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グローランサ

(1)世界概観

What's Glorantha?

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2000/12/02 ぴろき
この記事で使われている地図はすべて「Hero Wars - Glorantha」所収のマップの転載です。

 ここでは、「Hero Wars」の背景世界グローランサについて、もう少し突っ込んだ説明をします。しかしこれもこの豊かで緻密な世界のほんの外枠でしかありません。興味を持った人は「Hero Wars」のサプリメント「Glorantha」を購入して読むか、「ルーンクエスト」を持っている人からサプリメントを借りて読むとよいでしょう。ホビージャパン刊「グローランサ年代記」もたいへん参考になります。


地理

 グローランサは地球のような球形ではなく、無限の海のただなかに浮かぶ一辺が何万キロもある立方体の世界です。この立方体の上面、すなわち「地上界」の真ん中辺りにグローランサの大半の住人は住んでおり、地上の辺縁部には謎めいた不思議な領域が広がっています。世界の果てがどうなっているのかは誰も確かなことは知りませんが、東西には太陽が出入りする門が、北には永遠の凍てついた氷原が、南にはすべてを燃やし尽くす灼熱の大砂漠があるといわれています。

 地上界の上にドーム状の天空がかぶさっています。この天空の彼方には光に満ちた天界があり、星たちはドームにあいた神々の覗き穴です。天空と大地との間の空間は「中空」(なかぞら:Middle Air)と呼ばれ、嵐の神オーランスと赤い月の女神セデーニャが支配権を巡って争っている領域です。

 大地の下には闇に閉ざされた「地界」があり、世界の端で天空と接しています。地界には妖魔の巣や死者の国があります。

 地上を照らす太陽は毎朝、大地の東端にある「曙の門」から天空に沿って昇り、西に向かって進んでいきます。やがて夕方になって太陽が「夕暮れの門」に入って地界に降りると、地上は夜の女神の漆黒のマントに包まれるのです。太陽は夜の間に地界を西から東に向かって進み、翌朝には再び東から姿を現します。この永遠のサイクルはグローランサに“時”が生まれて以来、片時も止むことなく続いています。

グローランサの暦

 グローランサでおそらく最もよく使われている「太陽暦」に従うと、1日は太陽が東から昇って西に沈み、また再び東から昇るまでの間を指します。1週間は7日で、季節は8週間ずつ5つあり、1年のおわりには「聖祝期」と呼ばれる特別な2週間があります。したがって、1年の長さは294日です。
 なお、地域によって独自の暦法が使われていることもめずらしくありません。

 大地の表面には一面に海洋が広がっており、南北二つの大陸と無数の島々をその上に浮かべています。海洋の中心には「マガスタの渦」と呼ばれる巨大な渦巻があり、すべての水はここへ向かって流れていきます。

 北の大陸はジェナーテラといい、人口が最も多く、寒帯から亜熱帯までさまざまな気候風土を内に備えた多彩な陸地です。大きさはおおよそ北米大陸に匹敵します。北の果てには凍てついたヴァリンド氷河をひかえ、気候は北から南に向かって次第にあたたかくなります。「Hero Wars」の主な舞台はこのジェナーテラ大陸に設定されています。そしてドラゴン・パスはジェナーテラ大陸のほぼ中央に位置しています。

 南の大陸はパマールテラといい、気温が高く、生命の力に満ちあふれた豊かな土地です。沿岸部には都市文明が栄えていますが、内陸は広大なサバンナになっており、地球のアフリカに似た生活が営まれています。残念ながらパマールテラにはあまり詳しい設定がありません。

グローランサ全図

【グローランサ全図】
Genertela(ジェナーテラ):北方大陸
Pamaltela(パマールテラ):南方大陸
East Isles(東方諸島):東方大陸ヴィゼラの残骸

This map is from http://www.glorantha.com/new/maps_land.html.
Copyright(C)2000 Issaries, Inc.

ジェナーテラ大陸

 ジェナーテラ大陸は、大きく分けて西方、中部、東方の三つの地域から成っています。

 中部には、北方のペローリア地方にルナー帝国が横たわり、南方にはドラゴン・パスおよび海岸諸国があってルナー帝国の侵略に抵抗しています。

 西方には一神教を奉じる諸国が集まっており、北西部には聖騎士の国ロスカルムと未開の蛮地から成るフロネラ地方、南西部には古い歴史を誇るセシュネラ王国、そして東部一帯にはさまざまな種族や文化、信仰が混交する混迷の地ラリオスがあります。

 東方は、神代にはジェナーテラ大陸の中心だった大荒野地方が西半分を占め、東半分には謎めいた竜の王国クラロレラと密林に覆われた国々が存在しています。

ドラゴン・パス

 ドラゴン・パス地方(地図はここをクリック)は、周囲をぐるりと山脈で囲まれ、東の大荒野へ通じる一部の街道を除けば、南北の交通以外は事実上不可能です。

 嵐の民の聖地ケロ・フィン山(冬の峰)と呼ばれる高峰を中心に置いて、北西部にルナーの支配下に入ったオーランス人の王国ターシュ、北東部にトロウルをはじめさまざまな古の種族が住まう未開の森と山、中西部に魔道を操る黒騎士の国「黒馬領」、中東部に森と山々に覆われた旧サーター王国北部、南西部に古代の遊牧民の生き残り「草飼う民」が住む草原グレイズランド、南中部に呪われたアップランド湿原と獣人の暮らす「獣の谷」、そして南東部には旧首都ボールドホームを擁する旧サーター南部と光の神イェルマリオを奉じる傭兵の国「陽の天蓋領」があります。

