ジョヴァンニ

Sin of the Father

GIOVANNI

 ジョヴァンニ。
 14世紀に勃興したこの氏族は、トレメールと同様の迫害を受けながらも、その姿を血族の表社会から消すことで生き延びてきました。その所業は他の血族から恐怖と憎悪をもって見られていますが、それは決して故無きことではありません。死霊を操る力、インモラルな同族婚、マフィアに通ずる謎めいた組織。その全てが氏族の最終目標へとつながっているのです。

 それでは「Giovanni Chronicles」で次第に明らかにされているこの氏族の姿を垣間見ることにしましょう。


死霊術師の系譜

The Darker and Darkest Secrets

ジョヴァンニ勃興

 後にジョヴァンニ氏族の創始者となるアウグストゥス・ジョヴァンニの〈抱擁〉は、約九百年前、カッパドキアン山地中にあるカッパドキアン氏族の寺院エルキイェスでのことでした。その場に居合わせたのは、アンテデルヴィアン・カッパドキウスとその子ヤペス、そして娘コンスタンキアでした。アウグストゥスは卓越した才能を持った死霊術師であり、同時に大変野心的な人物でもありました。彼とその一党はカッパドキアンの中でも頭角を現していきましたが、それが始祖カッパドキウスの殺害という事態に発展したのは、カッパドキウスが研究を通して神になろうと志したからだと言われています。

 そして運命の1333年、当時カマリリャ創設を目指す長老集団「創設者」(Founders)と謎めいた「イサーク団」(Conspiracy of Isaac)が水面下で混迷の中にあった血族社会の支配を狙っていた頃、アウグストゥスは子であるクラウディウスとともに、彼ら両勢力を出し抜いて、かぐろき聖テモテ寺院に眠っていたカッパドキウスの墓所を襲い、その血を吸い尽くすことに成功したのです。かくしてカッパドキアン氏族は滅亡し、新たにジョヴァンニ氏族が誕生しました。

 ジョヴァンニはカッパドキアンの残党狩りを精力的に推進すると同時に、ラミアと呼ばれる奇妙な血脈をも滅ぼしました。その血脈は代々の長(必ず女性)が「ラミア」の称号を名乗り、闇の母リリスの技を伝えていました。アウグストゥスは当時のラミアをも喰らいましたが、その時に、現在まで続く「死の接吻」の呪いを受けてしまったと言われています(一説には、カッパドキウスの子ヤペスの呪いだとも言われていますが)。

ルネサンス

 イタリア・ルネサンスが隆盛し、メディチ家をはじめとする数多くの豪商たちが栄華を極める中、古典文化が次々と復興を果たしていきました。この時代、ジョヴァンニ氏族にとって大きな成果が現れました。

 カッパドキウスの魂の片鱗がまだ残っていたのか、アウグストゥスはカッパドキアンが遺した「天への昇華」に関する書物を発掘し、その研究に没頭しました。そして数年の後、カッパドキウスの考えが完全に間違っていたことを悟ります。彼は地上に天を呼び降ろそうとしたのですが、実は呼び出されるのは天ではなく地獄だったのです。アウグストゥスは、発掘された古代バビロニアやエジプト、グノーシス派の文献で言及された「異界」「精霊界」とはすなわち休らえぬ死者たちの住まう冥界(Underworld)のことだと解釈しました。そしてそうした文献には同時に「大いなる闇の召喚」と「永遠の光を吹き消す」ことについても記されていました。アウグストゥスの解釈によれば、これは生者の世界(Skinland)と死者の世界(Shadowland)とを隔てているとばりを崩すことであり、それが成った暁には、死者を支配する者こそ世界の支配者となることができるとされたのです。

