Rune-line

強化について

Augmentation

Rune-line

2000/07/18 ぴろき

 「強化」(augmentation)は、「ヒーローウォーズ」の中でも特殊なルールのひとつです。

 別の能力で用いる能力を増強するというのは、セッションを立ててみた結果、初挑戦のプレイヤー諸氏にはいささかわかりにくいルールだったようです。そこで、代表的な強化の例を挙げてみることにしました。


1)魔術能力によるその他の能力の強化

 いわゆる「魔術の助力」であり、最もわかりやすい形の強化といえます。ただ、特に神教魔術の神力や神技はひとつの効果に決まっているわけではないので、状況に応じて目標値を上げたり、エッジを上げたりできます。

例1:狩人、目標を射抜く
▼目標値の強化

 オデイラの狩人フレドは、遠くの崖の上でこちらをうかがっている鹿に矢を射かけるため、オデイラ神に加護を求めました。「偉大なる狩人よ、あの鹿に矢を当てさせたまえ!」。

 プレイヤーであるM君は、オデイラの神力【狩猟】17内の神技《神弓必中》を使って、〈弓〉の強化を行います。正確に命中させるため、「目標値+3」の強化を宣言。抵抗値は15です。【狩猟】17に対するM君のロールは15、ナレーターのロールも15。引き分けなので、強化は効果なしです。

 残念ながら、フレドは神の加護を得ることはできませんでした。彼は自分の技量だけで鹿を射止めようとねらいを定めます。

▼エッジの強化

 オデイラの狩人フレドは、侵略軍を指揮するルナーの指揮官の額を一撃で撃ち抜くため、オデイラ神に加護を求めました。「大いなる熊よ、邪悪のしもべの頭蓋を貫かせよ!」。

 プレイヤーであるM君は、オデイラの神力【狩猟】17内の神技《神弓必中》を使って、〈弓〉の強化を行います。一撃で相手を屠るために、「エッジ+8」の強化を宣言。抵抗値は20です。【狩猟】17に対するM君のロールは8、ナレーターのロールは19。M君の僅差の勝利(Marginal Victory)です。フレドはM君の宣言どおり、以降の継続対決で+8のエッジを得ることができます。

 弓がぼうっと輝きを増し、矢は光の筋を描いて、ねらった敵に向かってカーブを描きながら飛んでいくようになります。フレドは敵兵の背後にいる鎧の男に向かって弓を引き絞ります。

例2:蛮族戦士、敵を切り裂く
▼目標値の強化

 冒険者オーランスの戦士エーギルは、戦場で相対したフマクトの剣士と互角に戦うため、オーランス神に加護を求めました。「雷鳴の長よ、我が剣に御身の技を!」。

 プレイヤーであるS君は、オーランスの神力【戦闘】17内の神技《剣の助け》を使って、〈剣と盾の戦闘〉の強化を行います。自分よりも優れた敵に対抗するため、「目標値+3」の強化を宣言。抵抗値は15です。【戦闘】17に対するS君のロールは19、ナレーターのロールは16。S君の小敗北(Minor Defeat)です。強化は逆に−3のペナルティをもたらしてしまいます。

 エーギルの腕はにわかに重くなってしまいました。これは神の与えた試練だと考えた彼は、間合いを取りつつ決死の覚悟を固めます。

▼エッジの強化

 冒険者オーランスの戦士エーギルは、憎むべきブルーを前にしてオーランス神に加護を求めました。「嵐の王よ、我が剣に御身の力を!」。

 プレイヤーであるS君は、オーランスの神力【戦闘】17内の神技《閃きの刃》を使って、〈剣と盾の戦闘〉の強化を行います。敵の援軍が来る前に手早く勝負を終わらせたかったので、「エッジ+4」の強化を宣言。抵抗値は10です。【戦闘】17に対するS君のロールは9、ナレーターのロールは18。S君の小勝利(Minor Victory)です。エーギルはS君の宣言どおり、以降の継続対決でエッジが4増えます。

