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グローランサ

(3)古の種族

Elder Races

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2000/12/05 ぴろき

 グローランサの中にあって、人間はまだ若い種族だということができます。彼らが世界中を席巻するようになったのは、実際のところ、“曙”以降、歴史時代になってからだからです。彼らの興隆以前から生きていた異種族のことを、まとめて「古の種族」(いにしえのしゅぞく、エルダー・レイス)と呼びます。創世のルーンのひとつである“人”のルーンを用いて生み出された彼らは、人間が跋扈するとともに次第に衰退し、現在では世界の辺境地方で太古から守ってきた聖地の周りにその多くが暮らしています。

 古の種族の中でも特に勢力が大きいのが、トロウル、エルフ、ドワーフ、そしてドラゴニュートの四種族です。この記事では、主に彼らについて概説することにします。


トロウル...暗黒の人

 神代に地底の安息の地を追われた“暗黒の人”であるトロウル族(ウズ)は、その強靱さや知識の深さからいってもグローランサ最強の種族です。しかし、第1期にナイサロールの創造に異を唱えた彼らは、忌まわしきグバージによって呪いをかけられ、以来、そのほとんどの新生児がトロウルキンという矮小種として生まれるようになってしまいました。この呪いのため数が減ったトロウルは、今では山奥や高原、氷原といった僻地に大きな集落を築いて住んでいるにとどまっています。

 長い鼻面と大きな牙、でっぷりと太った頑丈な巨体を持つトロウルたちは、超音波を使って真っ暗闇でも見通す力を持ち、火と鉄以外の何でも食べて消化できる極めつけの胃を備えています。そして太古より受け継がれた彼らの文化は、人間には原始的に見えますが高度に洗練されており、母なる女神カイガー・リートールのカルトを中心とした女性上位の社会がしっかりと築き上げられているのです。

 また、かなり異質な慣習とものの考え方を持つものの、他の古の種族に比べればトロウルは人間にとってけっこうつきあいやすい種族です。トロウルの交易商人が辺境の街や村を訪れたり、人間の旅人がトロウルの集落を訪問するのは、頻繁ではないにしろ珍しいことではありません。

 もっとも、大多数の人間にとってトロウルは人食いの恐ろしい怪物であるのは間違いないのですが。

ウズの眷属

 トロウルは、神代に地上に現れて以来、異境での苛酷な暮らしの中でいくつもの分派に分かれていきました。そして忌まわしき“グバージの呪い”以降は、矮小なトロウルキンを一族に加えて生きて行かなくてはならなくなりました。このため、トロウルとひとくちにいってもいろいろな種類に分かれているのです。

ダークトロウル(ウズコ)
現在、トロウル社会の中核を成している強靱な種族。普通、トロウルといえばダークトロウルを指します。かつて神代に、トロウルの豊穣の女神コラスティングが地界にやってきた太陽神の手によって殺されたことで、生まれてくるウズのほとんどはダークトロウルとなってしまいました。「ウズコ」とは“傷ついた種族”の意です。
トロウルキン(エンロ)
“グバージの呪い”によって、トロウルの母神カイガー・リートールが傷つけられた結果、すでに力の衰えていたトロウル族に決定的な破滅が襲いかかりました。今や、トロウルは大半が未熟児の状態、すなわちトロウルキンとして一度にたくさん生まれてきます。彼らはトロウル社会ではトロウルと見なされず、奴隷や食糧として消費されます。
グレート・トロウル(ウズド)
“グバージの呪い”を打ち破るために、トロウルの大魔女クラグスパイダーは偉大な儀式を行いました。しかし結局この試みは失敗に終わり、呪いを解くかわりに、この大柄なトロウル種族が生み出されたのです。腕っ節は強いグレート・トロウルですが、残念なことに頭が弱く、生殖能力もまずありません。
雪トロウル(ウズヒム)
地上に追われたトロウルのうち、北の氷原に活路を求めた一派は、他のトロウルたちと隔絶した土地で寒冷な気候に適応していきました。彼ら雪トロウルはその暮らし方をのぞけばダーク・トロウルとあまり変わりません。
洞穴トロウル(ローマル)
洞穴トロウルは、神代の戦いで混沌に汚染された哀れな一派の末路です。彼らは獣じみた低い知性しか持っておらず、極めて原始的な生活をトロウルの領域にある洞窟で営んでいます。
女王種トロウル(ウズウズ)
かつて地上に追われる前、安息の暗闇の中でトロウルたちが平和に暮らしていた頃、すべてのトロウルは女王種でした。この偉大な種族は、原初の比類無き強靱さと魔力を生まれながらに身につけており、その多くは神代からずっと生きています。彼女らは極めて希少な存在であり、当然ながらトロウル社会では最高指導者として敬われます。