 しかし、カッパドキウスの過ちを再び繰り返さぬよう、アウグストゥスはジョヴァンニ氏族全体を探求に向かわせるようなことはしませんでした。氏族が着実に成果を重ねていけば、やがて望むべき結果に結びつくだろうと確信していたからです。訓え『死霊術』(Necromancy)を研究して「永劫の夜の門」を開く魂の力を得るには、膨大な資金が必要なのは確実でした。そういうわけで、ジョヴァンニ氏族はより世俗的な物事にも積極的に関わるようになっていったのです。

 実のところ、「終わり無き夜」を招来するには具体的に何が必要かは判然としていません。一説によると「一万の一万倍の魂」を集めねばならないと言われていますが、いずれにせよ成就には極めて長い時間がかかるでしょう。しかし、ヴァンパイアはそれを果たすだけの時間を既に持っているのです。

約定

 だが、トレメールがそうであったように、この簒奪者たちには他の血族たちからの敵意という大きな試練が待っていました。トレメールはその強大な魔術の力と巧みな外交戦術で波を乗り切りましたが、アンテデルヴィアンの帰還を導くような世界の改変を志すがゆえに“悪魔の血族”と呼ばれたジョヴァンニには、より慎重な生き残り策が必要でした(もちろん、アンテデルヴィアンの帰還などというのはジョヴァンニの眼中にはありません。なぜなら、彼らにはアンテデルヴィアンは現存しているのですから!)。

 結局、ジョヴァンニが採った戦略は、血族社会から姿を消すことでした。当然ながら完全に姿を消してしまうことなど不可能でしたが、他の血族たちが血道を上げている「ジハド」から距離を置くことで、彼らの目をくらませ、注意をそらすことにしたのです。

 かくして1528年、ジョヴァンニ氏族の代表であるクラウディウスと、他の氏族の長老たちとの会談が開かれました。十夜に渡る討議の末、クラウディウスはジョヴァンニ氏族が血族社会の事柄に一切関わらないとする誓約書にサインをしました。自分たちの物事だけに専念し、他の同族たちを煩わさないと誓ったのです。また同時に、「創始者」のひとりであるラファエル・デ・コラゾンの提案を受けて、新興カマリリャの幹部会議を十三年ごとにジョヴァンニ氏族の総本部であるヴェネツィアで、ジョヴァンニ抜きで開催するということも約束されました。これは双方にとって喜ばしい結果でした。カマリリャ側はジョヴァンニに定期的に監視団を送り込むことができるし、ジョヴァンニは彼ら他の血族たちの動向を逐次知ることができるようになったからです。この約定が実際のところ、どちらにとってより有益だったかは、議論の分かれるところですが。

新たなる手がかり

 こうして、ジハドから距離を置いて自らの道を歩むことを選択したジョヴァンニでしたが、17世紀に、ベルグラードで研究を進めていたメンバーが二千年前にとあるユダヤ人によって書かれた文献が存在することをつきとめました。これが世に言う「カザルの手記」であり、「終わり無き夜」を招来するための重大な情報が書かれていると推定されたのです。しかし問題は、カッパドキアンの壊滅以来誰もこの文書を見たことがないということでした。アウグストゥスは、おそらくそれがエルキイェス寺院にある巨大な蔵書庫にあるのだろうと見当をつけ、クラウディウスをその地下図書館へと向かわせました。クラウディウスは全域を徹底的に捜索しましたが、結局見つからずじまいでした。焦燥感にかられた彼は、発掘したものを全て運び出した後に寺院に火を放ちました。カッパドキアン氏族最大の書庫はこうして地上から消滅しました。

奇怪な訪問者

 同じ頃、カプチン(the Capuchin)と呼ばれる謎めいた人物がジョヴァンニ氏族に接触してきました。彼はヴァンパイアとも何とも知れない奇怪な修道士の姿をした者であり、アウグストゥスとの会見で、ある取引を申し出ました。それは、カプチンがジョヴァンニのためにヴァティカン図書館の深奥にある数々の重要文献を持ち出してくる代わりに、『死霊術』の技を伝授してもらう、というものでした。アウグストゥスはこれに同意し、カプチンはレイスを呪縛する術をはじめとするいろいろな文書を氏族にもたらしたのです。そうした文書には、怖ろしいことに著者自身の幽霊が呪縛されており、彼らの伝えた知識によってこの時代に『死霊術』は飛躍的な発展を遂げました。

