Rune-line

戦闘について

Combat

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最終更新2001/12/04 ぴろき

 このページでは、「ヒーローウォーズ」の戦闘システムについて考えたこと、思いついたことなどを書き連ねていきます。今後も順次追加予定ですのでよろしく。


シネマティック“抽象的”戦闘システムの運用について

 「ヒーローウォーズ」の戦闘解決は、ぶっちゃけた話、「敵味方向き合ってのAPの減らし合い」でしかありません。

 ただ、APを減らし合う際に使うことのできる能力にはルール的にほぼ制限がないため、〈剣と盾の戦闘〉vs〈雄弁〉や、肉体系能力vs魔術能力というような対決でも、まったく問題なく解決することになります。この非常な柔軟性に「ヒーローウォーズ」の戦闘が指向するスタイルを見ることができるのです(この点についてはイントロダクション記事「英雄戦争の開幕」を参照してください)。つまり、あらゆる行動を同じルールで解決してしまうため、従来のRPG戦闘システムでは再現が難しかった、多種多様な対決シーンを表現することができるようになっているのです。

 しかしこれには難点もあります。先に述べたように純粋にルールだけ採ってみれば「APの減らし合い」でしかありませんから、シーンの情景・状況描写をナレーター・プレイヤーともに常に意識しないと、抽象的すぎてわけがわからん、ということになりかねないのです。そして、事実上ルールの支援なしにシーンを逐次追っていくのは、楽しいのは確かですが、けっこう骨が折れる作業です。ナレーターひとりがシーン表現の仕事を負うとおそらくパンクしてしまいますから、プレイヤー側からも「これはこういう状況になったんじゃないか」というようにAPの増減を積極的に解釈して提案するようにするとよいのではないでしょうか。というか、そうしないとうまく機能しないような気がします、このルール。

 「APがゼロ以下」に落ちたら敗北ということになるわけですが、この「敗北」の具体的内容についても、シーン状況に応じた参加者の解釈に任されています。ルールブックにはいちおう「朦朧」「軽傷」「重傷」「瀕死」というように怪我のレベルがそれぞれの敗北段階に対応して記述されてはいますが、例えば上記の〈近接戦闘〉vs〈雄弁〉で〈雄弁〉側が勝利した場合に、〈近接戦闘〉を使っていた側が実際に怪我するというのは不合理です。ですから、最終的な敗北の効果についても、ナレーターとプレイヤーは解釈の意見を出し合うなどして、その場にあった結果を導き出すべきでしょう。一案としては、勝利者側のプレイヤーが敗者の状態を自由に決定する、というのはどうでしょう。当然ナレーターは無体な要求を拒否できますが、こうすればプレイヤーにも自由な表現機会が多く与えられることになるからです。


射撃についての私案

 遠距離からの弓矢による射撃は、現実の白兵戦でも、接近戦闘に持ち込む前に相手をひるませたり弱らせたりするという点で非常に有効な戦術です。これを「ヒーローウォーズ」ではどう表現したらよいでしょうか? 解決の私案を提示してみたいと思います。

狙撃

 狩人フレドは、森の奥に巣くったブルーの洞穴を木々の間から慎重に偵察しています。と、一匹の山羊頭のブルーが洞穴から出てきました。憎き混沌の怪物を目にして、フレドは矢をつがえます。

 拠点の見張りや暗殺対象などといった相手を遠くから射止めようとする場合には、簡易判定を用いるとよいでしょう。また、抵抗値には目標の〈見張り〉〈敵の発見〉などといった知覚系の能力、時には(特に頑健な戦士などであれば)〈強靱〉〈俊敏〉などといった肉体系の能力を使います。ナレーターは視界の良さや風の強さなどの状況を考慮して、-1〜-15程度のペナルティを射手の目標値と相手の抵抗値に課します。

