Rune-line

ターシュ王国

(3)ターシュの民

The People of Tarsh
原文/マーク・ガレオティ&シモン・ブレイ
訳文/まりおん&ぴろき

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2002/01/12
この記事は英国の雑誌『Unspoken Word vol.1』より「The People of Tarsh」を
作者Mark Galeotti、Simon Bray両氏の許諾を得て翻訳したものです。

 非常に大まかに言えば、ターシュの民は3つに分けることができる。丘陵地・辺境の「高地の民」(Uplander)は、いまだ古きやり方を信じドラゴン・パスの他の地域のオーランス人と同じような生活を送っている。「低地の民」(Lowlander)は交易や異国の文化、ファーゼストの中央集権的政府の干渉を受け始めている。「河谷の民」(Valleyfolk)は最も豊かで、最も新しいやり方の影響を受けている。これはもちろん実際の複雑なターシュの大ざっぱな戯画にすぎない。

高地の民

 “狩人”コルノスはエンキル族の出で、斧投げの技で名高い。オルマライヤ(*1)帰依者であり、また隠れて雷鳴轟かすオーランスに入信している。狩りを装い祭祀の間の伝令を務め、ために現地の森々の抜け道を知悉している。風が自由に吹くまでは妻を娶らないと誓いを立てているが、五指に余る村にねんごろな仲の女がいる。かつて素手でアラマイト(*2)を倒したことがあり、その牙からパイプを作った。後に親切な祭祀が風を呼び起こす力をそれに与えてくれた。

 高地の生活は厳しく伝統的なものであり、“新しきターシュ”が見出した富もルナーもほとんど影響を与えていない。コルノスは十数軒から成る村の小さな農場に住んでいる。重労働をする奴隷はおらず、交易商、官吏、司祭は稀にしかやって来ない。村々はオーランス大禁令を知ってはいるが、これはしばしば無視されており(愚かな谷の民のやることだと考えている)、多くは近くに嵐に聖別された丘がある。それでも彼らは忠実なターシュ人である。ターシュ人の大多数は髭を剃るのだが、彼らの間では髭を伸ばすのが一般的に見られる(ときに反抗の隠れたしるしと見られる)。高地の女性たちは典型的に強い意志と腕っぷしを持ち、アーナールダよりもマーランや他の暗黒の大地の神々や神霊を信仰している。南では高地の民はアリンクスを飼うが、北へ向うにつれ犬を飼うのが好まれるようになる。

低地の民

 “鋤と剣の”エンガルノスはヘングキス族の尊敬されるカルル(*3)である。バーンターの入信者であり、骨を折って働く成功した幸福な農夫である。名高いロウドリルの鋤を愛し、農作奴隷を公正に扱い、愛する妻と子供たちに耽溺している。しかし彼はスタークヴァル(*4)の入信者でもあり、略奪者が近づけば自身の鎧を着、家に代々伝わる「レイノスの常に鋭き斧」を持って村のフュルド(*5)の抜け目ない隊長となる。長男がターシュ軍に加わったことを誇りに思っており、それによる免税を楽しんでいる。

 低地の民はターシュ王国の屋台骨である。豊かな農地を耕すと同時に略奪者や無法者を戦って追い払ってきた戦士農夫たちであり、陽気で同時に有能である。エンガルノスは自分の農地を経営している。農地は村の柵近くにあり、4つのロングハウス(訳注:ヴァイキング式の長方形の家屋)から成る郡舎が四角形になるように建てられ、その外に耕作地と牧草地が、中には厩舎がある。村長は富と忠誠を見せつけるため、ルナー方式のヴィラ(訳注:ローマ式の邸宅)を自分で建てているかもしれないが、その中心のアトリウム(*6)は夜間は家畜厩舎として使われているだろう。彼らは概して大禁令(オーランス信仰に関する)を受け入れているが、いまもルナーの道には落ち着かない気持ちになる。

谷でも峰でもなく、さね。
―― 理想的な妥協に関する低地の民の表現

河谷の民

 コルドロス族のベルカーは帝国市民権を得た今は「ベルカデス」を名乗っている。今も部族に忠実で村の民兵団の一員だが、ホーレイの商人と付き合ううちに新たな秩序に目を見開かされた。彼はポヴェリ(*7)の入信者だが、赤の女神の道を学び始めている。コルドロス島のトウモロコシ畑の季節季節の耕作の傍ら漁を行っており、怪力と忍耐で地域の農村で歓迎されている。だが周りには改宗と新しい技を信じない者もいる。

 河谷の生活は、オスリル河の交易が富と文化的影響、空前の好景気をもたらすのと同時に大きく変化した。多くの河谷の村々はいまだ伝統的な流儀に従っているが、新たな入植者がやって来たり旧来の家が裕福になるにつれて、北方風の石造りの家やヴィラが建て直されることも増えた。オーランスの信仰はほとんど見られず、ルナーやほかの帝国の神々が人気を博し始めている。しかしながら、彼らは今もアラコリング人である。生活はより規則正しく予想が付くようになり昔よりも快適になったとはいえ、彼らは古来の美徳を守り続けている。さらには熟練した仕事を得る機会の増大とともに、ルナーの重要性の高まりは河谷の女性たちの地位を上昇させた。奴隷農園の女経営者、女交易商や女性官吏でさえ次第に一般的なものとなってきているのである。