 ある晩、カプチンはアウグストゥスに重大な報せを持ってきました。それは、アウグストゥスの〈抱擁〉に関わるヤペスの手記の断片が発掘されたというものでした。その時、余ったカッパドキウスの血が、ヤペスとコンスタンキアの手によって壺の中に入れられ、蜜蝋で封じられたというのです(この壺は「真の器」と呼ばれます)。そして、それが隠された場所はエルキイェス寺院だったというのです!

 アウグストゥスは激怒しました。エルキイェス寺院は、カザルの手記探索の時、既にクラウディウスによって破壊されてしまっていたからです。アウグストゥスはカッパドキアン壊滅の頃から、自分が喰らったカッパドキウスの魂がわずかにその手を逃れていたのではないかという疑念を抱き続けていました。ディアーブラリィが効果を現している以上、そんなことはあってはならないはずですが、アウグストゥスは別の見解を持っていたのです。この疑いを晴らす千載一遇のチャンスが訪れたというのに、それは既にクラウディウスによって破壊されていたとは!

 クラウディウスはその夜を生き延びることはできませんでした。アウグストゥスに呼び出された時に、彼はすぐに自分の運命を悟りましたが、現場で実際に何が起こったかは、当事者二人とその場に居合わせたカプチンだけしか知らないことです。ただ、伝えられている話によると、アウグストゥスはクラウディウスと激しく闘い、〈狂乱〉した二人のヴァンパイアの戦いによって“霊廟”(ヴェネツィアにある氏族総本部)の壁に巨大な亀裂ができ、最後にはアウグストゥスは子の頭蓋を砕いて流れ落ちる黒い血をすすったということです。

 しかし、彼はクラウディウスを完全に喰らい尽くしたわけではありませんでした。動かなくなったクラウディウスの肉体はカプチンに預けられたのです。カプチンがその後それをどうしたのかは、誰にもわかりません。

産業革命

 19世紀に入ると、アウグストゥスは表舞台から姿を消しました。彼は世界が彼無しで動く中、現在も豪商のごとく不死の生を生きているといいます。一方、氏族はファミリーの目標に向かって邁進し続けました。始祖が死の研究に没頭するのと対照的に、氏族の若者たちは、中産階級を中心に展開した産業革命の時代の波に乗って、急速に世界経済を動かす勢力へと変貌していきました。この頃から、氏族は超俗的な研究生活を送る者と、世俗的な富を求める者との二極に分裂し始めたのです。

 後者は、世界経済を支配することで、世界経済を破壊する力を得ていきました。株式市場や銀行を破滅させることで起きる世界的な混乱を使えば、「終わり無き夜」を招来するに必要な「一万の一万倍の死者」を生むなど造作もないことだからです。

 この頃、マウゾレウムにひとりの醜怪な人物が現れました。彼はハイチのサメディ男爵と名乗りました。眼を刳り抜き舌を切断した子供らと、鼠頸部を切り落とされ口を縫い上げられた男たちを引き連れたその人物の姿は、腐り果てた死骸のようなものでした。彼とアウグストゥスは、その晩の会見以来、お互いに憎み合う仲となりました。

 サメディ男爵の訪問は、彼が例の「真の器」を発見したものの、開けることができなかったという事、カプチンがその買い手としてアウグストゥスを指名した、という事が理由のようです。そして、男爵によれば、その壺はマウゾレウムへ来る旅の途中でセタイトの手に落ちてしまったというのです。現在に至るまで、失われた「器」がどこにあるかはわかっていません。

