この記事は、オーランス無きオーランス人をどのようにあつかうかを解明しようとする試みである。グレッグ・スタフォード氏はこの提案と情報を寛大に許してくれたが、これは決して公式の回答ではない。
そこは「嵐の里」(*1)だったが、私が知っているさまとは違っていた。私はすぐさまそこが異様で、奇妙で、薄気味悪いことには気づいたものの、なにがおかしいのが悟るまでにはしばらくかかった。嵐の領域を吹きすさぶ風は、力にあふれ、野性味に満ち、時には切り裂くように、時には高揚するように、しかし決して静まることはないのだ。そこに風はありはしたが、弱々しいまがい物でしかなく、穏やかなそよ風が私の外套をもてあそんでいるばかりだった。オーランスの息ならば外套を私の背中から引き剥がしたり、まるで吹き流しのように変えてしまっただろうに。不安をかきたてられた私が歩を速めると、ささいな違いまで見えるようになってきた。「雷鳴の兵舎」(*2)はまだそこに並んでいたが、それらの屋根に立つ旗の多くはなじみのないものであり、当然見られるべき旗の多くはそこにはなかった。「バーンターの農場」は私の記憶にある姿よりも大きく立派だった。なぜその光景にそんなに心騒がせられるのかはっきりとはわからなかったが、私は急いだ。そして遅ればせながら、黄金の穀物と熟した大麦の畑に沿って、そこで見るはずのない作物があることを悟ったのである。この七つ目の畑に生える豊かな赤いトウモロコシの中にまじって鈍く輝く石の玄関があり、それが彼方の領域へと続いていた。ここからですら私は月のけがれをかぎとることができたのだ!
私は走った。そして眼前に「嵐の村」(*3)が現れた。それはまるで夢、それも悪夢の中にあるかのように、すぐにそれとはわかるものの、しかし異なる姿をしていた。「ヒョルトの鹿館」はなくなっていた。「勝利の広間」は今や「雲の裂け目」の一部でしかなかった。「イサリーズの市場」は前より大きくなっていたが、「交易人」のそばには年若い女が立っており、その顔には小ずるさが浮かび、その頭巾にはシェペルカート(*4)の刻印が押されていた。おどろきあわてた私は、カルーリノーランの前まで滑り落ちると、大きな両開きの扉を開けて中に入った。
「オーランスの大広間」には誰もいなかった。「ミンリスターの酒壺」から蜂蜜酒は流れていなかった。戦士たちが長椅子と卓にひしめきあっているということもなかった。歌とほらばなしが空気を満たしてもいなかった。かわりに、陰鬱で胸の悪くなるような微風がほこりをまいあげ、くもの巣が垂木からびっしりと垂れ下がっていた。いや、誰もいないわけではなかった。ただ黙然としていただけだった。目をぎゅっと細めて薄闇を見通すと、私の知っている顔や、見たことのある顔がいくつか見えた。
ひとりめはたくましい戦士で、鎖帷子をまとった肩に斧をかついでいた。私は彼の入れ墨に見覚えがなかったが、オーランスの民のひとりとして挨拶した。
「兄弟どの、オーランスはどこにおられる?」
「オーランスは死んだわ」と彼はしわがれたターシュなまりで答えた。 「俺たちは次にあいつの玉座に座るべき者を待っているのだ」
私ははじかれたように後ずさりした。そしてこの気分の悪くなる嘘をはねつけるために剣の柄に手をかけたが、すでに彼はいなくなっていた。彼のいた場所には別の戦士が現れた。私がよく知っている者だった。
「忠実なる守り手スタークヴァルどの、オーランスはどこにおられる?」
彼はどんよりした視線を私に向けた。 「王はいなくなってしまわれた。我らは王の農場を守っておる。王が戻られるその日まで」
そして彼もまた姿を消した。すると三人目の人影が見えた。それは勢いのない暖炉の炭火に照らされていた。
「偉大なる妃アーナールダ様、オーランスはどこにおられる?」
彼女は私のほうを向くと立ち上がった。すると突然、暗かった広間は再び明るくなり、生命が風に歌い、鳥の姿をした星々が天上の歌をさえずりはじめた。
