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ターシュ王国

(1)ターシュの概観

Introduction to the Kingdom of Tarsh

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2002/01/12更新 ぴろき
この記事はホビージャパン刊『グローランサ年代記』、
英国の雑誌『Unspoken Word vol.1』を参考にして書いたものです。

 ターシュ王国は、ドラゴン・パスの北西部を領するオーランス人の国ですが、同時に赤い月を奉じるルナー帝国の支配を受け入れた属領地でもあります。このことが、ターシュの国内事情をたいへん複雑なものとしています。建国王“貧窮者”アリムの御代以来受け継がれてきた蛮族としての素朴な暮らしと、帝国服従後に受け入れた開明的で新しい文明生活との摩擦は、数ある矛盾の中でももっとも際だったものであり、ターシュは絶え間なく揺り動かされています。

 今、かつて兄弟としてドラゴン・パスを分け合っていたサーター王国は、ルナーの侵攻によって制圧されようとしています。しかし、反抗の気運は激しく、その突風は帝国の最前線に位置するターシュにもろに吹き付けています。帝国の支配に抵抗する分子たちは、ターシュ王統を簒奪者として否定する“冬の峰”のターシュ流民たちとひそかに手を結び、ターシュを内部から転覆しようと画策しているといわれています。そして、ダラ・ハッパからやってきた貴族たちと、地元の族長たちとのあつれきは抜きがたく、王家と部族との対立も決して消えてはいません。

 このような不安定な政情の中、ターシュ王国もまた英雄戦争の渦中へと巻き込まれようとしているのです。

ターシュ王国全図


ターシュの風景

 ターシュの景観は、サーターのそれとは際だった違いを見せています。簡単に言えば、サーターがそびえ立つ山々とうねる丘陵が連なる険しい土地柄であるのに対して、ターシュの国土は、広大で温暖な河谷とゆるやかな起伏をなす平野、そしてそのところどころに急に切り立つようにしてせり上がった高原と山岳から成っているのです。ターシュの民は、ここで豊かな大地の恵みを受けながら、平野で、森で、そして丘で生計を立てています。

 ターシュの大半を占める田園部には、農耕を営む人々が暮らす村落が点々としており、その多くは古くからの宿敵であったグレイズランド人の侵略をくい止めるために、木の防柵が張り巡らされています……もっとも、ルナー支配の時代に入ってからは、帝国軍の威令のおかげで遊牧民の侵入は格段に少なくなってはいますが。そして、村落内には、おおよそ大家族ごとに、ロングハウス(長方形の木造家屋)が真ん中にある家族菜園を囲むようにして正方形に集まって建てられています。

*ルナー文化の影響が濃いターシュ北部では、大規模な農園が形成されていることもあります。

 村の外に出ると、帝国中部から敷かれてきたルナー街道が風景を突っ切るようにして伸び、そこを交易商人の荷馬車ががらがらと音を立てながら通っていきます。その中には石畳の敷き詰められた街道も少なくありません。そして、道の脇にはマイルストーンが置かれ、時にはルナーの神々を奉じるほこらもあったりもします。その一方で、道をはずれれば、ターシュの長い歴史を物語るように、うち捨てられた廃墟、古い大地の寺院、そして今では使われなくなった嵐のルーンの刻まれた石柱などが散見されるのです。


王都ファーゼスト

 ターシュの中央、オスリル川沿いの岸辺に位置するファーゼスト市は王国の首都です。この壮大な都は1492年にそれまであった都市を完全に取り壊して建設されました。ルナー様式の完璧な都としてたてられたファーゼストは、帝国本土で見られるような格子状の街並みに設計され、噴水のある広場が置かれました。巨大な白い壁で囲まれたこの方形の都市は、遠方からでもその威容を見晴るかすことができ、ターシュにおけるルナー帝国の力を身をもって表しています。


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