▼狙撃・簡易判定のガイドライン
勝敗効果
完全勝利狙った場所に正確に命中。目標は「瀕死」に陥る。
大差の勝利狙った場所に命中。目標は「重傷」に陥る。
小差の勝利狙った場所にほぼ命中。目標は「軽傷」をこうむる。
僅差の勝利目標はひるんで「朦朧」に陥る。
僅差の敗北/小差の敗北はずれ。
大差の敗北相手に発見される。
完全敗北相手に発見された上、武器が壊れる(弦が切れるなど)などの
アクシデントに見舞われる。。

 また、狙撃する場合には、何らかの能力で強化を行うのは一般的でしょう。

乱戦中の射撃

 狩人フレドは、城塞の中でルナー守備兵と戦っている味方の戦士たちを支援するために、階段を登って高い城壁上に陣取りました。彼はそこから慎重にねらいを定めて敵兵に向け矢を射かけます。

 いったん白兵戦が起こり、継続対決が始まった後の射撃については、普通は継続対決の中の“応酬”のひとつとして単純に〈近接戦闘〉などの他の能力同様に解決します。

 ただ、この際、“応酬”で防御側が手を出せないような位置にいる射手側が負けた場合は、「矢を何本も使ったが有効な打撃は与えられなかった」というようにして、もしAPゼロ以下で敗北したら、「矢が尽きた」とか「状況的にその場に陣取っていられなくなった」とでもしておくのはどうでしょうか。

射撃によるAP譲渡

 狩人フレドは、城塞の中庭で、ルナーの指揮官に追いつめられている味方の戦士を発見しました。急いで矢をつがえると、彼は敵将の気をそらして戦士に逃げる間を与えるべく放ちます。すぐそばに突き立った矢を見て、指揮官の注意が一瞬それた機をとらえ、戦士は身をおどらせて脇に転がっていた剣をひっつかみます。

 射撃を得意とするキャラクターは、実際の白兵戦では補助的な役目を負うことが多くなるでしょう。反対に、前線に出る戦士系のキャラクターは、ロールの結果によってはあっという間にAPがゼロ近くまで追いつめられてしまうことがあります。このとき、射手がその戦士の敵を攻撃して“応酬”で勝利したとしても、負けそうな戦士のAP自体は増えませんから、他の敵によって討ち取られてしまうかもしれません。こういう場合には、直接敵と“応酬”するよりは負けそうな味方にAP譲渡を行うほうが有効です。

 射撃によるAP譲渡は、一般に射撃によって敵の気をそらすことによって、味方が体勢をととのえる隙を作る、とするとよいのではないでしょうか。

射撃系能力による防御

 継続対決の“応酬”で、弓矢をたしなむキャラクターに〈弓〉や〈スリング〉といった能力を使って、相手の攻撃を防御させようとするプレイヤーがいるかもしれません。「ヒーローウォーズ」のルールの上ではこれは特に禁じられてはいませんが、本来、射撃武器は受け流しをしたりするようにデザインされてはいないので、ナレーターは相応のペナルティを与えたり、不可能として処理するべきでしょう。また、防御に成功したとしても、石やダートを投げつけることで相手の気をそらしたりひるませたりした結果、というように表現するとよいのではないでしょうか。

相手の攻撃防御の可否
近接武器ダートや石つぶてなどの投擲武器なら-3で可能。
弓矢などの射撃武器では不可能。
射撃不可能。
魔法攻撃不可能。


逃走についての私案

 「ヒーローウォーズ」の継続対決の記述によれば、戦闘から離脱する場合も、それまでの継続対決を継続すること、となっていますが、単にそれだけでは最後まで戦い続けることに対して逃走するメリットがあまりないように思われます。そこで、ここでは逃走・離脱に関してのルール運用を考えてみることにします。なお、この私案は「hw-rules」メーリングリストでの議論を参考にしています。

逃走に使う能力

 「ヒーローウォーズ」は他の技能制システムのように技能と行為が一対一で対応しているわけではありません。これは逃走の際にも言えることで、キャラクターは逃走を試みる場合、〈俊速〉とかそういった移動関係の能力だけではなく、〈言いくるめ〉〈説得〉などといった交渉関係の能力を使ったり、あるいは魔術能力を用いて対立判定を行うことができるでしょう。