 ドラゴン・パスから南下して海岸に至るルートは二つあります。西の街道は南西の農業大国エスロリアに続き、東の街道は山がちなヒョルトランドへ通じています。

 ドラゴン・パスの南方全域はケタエラと呼ばれ、数年前までは「聖王国」という統一王国が存在しましたが、ルナー帝国の侵攻によって滅亡し、現在は大半がルナーの支配下にあります。ケタエラには「影の高原」と呼ばれるトロウルの大居住地があります。

 サーター地方から街道沿いに東へ向かうと、大荒野地方の西部にあたるプラックス地方に出ます。ここは見渡す限りの岩砂漠に覆われた荒涼とした大地で、わずかにプラックス東端で南北に流れる「ゆりかご河」河畔だけが緑の沃野です。ここには精霊を崇め、遊牧生活を送る「騎獣の民」(馬を嫌い、部族ごとにいろいろな動物を飼い慣らしています)が数多く住んでおり、時々河谷の定住民をおびやかしています。


住人

 グローランサにはそれこそ無数の文化圏と生活スタイルが存在しています。例えば、ドラゴン・パスでは、人間の大半が蛮族社会(オーランス人)と君主社会(ルナー帝国)という二つの文化圏のいずれかに属しています。東のプラックス平原では遊牧生活が「騎獣の民」によって営まれていますし、文明の中心からはずれた森や山の奥では、原始時代さながらの未開生活を送っている部族も少なくありません。

 このほか、グローランサには人間以外にもさまざまな変わった種族が暮らしています。特に「古の種族」と呼び慣わされている幾種類からの“人類以前からいる”種族は、かつて神話や伝説の時代にたいへんな勢力を誇った偉大なる種族の末裔で、現在も太古からある聖域を守りながら、世界の各地に住み着いているのです。代表格が、闇の種族トロウル、植物の人エルフ、不死の小人ドワーフ、そして謎めいた竜人ドラゴニュートです。これらの種族は、その名前から想像される姿とはかなりかけ離れた性質と社会を持っている者たちで、グローランサのユニークさを一番よく物語っている存在だといえます。


神々、カルト、魔術

 グローランサには神話の時代以来、無数の神々が存在してきました。ある者は滅び、ある者は現在まで生き残っています。彼らは非常に強大な力を持った超存在ですが、歴史が始まったときに結ばれた「大いなる盟約」によって地上への直接介入を禁じられています。そのかわりに、神々は自分たちを奉じる信者の集団「カルト」(Cult:教団)を通じて、グローランサの歴史に関わってきたのです。

 一方、人間をはじめとするさまざまな種族も、このカルトを通じて神々からいろいろな助力を得ることができます。人々はそれを用いて生活し、戦い、立ちふさがる難題を解決しているのです。この助力は多くが何らかの「魔術」という形で提供されます。ほとんどのグローランサの住人にとって、魔術は非常に身近なものです。例えば、オーランス人はその年の麦の収穫を確かなものにするために、大地の女祭に頼んで畑を祝福する呪文をかけてもらいます。森で獣に襲われて怪我をした狩人は、寺院で教えてもらった治癒の呪文を自分でかけて治します。戦いを前にした戦士は、戦の神から提供された呪文を使って剣の切れ味を鋭くするのです。

 ドラゴン・パス地方は、カルトを通じて神々を信仰することで獲得する魔術が特に盛んな地域です。ここに暮らす人々にとって神々とは、陰ひなたとなって自分たちの生活を助けてくれる偉大な隣人のような存在なのです。

 さらに、森や山や湖や川をはじめ、たとえ瘴気漂う沼地であっても、グローランサではすべてのものが命をもって生きています。そうした生命力は時として精霊や神としてこの世に現れます。グローランサの住人は、神々やこういった超自然の存在、その化身である自然への畏敬の念をもって日々の生活を送っています。そしてこうした尊崇もまたカルトを通じて行われるのです。

 このように、グローランサの住人とカルトとは切っても切り離せない関係にあるのです。

 それぞれのカルトの生態は実に千差万別です。厳格な階層制度を持っているものもあれば、ほとんど組織らしい組織などないものもあります。とはいえ、多くのカルトでは最高指導者として大司祭、地域ごとの指導者として司祭がおり、その下により下位の聖職者や一般の入信者がいる、という簡単な階層構造が用いられています。嵐の神オーランスや太陽神イェルムなどのように広く信仰されている神のカルトの場合、より細分化された分派である「下位カルト」が派生し、それの集まりでカルト全体が構成されていることもあります。

 多くのカルトは他のいくつかのカルトと友好関係を結んでいます。こうした友好関係で結ばれたカルト(とその神々)をひとまとめにして「神殿」(パンテオン)と呼ぶこともあります。例えば、嵐の神オーランスを中心とした神々の仲間は「嵐の神殿」あるいは「オーランス神殿」と呼ばれます。太陽神イェルムを頂点とする神々の集団は「太陽神殿」「天空の神殿」あるいは「イェルム神殿」と呼ばれるのです。神殿はたいていの場合、ひとつの文化圏に一致して存在しています。

 もちろん、抜き差しならない敵対関係にあるカルトもありますし、敵とも味方ともつかない微妙な緊張関係にあるカルトもあります。グローランサの社会では、このカルトどうしの相克が非常に重要なファクターのひとつなのです。


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