ハウスルール

Golden Rule: There is no rule.

HOUSE RULES

 ここでは、ストーリーテラー・システム(以下STS)を運用する上で、私が改善したほうがよいと感じた点と、具体的な改善案について述べます。実際に改善案を使用するかどうかは個々人の判断に任せられることになるでしょう(当然ですが)。


戦闘ルール

Combat

 STSで一番複雑なルール部分は、他のさまざまなロールプレイングゲームと同様、戦闘です。しかし、本来どちらかというと雰囲気重視、演技重視であるホワイトウルフ社のゲームにとって、この戦闘システムはお世辞にも簡便とは言い難いのではないでしょうか。ここでは、筆者が気になった部分を列挙していくことにしましょう。

問題提起:ダイスロールの過多

 最も問題なのは、1つの戦闘行動を解決する際に要するダイスロールの回数が多い、ということでしょう。単純な攻撃・防御・ダメージ決定、というだけでも少なくとも以下のロールが必要となります。

 五回、というのはいかにも過多です。実際、筆者のプレイの際にも、煩雑だという声が参加者からあがったことは一再ではありません。この点を中心に、改善案を示していきたいと思います。具体的には、ダイスロールをなるべく減らす方向、ということになります。

イニシアティブ

 日本語版の底本である「Revised Edition」では、戦闘場面での行動順はイニシアティブというかたちで決定されます。これの決め方は〈敏捷〉+〈機知〉(この合計値をイニシアティブ値と呼ぶ)で難易度6の判定を個々のプレイヤーが行い、成功度の多い順から行動することになります(同数ならばイニシアティブ値の高いほうが先)。

 しかし、毎ターンはじめにダイスロールを行うのは、いかにもわずらわしいのが実際です。そこで、このイニシアティブ判定を一切行わず、行動順を固定値で決めてしまいます。そのために「Quick Start Kit」で提示されているルールを多少修正して使います。ストーリーテラーは、戦闘場面のはじまる際にはあらかじめイニシアティブ順を記録しておくと運用しやすいでしょう。

 イニシアティブの順番は、以下のように固定値で決定される。

  1. 発動中の訓え《瞬速》の高い順
  2. 能力〈敏捷〉の高い順
  3. 能力〈機知〉の高い順
  4. 能力〈知覚〉の高い順
  5. 才能〈警戒〉の高い順
  6. 戦闘技能の高い順*
  7. 〈意志力〉原点の高い順
  8. 〈意志力〉プールの多い順

(*)彼我の距離を確認。遠距離なら〈銃器〉の高いほう、近距離(接近戦可能な距離)なら〈格闘〉か〈近接武器〉のどちらか高いほう、で比べる。

 以上すべてで決まらなければ、同時行動と見なす。

複数回行動の禁止、積極防御

 1ターンにキャラクター各人は1回の行動権を与えられていますが、実際には“複数回行動”のオプションを用いることで、二回以上の行動が可能です。もともと“ジャンプして銃撃”とか“かわしながら反撃”といったアクションを再現するために導入されたルールだと思われますが、“複数回行動”ルールの存在は、訓え《瞬速》で得られる追加行動と混同しやすく、かつダイスプールの計算や行動解決の順番がややこしくなるという弊害を生んでいます。

 そこで、物事をより単純にするために、複数回行動のオプションは一切とれないものとします。つまり、この結果、《瞬速》を発動させないかぎり、攻撃と防御を同一ターンに行うことができなくなりますが、まだダメージ減少判定があるので、防御側のプレイヤーに理不尽感はあまり与えないのではないかと思います。また、以下のような“積極防御”というルールを追加します。このルールは、イニシアティブの固定化を揺動させる意味もあります。

 防御側は、1行動消費することで、本来のルールどおりの防御行動を行って相手の攻撃判定の成功度を減らすことができる。この結果、攻撃側の成功度がゼロ以下になったら、攻撃は失敗となる。また、積極防御で攻撃を失敗させることができたら、次のターンにかぎり、相手よりも必ずイニシアティブは先になる。

ダメージ判定をなくす

 次に問題なのは、攻撃が成功した場合、さらに攻撃側は1回、防御側は防御行動も含めて2回のダイスロールが必要となる点です。これは瞬間的な行動を解決するという点で、実際のプレイ感覚との齟齬が大きくなります。つまり、一閃した剣を受け流す、狙い澄ました一射をすんででかわす、といった感じではなくなってしまうのです。

 そこで、攻撃側のダメージ判定をなくしてしまうことにします。ただし、以下の提案はかなりデッドリーなことに注意してください。戦闘があっという間に終わる危険性が多分にあります。

 攻撃判定が成功した場合、成功度が3以上ならば、攻撃側は相手の負傷段階から武器ダメージぶんを減らすことができる。成功度が3未満ならば、武器ダメージを半分にして(端数切り上げ)相手の負傷段階から減らす。なおこのとき、《剛力》の効果は半分にした後に適用する。

 この後、防御側は本来のルールどおりダメージ減少判定を行って、負傷段階へのダメージを減殺することができる。

 以上のハウスルールを適用することで、1回の攻撃・防御のやりとりに必要なダイスロールの回数は、攻撃判定、(積極防御の判定)、ダメージ減少判定、の二回(または三回)にまで減ります。これでかなりスムーズにターン進行できるのではないでしょうか。


飢えの問題

Hunger

 ヴァンパイアは血に飢えた状態では、狂乱しやすくなることをはじめとしてさまざまな不利益をこうむります。しかし、ルールブックには〈血〉がどこまで減ったら“飢え”たと見なされるのか、はっきりした基準が書かれていません。そこで、「狩り」の項目と「Quick Start Kit」を参考に、以下のように飢えの状態を規定します。

 ヴァンパイアは〈血〉が「7−〈自制〉」未満に下がると、血に“飢え”る。この間、血を見たりその臭いをかいだりすると、ヴァンパイアはすぐさま血を吸ってしまわないためには狂乱判定を行わなければならない。判定の難易度はルールブックの256頁参照のこと。また、〈血〉が2点(〈自制〉が5ならば1点)以下に下がると、“極端に飢えた状態”となり、狂乱判定の難易度は2上昇する。〈血〉がなくなったヴァンパイアは、狂乱判定を要求されれば必ず狂乱してしまう。

以降継続……。


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