 場合によっては、他のキャラクターが〈雄弁〉などで敵の気を引いて逃走を助けるというようなことも可能でしょう。このときは、敵の注意をそらしているキャラクターが逃走するキャラクターに「AP譲渡」あるいは「強化」を行うとすればよいのではないでしょうか。

逃走の成功条件

 HW p.138の「Withdrawing from a Contest」をそのまま適用すれば、逃走を試みた者は、継続中の対立判定に勝利しなければ逃げ切れないことになります。これはちょっとひどいので、逃走の成功する条件を緩和してみることにしましょう。なおここでは逃走を試みる者を「逃走者」、その相手を「追撃者」と表記します。

追撃者が逃走者を捕らえようとしている場合逃走者は、対決で負けて「朦朧」以下に追い込まれると、追撃者に捕らえられてしまう。
追撃者が逃走者を追い払おうとしている場合完全敗北(つまり「瀕死」状態に陥る)を喫さない限り、逃走者は逃走に成功する。
追撃者がなんとしても逃走者を殺そうとしている場合逃走者は、対決に勝利するか、あるいは負けた場合も「とどめの一撃」を「朦朧」までで耐えることができれば(「軽傷」以下に落ちなければ)、逃走に成功する。
上記にあてはまらない場合「朦朧」か「軽傷」の者は逃走に成功、「重傷」か「瀕死」の者は追撃者の手中に落ちるものとする。

降伏

 西洋の古代や中世の戦いでは、実際に死ぬまでやりあうというのは余程相手の抵抗が頑強だったときくらいのもので、たいていは捕虜として捕らえてから、後々身代金をせしめるほうを優先しました。これはグローランサ、特にオーランス人の間でもいえることだと思います。降伏してもすぐに殺されるということはめったにありません。降伏もまた戦闘に生き残るひとつの選択肢だということができるでしょう。死ぬまで戦うのは狂人かウロックス(やシャーガシュ)のバーサーカーくらいのものです。

 降伏を相手が受け入れるかどうかは、降伏の意図に気づいてもらえるかどうかにかかっているとも言えます。ここはナレーターの裁量で解決するのがよいと思いますが、それとは別にルール的な処理についても提案してみることにします。

 降伏を宣言する側は、武器を捨てるなど無防備な状態になった上で、自分の持つ交渉関連の能力(〈雄弁〉や〈説得〉〈演技〉などなど)で、相手側は適当な性格能力(〈冷酷〉など)、なければ目標値6(+戦場の状況による修正)で即時対決を行います。このとき、降伏側は自分の「財産」の範囲内で身代金を提示して、その値(HW p.35以降参照)で、強化を行うことができます。降伏側が勝利すれば降伏は受け入れられ、相手は戦闘を中断して降伏した者を捕縛します。

戦場の状況修正
一対一-3
小競り合い0
主戦場+3
激戦区+6
(戦場で)降伏側の軍が敗勢-3
(戦場で)降伏側の軍が優勢+3
(戦場で)降伏側の軍が圧倒的優勢+6


その他

 戦闘システムの運用法について思いついたことをつらつらと。

多対一戦闘は厳しい

 「ルーンクエスト」でも多対一の戦闘は、少ない側が相当に不利でしたが、「ヒーローウォーズ」でもよほどマスタリーに差(少なくとも2以上)がない限り、頭数が少ないと勝利するのは難しくなります。

 複数人数との戦闘では、同一ラウンド二回目以降の防御の目標値が-3ずつ下がってしまいます(本文p.84)。もし三人がかりでかかられれば-6下がってしまうわけで、たとえ作りたてのキャラクターの最も優秀な値である5の能力を使っていたとしても、目標値は19となり、マスタリーが取れてしまいます。相手がマスタリーを持っている戦士であれば、それだけで勝つのは至難になるでしょう。


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