未来に向けて

 こうしてジョヴァンニ氏族は現在に至ります。アウグストゥスは年齢相応に過去百年の間に何度も休眠に陥り、現在も既に三十年間眠りについています。しかし、氏族は動き続けています。ある者は「終わり無き夜」を目指してカザルの手記と「真の器」の発見に血道を上げています。またある者はファミリーの仕事を遂行し、資金を作り、現状維持のための組織を作り上げています。またある者は『死霊術』などの古い魔術に専心しているのです。

 しかしこの状況も長くは続かないでしょう。ゲヘナの噂が他の血族の間で流れるように、まもなく時代のサイクルが巡るはずです。ジョヴァンニ氏族は世界の転換点において、自らの存在証明を成そうとしているのかもしれません。


ジョヴァンニ・ファミリー

The Terrible Old Household

 ジョヴァンニは多種多様な要素をその中に含んだ巨大なファミリーです。しかし定命者の家族よりも遥かにその内部は熾烈な抗争と裏切り、謎めいた狙いで渦巻いています。ファミリーへの忠誠は絶対であり、部外者へ内部の者を売ることは決して許されないものの、ジョヴァンニはあくまで自身の動機で動き、氏族内での自分の地位を守ることに必死になっているのです。

【モータル・ファミリー】(定命者一族)

 ジョヴァンニに属する人間のファミリー達は、サバトのレヴナントに似ているようにも見えます。しかし、レヴナントとは違って、彼らはより上層では何かもっと遠大な計画が進んでいることには感づいている者が多少はいるものの、ほとんどは真相については何も知らされていないのが実状なのです。

 ほとんどの場合、人間のジョヴァンニはカトリック教徒です。彼らは教会と深いつながりを持っており、その事はジョヴァンニ氏族を利してきました。ただ、氏族よりも神への奉仕を選んだ者は、その座を剥奪され、レイスとしてパドゥアにある氏族のロッジア(支部)の守りに永遠につかされることになると言われています。

 メンバーは、ジョヴァンニ氏族のビジネスに何らかの形で参画しています。彼らは誰か他の者(ご主人様)の目的のために働くことを期待されるのです。ここで優秀な功績をあげたものは、グールとして次の階梯へ進むことを許されることになります。この事が、人間の間で熾烈な競争を招いているのは言うまでもないことでしょう。

 人間にとっては特に“ファミリー・ビジネス”が全てです。ジョヴァンニのモータル・エージェントたちは多種多様な背景と出身を持っており、ロッジアの管理、企業の経理事務担当、そして殺しなどのダーティ・ワークまでいろいろです。そしてその全員がジョヴァンニ・ファミリーのビジネスのために働いているのです。まれに、主たる死霊術師のために新鮮な死骸を調達する役目を負うこともあります。そういう場合は、直接墓荒らしをするだけではなく、仲介者として立ち振る舞うこともあります。いずれにせよ、ジョヴァンニ・モータルの多くはその人生の大半を上司への奉仕に費やすのです。その中で、『ハムレット』ばりの陰謀劇が血のつながった者同士で起こることすらあります。そうした陰謀は軽蔑されるものの、それほど厳しく罰せられるわけではありません。この風潮ゆえに、血で血を洗う骨肉の争いは日常茶飯事ともいえるのです。

 その一方で、定命のジョヴァンニたちの悪名高い近親相姦的な関係も厳然として存在しています。彼らは自らの欲望に忠実であるがゆえに、愛人として従姉妹(従兄弟)を選ぶことも珍しくはないのです。そして彼らの間の「近親婚」もあまり罰せられることはありません。なお、親子や直接の兄弟姉妹同士で恋人になることはジョヴァンニの間でもあまり見られません。なぜならそうした血縁との結婚は禁じられているからです。