「殿は今ここにはおられませぬ。今は耐え忍んでおられるのです」 彼女は広間の奥にある「高座」(*6)にちらりと目を向けた。 「あの九つ目の扉の向こうで」
── “壺探し”フルフラックの拾遺より
ターシュ人のヒーロークエスターたちとの偶然の遭遇によって、彼らの見る嵐の領域へと投げ込まれるまでは、フルフラックはそこは不変の場所だと考えていた。だが“オーランスなきオーランス人”であるターシュの民にとって、ここは混乱期にあり、その混乱は彼らの信仰の様を映し出しているのである。多くの面で彼らは変遷期にある。ターシュの諸王は長い時間をかけて同盟者であるルナーがオーランスにとってかわるように努めてきた。彼の座に、しかるべきありようにのっとって、もっと従順なダールセン人(*7)の雷の神ドブルドゥンを嵐の領域の属領地長官として座らせるのが彼らの望みである。
何世代にもわたって、オーランスの敗北があきらかになり、彼の聖地は汚され、おおっぴらに彼を信仰する者は告発され、神話の書き換えと恐るべき巧妙なヒーロークエストが実行されてきたことで、彼らのもくろみは功を奏してきた。加えて、この新たな秩序のもとでの平和、安定、そして富は数多くの者を誘惑するだけでなく、この新しいやり方が強力で祝福されたものであるということを示唆してきたのである。
伝統主義の高地の外に住む大半のターシュ人にとって、オーランスの法と美徳は今でも意味を持っているが、彼はもはや嵐の部族を率いていないのである。単に姿を消しているだけなのか? 打ち負かされたのか? 帝国が保証するように、オーランスは鎖につながれてファーゼストを通り連行されていったのか? はっきりと知っている者は誰もいない。しかし、これは根本的にはまだうわべだけの変遷期である。もし嵐の領域が今後も生き延びるつもりならば、そこには王がいなければならない。英雄戦争はこのジレンマを何らかのかたちで解決することになるだろう。
ターシュ人の神々 | |||
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この表は、ターシュの各地域で常識的に信仰されている神々を示しているが、これは“すべてのオーランス人”(つまり人口の85%)しか表していないことに注意すること。太字になっている神々は主要な神々であり、もっともよく信仰されている。 | |||
都市と河谷 | 低地 | 高地 | |
権力と王権 | アラコリング(王/部族) ダール(部族/氏族/村落) オレンダーナ |
アラコリング(王/部族) ダール(部族/氏族/村落) オレンダーナ |
アラコリング(王/部族) ダール(部族/氏族/村落) オレンダーナ |
豊穣 | エスラ、オレイン、ペローラ スチャーラ、ウサラ ホン・イール |
エスラ、オレイン オヴァードルーヴァ ペローラ、スチャーラ、ウサラ ホン・イール |
エスラ、オレイン オヴァードルーヴァ ペローラ、スチャーラ、ウサラ |
農業と動物 | バーンター、デューレヴ ヴォーリオフ、ヘラー オレイン、エントラ ネヴァーラ、イスバーン ウラルダ、レダルダ ロウドリル、ホン・イール トウモロコシの女 |
バーンター、デューレヴ ヴォーリオフ、ヘラー オレイン、エントラ ネヴァーラ、イスバーン ウラルダ、レダルダ ホン・イール トウモロコシの女 |
デューレヴ、バーンター ヴォーリオフ、農夫オーランス ヘラー、オレイン オヴァードルーヴァ エントラ、ネヴァーラ イスバーン、レダルダ |
家庭と家族 | デューレヴ、バーンター オレイン、エスラ マホーメイ、エニンタ ヴェラ、ナンダン |
デューレヴ、バーンター オレイン、エスラ マホーメイ、エニンタ ヴェラ、エンフェラルダ、ナンダン |
デューレヴ、バーンター オレイン、エスラ マホーメイ、エニンタ ヴェラ、エンフェラルダ |
戦争 | スタークヴァル ヤヴォール イェルマリオ、フマクト、ヘラー マーラン・ゴア、ヴィンガ ヤーナファル・ターニルズ |