ターシュの女たち

“あれ”や“これ”やではなく、両方を。
─── ターシュのアーナールダ信者の言葉

 帝国の到来以前でさえ、本来ターシュのアラコリング人社会の中では女性の役割はすでに大きなものであった。マーランや他の暗黒の大地の神々の存在は、彼女たちの神話的な役割が男たちの活動的で創造的オーランス的なやり方に対しての受け身的で生産的な女たちであり続けるだけではない、ということを意味していた。しかしながら彼女たちの役割と機会は増大し、今や軍隊の中にも女性からなる部隊があり、そして日常生活のあらゆるところや統治の中にも女性が進出している。これは伝統的な態度や偏見が消え去ったということを意味しているわけではない。ただ女性はそれに挑戦する機会が大きくなったというだけである。


ターシュ人のキーワード

文化キーワード:ターシュ人男性

文化キーワード:ターシュ人女性


ターシュ人の職業キーワード

 「Thunder Rebels」と「Storm Tribe」に由来するキーワードは、異なる神々が信仰されうるということをのぞけば、ターシュ人にも使うことができる。一般に氏族に対する縁故は、村落または部族に対する縁故に取って代わられている(後者はターシュではハウスカールと呼ばれている近侍武士が持つ)。また、ターシュ戦士の基本的な〈近接戦闘〉技術は「斧と盾」であり、〈射撃戦闘(投げ斧)〉が〈射撃戦闘(ジャベリン)〉のかわりとなる(*9)。

 都市部やよりルナー化が進んでいる河谷の部族では、以下のような「ルナー帝国」の職業も選ぶことができる。下級貴族、学者、交易商、宣教師。

 新たに加わる職業キーワードとしては、奴隷、剣闘士、山師、ターシュ兵士、がある。

■奴隷

 奴婢(*10)は一時的に隷従状態に陥ってはいるものの、一般にもともとの職業の技術や資質は持っているものである。しかし、帝国の影響によって、このキーワードで表されるような隷従のために生まれ育った奴隷身分という別個の階級が着実に広まりつつある。

奴隷の“職業”の例

「王の道」の労務者
肉体能力:〈どんな天候でも働く〉〈重労働をする〉
ファーゼストの書記奴隷
精神能力:〈美しく[言語名]を筆記する〉〈伝言を覚える〉
農奴
肉体能力:〈どんな天候でも働く〉、精神能力:〈農作業〉
職工奴隷
肉体能力:〈[品物]を作る〉、精神能力:〈必要な材料を見つける〉
オスリル川のガレー船の漕ぎ手奴隷
肉体能力:〈オールを漕ぐ〉〈鞭うちを避ける〉

■剣闘士

 剣闘士試合がターシュで人気を博しつつ理由は暗黒の大地の女神たちに戦いを供犠とする伝統にそったものなのかもしれないが、今のところはまだ単純な殺し合いの域にとどまっている。戦いで客を楽しませるというよりもピット(訳注:客席から一段低くなっている狭いアリーナ)で殺し合いを演じる程度でしかない彼らは、外国人かもしれないし、戦の捕虜かもしれないし、あるいは借金で身を落とした奴隷かもしれない。いずれにせよ、彼らの生死と自由は勇気と力と技術にかかっている。うまくいけば自由と富を勝ち得て、護衛や訓練師としての地位や勲章にあずかるかもしれないが、うまくいかなければ死んで忘れ去られるだけである。

■山師

 ターシュは経済的な活況を呈しており、あらゆるチャンスが転がっている。市場取引や隊商といった地道なやり方ではなく、計画や詐欺、政府からの契約やハイリスク・ハイリターンの新規事業にかかわるのが山師たちである。ある者はファーゼスト市の貧民のために安価だが危険な家を法外な値段でうりつけ、ある者は借金の取り立てに奔走し、またある者はトウモロコシの先物取引に目を光らせたりしているのである。仕事の詳細を決める必要はない。明日にはまた別のもうけ話に手を出しているかもしれないからだ。

■ターシュ兵士

 ターシュは戦の伝統を誇る軍事国家である。氏族の戦士とならんで、ターシュ軍には数多くの兵士がいる。これらはオーランス人の伝統でいうところの単なる氏族や部族の戦士ではなく、訓練を受けたプロフェッショナルたちである。ターシュ軍には女戦士隊から精鋭重騎兵隊までさまざまな隊があるが、ここでは三つの主要な隊を挙げることにする。

 重装歩兵:一般に長袖の青銅製鎖帷子を着て、斧をもって盾の壁陣形をとって戦う近侍武士の隊。
 軽装歩兵:民兵とシールドウォール連隊が主体である彼らは、軽装の鎧しかまとっておらず、多くの兵士は投げ斧やジャベリンを投射用に持ち歩いている。
 騎兵:中程度の装備をつけた騎兵である彼らは、軽い鎖帷子を身につけ、攻撃ではジャベリンを投げてから斧と槍で突撃をかける。


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