 ジョヴァンニ氏族ではファミリー・メンバーを無為に死なせてしまうようなことは少ないのですが、それでも相当数の人間が寿命、暗殺、処罰によって死に至ります。それほど優秀ではなかったために、グールや血族として生き延びることを許されなかった者は、レイスとして死後も氏族に仕える契約を結ばされます。とんでもなく愚劣な所業によって死に至った者はそれすら許されず、特定の場所に呪縛されて永遠に見張りを担わされることもあります。そうした運命に見舞われた者に関するゴースト・ストーリーはジョヴァンニ氏族の中にいくつも伝えられています。

【グール】

 ジョヴァンニ・ファミリーの大多数は、広範なグール・ネットワークを構築しており、ファミリーの約75%が血族の「奴隷」として働いています。これはカマリリャの基準から言って、マスカレードの危機を招きかねない数なのですが、ジョヴァンニは非常に巧妙に人間社会にグールを紛れ込ませているため、今までのところ大きな問題を惹起したことはありません。

 グール創造は「委任の接吻」(The Proxy Kiss)と呼ばれています。ジョヴァンニの者がグールになると、人間だった時とは比べものにならぬほどの広範な知識と秘密を他のファミリー・メンバーと分かち合うことになるからです。この時点で、彼らは正式にヴァンパイアの世界へと迎え入れられます。この後、グールたちは最高の報酬として〈抱擁〉を常に上に掲げられながら、永遠ともいえる時間を主人たちへの奉仕に費やすことになります。

 「委任の接吻」を行う際には、ジョヴァンニ血族はそのやり方に趣向をこらします。同じやり方は二つとないと言ってもよいくらいです。趣向が奇抜であればあるほど血族内での評判を高めることができるからです。

 ジョヴァンニ・グールの社会は、ヴァンパイア社会と人間社会を混合したような様相を呈しています。グール各人は所属する数人のグール・グループ(カヴンと呼ばれます)内でお互いに技量を競い合い、最終目標としての〈抱擁〉を目指します。最も優秀な者だけがその栄誉にあずかれるのです。カヴンの長はヴァンパイアが務めます。自分のカヴンにどれだけ多くのグールを抱えているかが、そのままそのヴァンパイアの力の大きさを示すことにもなります。クラウディウスは百人からなるカヴンを従えていたと伝えられています(どうやって血を供給したかは謎ですが)。

 グールたちは主人の仕事の補佐や尖兵、時には相談役として活発に活動します。極めて優秀なグールならば、主人の“顧問”として遇されることもあるでしょう。こういったグールは、他の血族からのヘッドハンティングにあうこともあります。ジョヴァンニ氏族はその活動の多くをグールに非常に依存しています。彼らからグールを採ったら手足をもがれた死骸のようなものだともいえるのです。ですから、その事を十分認識しているジョヴァンニは、自分のグールを必要以上に冷遇したりはしません。

【ヴァンパイア】

 極めて優秀な功績を得たグールは〈抱擁〉の栄誉に預かることができます。ジョヴァンニは軽々しくカインの呪いを分け与えたりはしないので、グールの多さに比してこの氏族の血族は少数を保っているのです。

 ついにヴァンパイアになることに成功した者は、自分がヴァンパイアの中でも最も邪悪で、サディスティックで、堕落して、直接的な意味での妖魔の社会に足を踏み入れたことに早晩気付くことになります。〈抱擁〉後の若者が得られる知識の暗さと深さは、グールであったときに得られるものとは比較することすらできないものです。ジョヴァンニ・ヴァンパイアとなることは、真の意味で最悪に呪われた者になることなのです。


傍系

Hands of Giovanni

 他の血族が思っているように、ジョヴァンニが全員ジョヴァンニの家名を持っているわけではありません。ジョヴァンニ・ファミリーを構成している家系は多種多様であり、今までこの氏族が強大な家門を次々と吸収してきた歴史を反映しているのです。ここでは、その代表的な家系を紹介しましょう。