エルフ...森の人

 グローランサに生える植物はすべからく“植物の母”アルドリアが生み出した子です。そして、自分で動くことのできない草木に代わって、外敵から森の安息を守るために生まれたのが、“歩く植物”であるエルフこと「アルドリアミ」なのです。

 彼らは人間に似た華奢な姿を持ってはいますが、人より植物に近い生物であり、種子から生まれ、まるで木のように育つのです。エルフにも人種があるのですが、これは常緑樹、落葉樹、熱帯の木々というように住んでいる森の環境によって決まっています。そしてエルフ各人は生まれ故郷の森と分かちがたく結びついており、もし故郷を燃やされるなどしてなくしてしまったエルフは精神に異常をきたしてしまうといわれています。

 エルフは森の守護者です。彼らの使命は森の木々を守ることであり、森の安寧をおびやかすものは誰であろうと決して容赦はしません。木々の間に隠れて魔法の矢を放ち、巨大な樹木の精を呼び起こすエルフの力は恐ろしいものです。そしてその使命ゆえに彼らは人間をはじめとする他の種族に対して拭いきれない憎しみと不信感を抱いているのです。

 エルフが人里に降りてくることなどほぼありえませんし、エルフの住むという森に人間も入ろうとはしません。グローランサでは、エルフに出逢うということ自体がそれだけで大事件だといえるでしょう。

アルドリアミの分類

 エルフは、暮らしている気候や森の状態によって種族が決まっています。具体的には、その森を占めている樹木と同じ生活サイクルを持って生まれてくるのです。現在一般に見られるエルフには以下のように三種類があります。

ブラウン・エルフ(ムレーリ)
落葉樹のエルフである茶色エルフは、ジェナーテラ大陸で最もよく生息しているエルフです。冬になると、ムレーリは眠りにつき、その間はヴロンカリやエンバイリによって守られます。ブラウン・エルフしか住んでいない森というのはありません。彼らは春になって木々が芽吹き始めると目を覚まします。
グリーン・エルフ(ヴロンカリ)
常緑樹のエルフである緑エルフは、茶色エルフのように冬眠をしないため“冬エルフ”とも呼ばれます。彼らは針葉樹が生える高台の森に住んでおり、特にジェナーテラ北西の広大な針葉樹林に数多く暮らしています。
イエロー・エルフ(エンバイリ)
熱帯樹のエルフである黄色エルフは、いくぶん他のエルフよりも小柄で浅黒い肌をしています。エルフの中では最も好戦的な種族であり、人間にも激しい敵意を抱いています。エンバイリはすべて男性で、熱帯雨林の樹木の精霊との間に子供を作ります。


ドワーフ...岩の人

 ひげをはやした小人であるドワーフは、エルフよりもさらに異質な存在です。彼らは宇宙全体をひとつの“世界機械モスタル”であると捉えており、この完璧な機械は神代にさまざまな過ちによって破壊されてしまったと信じています。そして彼らはこの“世界機械”を修復するためだけに存在する生物、すなわち「モスタリ」、なのです。

 ドワーフ各人は生まれたときからそれぞれ金属の名を冠された職能(鉄ドワーフ、錫ドワーフなど)に専属となって、命あるかぎりその職分を忠実に飽きることなくこなし続けます。そして驚くべき事に、先天的に与えられた仕事を遂行している限り、ドワーフは寿命で死ぬことはないのです。このため、ほとんどのドワーフは自由意志というものを持たず、他の種族と仕事以外で関わることも決してありません。

