すことに成功した芸術家であると見なしています。

第四の掟:悪戯の掟

 他の血族の間で悪名高いマルカヴィアンの習性は、その悪戯です。彼らの悪戯は他の氏族の壮大な計画や陰謀を一瞬の内に瓦解せしめてしまうほどの破壊力を持ちます。時には非常に冷酷で危険な悪戯も施されます。ただの愉快犯であることもあれば、全くもって何の理由もない悪戯もあります。死に至るように悪戯も珍しくありません。このため、多くの血族はマルカヴィアンの悪戯のせいだと知ると激怒しますが、それを喰らっても少なくとも生き延びられたことにほっとする者も少なくありません。

 マルカヴィアンの悪戯は全く理由も目標もないように見えますが、長老たちの多くはそれらが何らかの意図をもって行われていると信じています。そのため、彼らはヴァンパイア存在に関する様々なジレンマを解決してくれるようなブレイクスルーをマルカヴィアンに期待することもあります。

 なお、マルカヴィアンの悪戯の伝統は、その不気味な妖精の味方から受け継いだものだと言われています。

第五の掟:マルカヴィアンとアルカディア界の絆の掟

 マルカヴィアンは、妖精たちから秘かな援助を受けていると信じられています。高位のマルカヴィアンの賢者は、妖精郷を訪れることができるとも言われています。マルカヴィアンや妖精の悪戯は、モータルの文明、ヴァンパイア社会、科学的合理性、記録済みの歴史などなど、宇宙を縛り付けるようなくびきを破壊するために行われるのです。

 妖精たちは、マルカヴィアンに魔法の力をもたらし、太古の妖精伝承を伝えています。謎めいたワードイーターに代表されるマルカヴィアンの一部は、ヴァンパイアから妖精に変化したと言われているくらいです。

第六の掟:規則の打破

 マルカヴィアンは、他の者が到達しえない宇宙知覚能力を体得しているため、彼らの持つ概念を他の者に伝えることは極めて困難です。しかし、もしその概念を学び取ることができれば、彼らもまた、マルカヴィアンと同様、現実の束縛を破ることができます。要するに「規則の打破」が可能となるのです。この打破こそが妖精魔法の秘密であり、マルカヴィアンの狂気の最高段階でもあるのです。

 この段階にまで達することができたマルカヴィアンとしては、ロシアの狂僧ラスプーチン、“喰らうもの”という名しか伝わっていない謎めいた人物、オイディプスに謎をかけた神秘的なスフィンクスなどが伝えられています。


狂気の階梯

Twisting Anti-hierarchy

 マルカヴィアン氏族の内部構造は理解しがたい代物です。それは上下関係がはっきりしている氏族の血族からすれはなおさらです。彼らは狂気を段階的にとらえると言われており、それが氏族内での地位に反映されるという話が流れています。本当かどうかはマルカヴィアンたちにもわからないような気がしますが。

マルカヴィアン・タイム

 マルカヴィアンたちの集会は「マルカヴィアン・タイム」(the Malkavian Time)と呼ばれます。これは、マルカヴィアンたちが何の準備も予告もなしに、突然同じ時間と同じ場所にやってきた時に行われます。彼らの間には“マルカヴィアン・マッドネス・ネットワーク”によって、他の生物にないような意識レベルでメッセージ交換を行われるので、こうしことが可能になるのです。このレベルのシグナルは、高い段階のマルカヴィアンならばもっと敏感に感じ取ることができるのです。

 マルカヴィアン内部の権威付けは、他の氏族と同じように長老を敬うというものであることには変わりないのですが、時には幼童でも奇矯な行動によって他の関心をかい、敬意を受けることができます。普通、マルカヴィアンは年齢ではなく、どれだけマルカヴの示した狂気の道に準じているかを問題にしているからです。


マルカヴィアンの五段階

Five Enlightments of Malkavian

【愚者】Fool

 マルカヴィアン・ヴァンパイアになったばかりの段階。まだ呪いは始まったばかりなので、狂気は初期徴候しか見せていません。チックや神経症、弱い恐怖症などが発現し、その悪戯もあまり害はありません。この段階のマルカヴィアンは事実上外部の脅威にならず、内なる悪魔にほとんどの力を傾注しています。内なる葛藤を隠すことはできないため、他の氏族の冷酷な血族の中にはこの段階のマルカヴィアンを呈の良い見世物として楽しむ者すらいます。

【錯乱者】Maniac

 呪いが強まるにつれ、マルカヴィアンの心理的苦痛は倍増し、深刻な神経症に陥ります。内なる激痛のために、暴力的な悪戯が発現し、しばしば破壊的な被害をもたらします。他の氏族にとっては、無視できないような行為に走るが故に、錯乱者段階のマルカヴィアンが最もよく知られているマルカヴィアンです。

【狂人】Madman

 葛藤対象である精神錯乱を受け入れることで最初のポジティブな変化がマルカヴィアンに訪れます。何度も精神的打破と再構築を繰り返すことでこの段階に至ることができます。この段階では、マルカヴィアンは常識的な現実から乖離が進み、狂気を受け入れたことによって、自分の知覚能力や保身能力の分を越えた領域にまで足を踏み入れようとします。彼らの悪戯はより巧妙に正確に行われるようになり、知覚のブレイクスルーによって高度な洞察能力を獲得します。多くのマルカヴィアンはこの段階に到達できません。

【物狂い】Lunatic

 ほんの一握りの者だけがこの段階に到達できます。マルカヴィアンの洞察能力は高まり、自分の狂気を用いて、固定化された世界という幻影を打ち破ることができるようになります。彼らは狂気のくびきすら脱し、より高次の現実を認識できるようになります。マルカヴィアンは現実世界の法則を打ち破るような恐るべき力を獲得し、その悪戯は真に恐るべき効果を発揮するようになります。

【愚者】Fool

 この時点で、マルカヴィアンは今まで自分が体得してきたことが全て間違いだったことに気づき、振りだしに戻ります。この段階は事実上最初の段階と区別がつきません。

 ほとんどのマルカヴィアンは最初の二つの段階に留まります。狂気を受け入れることのできる者は極めて少数だからです。狂気を受け入れるという事は、物質界とのあらゆる絆を断ちきる事に他なりませんから、余程精神に強力な反旗を翻さない限り、到達は不可能なのです。このような多大な精神の消耗を必要とするために、マルカヴィアンは多くが燃え尽き症候群に見舞われます。

inserted by FC2 system