ダンサーン Dunsirn

 スコットランド出身のこの一族は、その人肉食で悪名をはせていました。彼らはブリテン島、アイルランドの経済界の闇の部分で活動し、ジョヴァンニに貢献しています。西ヨーロッパにおけるジョヴァンニ勢力の拡大に、彼らは少なからぬ成果をあげてきました。しかし、その恐るべき食習慣は変わっていません。

ピサノブ Pisanob

 コルテスによってアステカ帝国が征服された時、そこにはピサノブと呼ばれる暗黒司祭たちが活動していました。彼らは神に犠牲をささげ、悪魔的な儀式にふけっていたのです。そしてそれは主に死者の世界に通じる知識を含んでいたのです。ジョヴァンニはそこに目を付けました。今ではこの暗黒司祭の末裔たちは、ひとつの家系としてジョヴァンニ氏族の一部となっています。

ミラナーズ Milliners

 アイリッシュ系移民であるフランシス・ミラナーを始祖とするこの家系は、米国のアイリッシュ社会の中で経済界の重鎮としてその力を伸ばしています。ここ五十年間における米国でのジョヴァンニの活動には、彼らの援助が不可欠であったと言われています。しかし彼らは大富豪でありながら、巧妙な経理操作や工作によって表社会には知られてはいません。

群小家系

 この他にもいろいろな家系が存在しています。その多くはルネサンス期にジョヴァンニ家に吸収された豪商の家系であり、様々な知識を氏族にもたらしています。


プレマシン

Lurkers under the Water

 ジョヴァンニの総本部は水の都ヴェネツィアです。この街は湿地の上に建設されており、過去何度も水没の憂き目にあってきました。その度に新市街が水没都市の上に建設され、今に至っているのです。これは逆に考えると、古代の都市廃墟がいまだ人に知られることなく水底に眠っているということも表しているのです。ジョヴァンニの恐れる「プレマシン伝説」はここに由来しています。

 「プレマシン」(The Premascines)とはすなわち、ヴェネツィアの水没廃墟の中に隠れて数百年の時を過ごしているという伝説的な長老たちのことです。彼らの多くはジョヴァンニ氏族の勃興以前からヴァンパイアであり、カッパドキアンの滅亡に伴ってジョヴァンニに味方した者たちだと言われています。水中で永遠の時間を過ごしている彼らが本当に実在するとしても、その精神がどんな怪物めいたものになっているのか、さすがのジョヴァンニたちでも想像することもできません。彼らは奇怪な魔術を使うとも言われており、ヴェネツィアの運河で時折起こる謎の転覆事故や水辺の失踪事件は、彼らの食餌の結果だと噂されています。

 この「アンテアクエリアン」たちを実際に見たことがあるという者は確認されていません。しかし、彼らの存在はジョヴァンニたちに背の冷えるような恐怖となって取りついているのです。


コーザ・ノストラ(イタリア・マフィア)

La Cosa Nostra

 最後にマフィアについて簡単に触れましょう。他の血族たちは、イタリア・マフィアとジョヴァンニ氏族を短絡的に結びつける傾向があります。しかしそれは真実とはいえません。ジョヴァンニは意図的に他の阿呆どもにそう思わせているのですから。

 マフィアはジョヴァンニが創始したわけではありません。彼らといえどもその起源についてはよくわかっていません。海賊や山賊から住民を守るかわりに用心棒代を徴収するシチリア島の地下組織として始まったらしいマフィアですが、彼らはいくつかのファミリーに分かれながら、世界中に広まっていきました(特に米国に)。有名な20年代の抗争では、いくつかのヴァンパイア氏族もこれに加わっていました。現在でも、マフィアにはヴェントルー、ラソンブラ、ブルハーといった氏族が積極的に関わっています。ジョヴァンニの少数の者もマフィアの一員として活動しているのですが、それはモグラにしか過ぎません。つまり、ジョヴァンニはこういった危険な組織を何の考えもなしに砲台として使うほど馬鹿ではないということです。ジョヴァンニにとって、マフィアは良い資金源・情報源として捉えられています。

inserted by FC2 system