スタークヴァル デストール、ヤヴォール エルマル、フマクト、ヘラー マーラン・ゴア、バービスター・ゴア ヴィンガ、ヤーナファル・ターニルズ |
スタークヴァル、 デストール、ヤヴォール エルマル、フマクト、ヘラー マーラン・ゴア、バービスター・ゴア ヴィンガ |
職工 | オルスタン、デューレヴ グストブラン ミンリスター、ロウドリル、ペラ、 オレイン |
オルスタン、デューレヴ グストブラン ペラ、オレイン |
オルスタン、デューレヴ グストブラン ペラ、オレイン |
知識と法 | ランカー・マイ、アンドリン ケヴ、イリピー・オントール |
ランカー・マイ、アンドリン ケヴ |
ランカー・マイ、アンドリン ケヴ |
交易 | エティーリーズ、イサリーズ、ハースト アズリーリア、ユーレーリア |
エティーリーズ、イサリーズ、ハースト アズリーリア |
イサリーズ、ハースト アズリーリア |
狩猟 | オデイラ、インキン ジャジャガーパ、ケンストラータ オロジェリア |
オデイラ、オルマライヤ インキン |
オデイラ、オルマライヤ インキン、デストール タトウス |
音楽と娯楽 | ドナンダー、ドロガージ スコヴァーラ |
ドナンダー、ドロガージ スコヴァーラ |
ドロガージ、スコヴァーラ |
水と漁業 | ポヴェリ、オスリラ | ポヴェリ | ポヴェリ |
治癒 | チャラーナ・アローイ、ベヴァーラ ジェラ、オルヴェンティル、ヴォレーラ ヴォテネヴラ、ディーゾーラ、エリッサ |
チャラーナ・アローイ、ベヴァーラ ジェラ、オルヴェンティル、ヴォレーラ ヴォテネヴラ、ディーゾーラ |
チャラーナ・アローイ、ベヴァーラ ジェラ、オルヴェンティル、ヴォレーラ ヴォテネヴラ |
精霊 | ジャーカリール、セルドロドーサ タイ・コラ・テック |
セルドロドーサ タイ・コラ・テック |
コーラート、セルドロドーサ タイ・コラ・テック |
法と秩序 | スタークヴァル、リグスダル ダンファイヴ・ザーロン バービスター・ゴア デセンボース、デストール |
スタークヴァル、エルマル、リグスダル バービスター・ゴア |
スタークヴァル、エルマル、リグスダル バービスター・ゴア |
犯罪と強奪 | デセンボース、デストール フィノヴァン、ガガース |
デセンボース、フィノヴァン、ガガース | デセンボース、フィノヴァン、ガガース |
その他 | ユールマル、ドブルドゥン ティーロ・ノーリ ルフェルザ、ニスキス オルヴァンシャゴール マスターコス |
ユールマル、ニスキス マスターコス オルヴァンシャゴール |
ユールマル、ニスキス マスターコス オルヴァンシャゴール ヴァンガンス |
ターシュ人は、それが「嵐の王」の相ではなくむしろ別々の神々としてだとはいえ、今もオーランスの下位カルトと相の大半を信仰している。このようにして、下位カルトはオーランス人社会に必要な職能を満たしている。つまり、ドロガージは今も楽器を奏で、デューレヴはやはり牧畜を行い、スタークヴァルがこの両者を守っているのである。
下位カルトの中には一般には信仰されていないものもあるが、それはそれがあまりにもオーランスに密接につながりすぎていたり(たとえばオホーランス(*8)やオーランスアンドリン(*9)など)、あるいはそれらがターシュのアラコリング人の伝統の中になかったりするからである。つまり、大王アラコリングは王権のカルトとして、神々の王オーランスに取って代わっている。ヒョルト、ジャラニ(*10)、そしてヴィングコットは“我々の伝統にない”と見なされているのである。
ちなみに、これはターシュの天候も反映しているのである。特に海の季にやってくる大いなるオホーランスの嵐は、この地域の上を通ってドラゴン・パスへと向かう。これは正式には「ドラゴンの嵐」と呼ばれるのだが、くだけた言い方では「口ばかりでトルーズなし(*11)」といわれる。なぜなら、これはたくさんのものを約束するが、何も運んではこないからである。ドラゴン・パスを越えてはじめて、これは生命の恵みをもたらす雨を降らせる。かわりにターシュは「ヘラーの祝福」で潤される。これは生まれたときから羊の群の姿をした雲のことである。