 ごくまれに、“壊れた”ドワーフがいます。彼らは職能を放棄してしまったモスタリであり、異端の代償として不死を失ってしまっています。その中でも“開手主義”と呼ばれる異端に属するモスタリは、他の種族との交流を積極的ではないにしろ容認しているため、最も接触することが多い類のドワーフです。彼らはマスケット銃や大砲といった科学の産物を発明しており、莫大な対価と引き替えにそうした技術を貸し与えてくれることがあります。


ドラゴニュート...竜の幼生

 グローランサで最も謎めいた種族がこのドラゴニュートです。竜頭人身で原始的な服装に身を包んだこの種族が、実は高い文明を持っていることを知る人はごくわずかです。そして、その文明の内容について理解している者に至っては皆無といえます。

 卵から幼生、幼生から次第に成長した形態となり、死ぬと転生して再びそのサイクルを繰り返すという彼らは、古代の伝承などからは大いなるドラゴンの幼生体なのだといわれています。しかし実際にドラゴンになったドラゴニュートを目撃した人は誰もおらず、かつて彼らの知識を分け与えられたという「ワームの友邦帝国」も滅亡して久しいのです。このため、未知なるものへの畏怖と“ドラゴンキル”の記憶から来る恐怖が彼らに対する人間一般の反応です。

 ドラゴニュートは僻地で不可思議な形状をした都市を造って集団生活を送っています。ドラゴン・パスにもドラゴニュート都市があり、そこには“超王”と呼ばれる指導者がいるといわれています。ただ、行って帰ってきた者がいないので定かなことはやはり不明です。この他にも、彼らにまつわるとおぼしき奇妙な遺跡が各地に散在していますが、詳しいことはわかっていません。

神秘の竜族

 グローランサで一番不可解な存在はドラゴンをはじめとする竜の仲間たちです。彼らは神々すらも凌駕するほどの力を備えているといわれ、一説によればこの宇宙の外側からやってきた種族なのだといいます。ドラゴニュートは一番よく知られている竜族ですが、その他にもいくつかのドラゴンの眷属が伝説などで語られたり、まれに目撃されたりしています。ドラゴンが現れた一番有名な事件が第2期末の「ドラゴンキル戦争」ですが、誰も生き残ることができなかったので、やはり確かなことは何も言えません。

恐竜
地球の中生代に生きた恐竜が、グローランサでは現存しています。特にドラゴン・パスでは多く目撃されるといいます(とはいっても希少なことは希少です)。これらは、おおよそ一般に想像されるような恐竜であり、草食もいれば肉食もいます。肉食恐竜は非常に危険な動物です。恐竜は転生に失敗して知性を失ったドラゴニュートの成れの果てだと言われています。
マギサウルス
沼地で集団生活を営むマギサウルスは、一見すると翼のないドラゴニュートによく似ていますが、草食性であることと、道具をつかむには短すぎる手をしていることで区別できます。このため、彼らは道具に頼らない原始的な文化の中で暮らしています。彼らも恐竜と同様に転生に失敗したドラゴニュートだそうですが、さいわいにも知性は保っています。
ワーム
ワームは翼も脚も持たない“竜”ですが、高い知性を持っています。彼らは一番よく出逢うタイプの竜族で、孤独をこのむものの、人間など他の知的種族との交流をまったく嫌っているわけではないようです。彼らのしゃべる言語は“古ワーミッシュ語”と呼ばれ、かつて「ワームの友邦帝国」の公用語でした。
ワイヴァーン
後ろ脚を一対持った翼竜であるワイヴァーンは、非常に柔軟なしっぽを持っており、その先端についた毒針でどんな生き物でもあっという間に殺してしまいます。そこそこの知性を持つ彼らは、ルナー帝国で養殖されて、軍用に使役されています。一頭のワイヴァーンで2〜4人の大人の人間を運ぶことができます。
夢のドラゴン
一般にドラゴンといえば“夢のドラゴン”のことを指します。彼らは伝説によく登場するように、非常に凶暴で欲深く、ずるがしこい巨獣です。その口から吐く炎は文字通りあらゆるものを溶かし尽くします。彼らは“真のドラゴン”の欲望の夢が現実世界に実体化した存在だといわれています。その証拠に、殺された“夢のドラゴン”の死骸は腐ることなく次第に存在が希薄になっていき、最後には最初からなにもなかったかのように消えてしまうのです。
真のドラゴン
グローランサで最も謎に満ちた存在が“真のドラゴン”です。彼らがいつどこからどのようにして世界に飛来したのかは、誰にもわかりません。神々ですらもドラゴンについては口をつぐむのです。“真のドラゴン”は想像を絶するほど巨大な生き物で、ほとんどの歳月を眠って過ごしているその姿は、木々が生え、集落が作られ、まるで山そのもののように見えます。ドラゴン・パスには四頭の“真のドラゴン”がいるといわれています。極東ではドラゴンが皇帝として人々を統治しています。神代、歴史時代を通して、世界の重大な転換期に必ず“真のドラゴン”の姿がありました。