こうしたことはすべてターシュ人のキャラクターに大きくかかわってくることになる。多くのカルトと下位カルトは、キャラクターが禁止されている信仰に手を染めているというのでもなければ、使うことができないからである。そうした勇敢かつ危険な状況をのぞけば(オーランス信仰は建前上死刑で罰せられる)、以下の指針を用いることになる。
キャラクターは、オーランスの相のいずれも信仰、入信、帰依することはできず、独立したカルトと見なされる下位カルトに直接入ることしかできない。下位カルトが相の神力に神技を追加している場合(たとえば、デストールが《道を見つける》を《移動》の神力に加える、など)、カルト信者はその神力を獲得はするものの、その下位カルトに挙げられている神技しか使うことはできない。その神力は“蓋をかぶせられて”おり、新しい神技を習得することはできず、他の神技については神力で代用するしかないのである。つまり、デストール信徒は《道を見つける》を通常どおり使うことはできるが、《崖を駆け登る》には代用修正がかかってしまうことになる。
アーナールダとその他の大地の女神はすべてターシュにとって重要である。ホン・イールがヘルーヴァーナールダ(*11)での「石の女王の再誕」に侵入を果たして以来、ターシュのアーナールダ信徒は宇宙における赤い月の居場所を受け入れてきている。彼女らの「“あれ”や“これ”やではなく、両方を」という標語は、帝国治下の新しい秩序をまとめる信条のひとつとなっている。ほとんどの女性はアーナールダに入信している。しかし、大地の女神たちは皆、マーランからバービスター・ゴアに至るまで、強力で尊敬されている。流民を連想させるエランサ・ゴアだけが疑いの目をもって扱われている。
オスリル川の打ち据え |
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北方にはシャーガシュがいかにしてオスリラを服従させたかを語る伝説があるが、ターシュでは毎年、ヒーロークエスターたちがエルセンヴォーラとオスリラの神話を再演する巨大な祭「オスリル川の打ち据え」が見られる。そのアリム王への秘められ果たされなかった慕情がターシュ人の物語にとって欠かせない存在であるエルセンヴォーラは、オスリラがコルドロス島に洪水を起こしたときに彼女をしかりつけたのである。一度目、彼女は贈り物をさしだしたが、オスリラは折れようとしなかった。二度目、彼女は懇願したが、オスリラは聞く耳を持たなかった。三度目、彼女はおどしつけたが、オスリラはたじろがなかった。そこで彼女は「熱心」という名前の斧と「豪胆」という名前のつるはしを持ち出して、暴れ水に立ち向かった。オスリラの力は強かったので、ほどなく勝利をおさめるかと思われたのだが、彼女の水はエルセンヴォーラを民人から引き離すことができなかった。神妙になったオスリラはエルセンヴォーラを民人のところに返し、二度をターシュを洪水で悩ませないことに同意したのである。しかし、オスリラは物覚えが悪いので、毎年彼女にこのことを思い出させなければならない。儀式は毎年別の場所で執り行われ、贈り物が川に投げ込まれると、ヒーロークエスターたちはオスリラと戦わなければならない。少なくともひとりは普通このさなかにおぼれて死ぬことになる。 |
オーランスに対する排斥運動および交易と占領によるコスモポリタンな影響が原因の一端をになっているのだが、信仰はサーター人の間よりも多種多様である。バーンターは農夫オーランスをほとんど侵食しており、今では農夫オーランスは孤立した高地の農場でしか信仰されていない。その他の「光持ち帰りし者たち」の神々やセアードの神々(*12)、果てはペランダ(*13)やダラ・ハッパの神々までもが、特に河谷地域で見られる。サーター人が背教であると見なす神々ですら信仰されている。特に王国の北部ではセアードの伝統が強いため、犬が愛玩犬、番犬、労働犬として飼われている。ここでは、ジャジャロール人の犬の父である狩人ジャジャガーパに捧げられた社まであるのである。
ルナー属領地教会は都市部で力が強く、田園部でも特に河谷である程度の力と支持者を得ている。ルナーのカルトはそれが有用であると証明された場所、たとえばエティーリーズが支援する市場や邸宅など、でもっとも成功をおさめている。七母神の信者に加えて、七母神を構成する個々の神々を直接信仰する者もいる。たとえば兵士たちは、ヤーナファル・ターニルズを七母神のひとりとしてではなく軍神として信仰しているのである。
ターシュ人は特に祖霊、王のカルト、そして地元の英雄を信仰している。多くの者は主要なカルトと適切な祖霊の両方に入信している。これはターシュ人の生活と信仰においてきわめて大きな部分なのである。下のコラムには、二つの王のカルトが例示されているが、キャラクターとナレーターは出身の村落や氏族、あるいは部族に適した独自のカルトを作るとよいだろう。コルドロシ族は半ダースの祖霊と地元の弱小な英雄カルトへの信仰に特に傾倒している。
王のカルト |
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“貧窮者”アリムターシュ人は皆、毎年宴が開かれる「最初の一歩の日」(嵐の季/死の週/火の日)にアリムに感謝と供物を捧げることで、彼が人々を率いて「死線」を越えた日を祝賀する。彼に特に入信して、思い責務を背負うことを受け入れた数少ない者たちは、いつでも自分のことより民人のことを一番に考える。
ヤランドロス“突撃の鬼”ヤランドロスは、力強く、味方を鼓舞することができる戦闘指揮官であり、城壁を飛び越え、遠方まで広く旅し、そして百もの物語に霊感をもたらした大王である。彼は特に南方のグレイズランド近くの戦士や馬の乗り手たちに人気がある。
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祖霊 |
“備え遅れの”ポトヴポミニ族でもっとも愛されている祖霊カルトのひとつであり、何事にも準備することがなかったと昔話に語られている。子供たちは「ポトヴの武器鳴らし」(手には熊手、頭には鍋をかぶって現れた話)や「ポトヴの婚礼」(一日早く教えてやれば、彼も準備できるだろうと皆が画策した話などの昔話を聞きながら育つのである。しかし、何が起こっても彼はいつでもなんとかして切り抜けており、熱心な信心を集めるのは、その行動力だけでなく楽観主義にもよっているのである。
“指輪をはめる者”インガルデインガルデはペンソイ族の先祖だが、彼女の信者はターシュじゅうにいる。それは彼女が結婚の仲人だからである。インガルデの信者の大半は、単なる地元のおせっかい焼きである(ただし、乙女の多くはひそかに蜂蜜と木の実でつくったインガルデの小さな人形を、一緒になりたい若い男の農場のそばに埋めるのである)。しかし、あちこちを旅する専門の仲人もいる。こうした“指輪をはめる者”のひとりが村を訪れると、まもなく適齢期の男女が“もてなす”ためにやってきていくばくかの贈り物を置いていき、道々の村で自分たちについて口を利いてくれることを望むのである。
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ターシュの一部では、呪術も強い力を持っている。特にアンガルドス族の森(コーラートが支配している)と、ゴールドエッジの北にあるデガース丘陵があげられる。後者は、セルドロドーザ伝承に属するオソフォロントシ族の大地の魔女たちが、銅の鐘と骨の笛で「六頭の石の羊」を呪縛した場所である。ヒドラ丘陵の一部では恐ろしい怪物が信仰され、祟りが鎮められているといわれている。