その他の古の種族

 上記の四種族の他にも、グローランサには多種多様な異種族が暮らしています。その中から、主にドラゴン・パス周辺で遭遇しやすい種族をあげてみましょう。

ダック(ドゥルズ)

 アヒルが立ち上がって、翼のかわりに四本の指の付いた腕がついた姿の人型生物であるダックは、人間の子供くらいの大きさをした獣人です。彼らは口やかましいことで知られ、他の種族からは煙たがられています。サーター王国ではオーランス人たちと協力して、川や沼の近くで暮らしていたダックたちですが、現在ではルナー帝国に反逆の罪を着せられて追討されています。

セントール

 ドラゴン・パスの中南部にある“獣の谷”には、獣人たちの王国があります。そこで主導的な役割を果たしているセントールは、馬の体に人間の上半身がついた種族で、優れた楽人や弓手として知られています。彼らは衣服を嫌って狩猟生活を送っています。

ミノタウロス

 牛頭人身の大柄な獣人。他の獣人やエルフとは仲がいいのですが、人間に対しては敵意を剥き出しにします。彼らは原始的な狩猟生活を送っており、他の知的種族もちゅうちょなく食する習慣があるので、周りの種族から恐怖されています。

ニュートリング

 川や沼地で水陸両生の生活を営むニュートリングは、イモリが立ち上がったような姿をした少し小柄で穏和な種族です。水辺で渡し守や作業夫として人間と交流することはしばしばです。ただ、そのしっぽは美味であると人間に信じられており、時折食用に狩られてしまうこともあります。また、ドラゴニュートの奴隷として使役されていることもあります。

タスク・ライダー

 人間ともトロウルともつかない姿をしているために、ハーフ・トロウルとも呼ばれるタスク・ライダーは、ドラゴン・パス北辺の「忌まわしの森」周辺で略奪活動を行っている悪名高い種族です。彼らは大型の牙イノシシ(タスク・ボア)を飼い慣らしており、それに乗って集団で各地を荒らし回るのです。また、生け贄に苦痛を与えることを喜ぶ血塗られた宗教を奉じています。

バブーン

 巨大なヒヒ。知性を持った大猿であるバブーンは、ドラゴン・パスの東方にある大荒野地方で原始的な狩猟生活を集団で送っています。その社会は猿のそれによく似ており、群の中で一番強いボス・バブーンが雌と権力を独占するのです。彼らは祖先の霊を崇めており、祈祷師が魔術的な力を行使します。

モロカンス

 モロカンスは大荒野地方を住処とする種族で、一見すると大型のバクに見えます。しかし彼らは知的種族であり、他の遊牧民と同様に移動生活を送っているのです。彼らの飼育する家畜は“ガーン”と呼ばれる知性のない人間であり、そのために他の人間から恐怖とさげすみをもって見られています。


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