 エーギルの剣は白銀に輝き、細かい稲妻を放ち始めました。彼は雄叫びをあげると、渾身の力を振り絞ってブルーに剣をたたき込みます。


2)魔術以外の能力による強化

 「○○をすることで、××をよりやりやすくする」といったときの強化です。筆者の印象としては、何かやろうとするときには、とりあえず何かで強化することを考えると、具体的にどのようにその行為をしたか、というのか想像できて楽しいのではないかと思われます。

■目標値の強化
例1:人狼、侵入者に警告する

 テルモリの狩人グレイファーは、自分の縄張りに侵入してきたよそ者たちを撃退するために、草むらに身を伏せました。

 ナレーターは、グレイファーの〈待ち伏せ〉15を使って、彼の〈弓〉1の強化を行います。警告として相手のすぐ脇に矢を突き立てたいので、「目標値+2」の強化を宣言。抵抗値は10です。グレイファーはナレーターキャラクターなので、ナレーターがどちらのロールも行います。〈待ち伏せ〉15に対するロールは13、また抵抗値10に対するロールは20。グレイファー側の大勝利(Major Victory)です。グレイファーは宣言した+2の2倍、つまり+4のボーナスを目標値に得られます。

 とてもうまく地形を選んで身を隠せたので、グレイファーは正確にねらいを定めることができます。

例2:癒し手、病人を診察する

 チャラーナ・アローイの癒し手ドロレスは、高熱に苦しむ冒険者に取り憑いた病の精霊を見分けようとしています。彼女は、苦しみもだえて助けを求める患者をまず落ち着かせてから診察を行うことにしました。

 プレイヤーであるFさんは、ドロレスの〈患者の慰撫〉17を使って、彼女の〈病気の識別〉の強化を行います。的確に病の種類を診断するため「目標値+3」の強化を宣言。抵抗値は15です。〈患者の慰撫〉17に対するFさんのロールは13、ナレーターのロールは14。Fさんの最低限勝利です。ドロレスはFさんの宣言どおり、〈病気の識別〉の目標値に+3を得ることができます。

 手を握って大丈夫と繰り返すことで、ドロレスは患者を安心させることに成功したので、おもむろに症状について質問を始めました。

例3:商人、貴人に物を売りつける

 イサリーズの交易商人ペラは、エスロリアの女貴族に異国の品を買わせようとしています。交渉をうまく進めるために、彼は自分が懇意にしている交易ギルドの名を出すことにしました。

 プレイヤーであるA君は、ペラの〈交易ギルドのコネ〉13を使って、彼の〈値切り〉の強化を行います。それほどコネが強いわけでもないので、「目標値+1」の強化を宣言。抵抗値は5です。〈交易ギルドのコネ〉13に対するA君のロールは15、ナレーターのロールは16。A君の最低限敗北(Maginal Defeat)です。強化は逆にペナルティ−1をもたらしてしまいます。

 ペラが交易ギルドの名をしきりに出すと、女貴族は疑わしげな目を向けてきます。どうやらあまり良い印象を持たれなかったようです。ペラは冷や汗をかきながら品物を取り出します。

例4:学匠、古文書を読解する

 ランカー・マイの学匠“饒舌”マルフリスは、ジョンスタウンの図書館での分厚い古文書の調査に励んでいます。マルフリスの長所は長時間の研究にも耐えられる辛抱強さを持っていることです。

 プレイヤーのK君は、マルフリスの〈外国語の読解〉の能力を、彼の個性〈辛抱強い〉13で強化することにします。確実に読み解いて情報を得たいので、「目標値+2」の強化を宣言。抵抗値は10です。〈辛抱強い〉13に対するK君のロールは10、ナレーターのロールは12。K君の小勝利です。マルフリスは、宣言どおりボーナスを+2獲得します。

 他の人が驚くほどねばり強く研究を続けるマルフリスは、細かい点までよく目を通して有用な情報を得られることでしょう。

■エッジの強化
例1:黒騎士、敵勢をひづめにかける

 黒馬領の騎士ブランスベルクは、乗騎である魔の馬で敵兵を蹴散らします。

 プレイヤーであるO君は、魔の馬の〈剛力〉5を使って、その〈噛みつきと爪の戦闘〉の強化を行います。敵をなぎ倒して戦いを有利にすすめるためなので、「エッジ+8」の強化を宣言。抵抗値は20です。〈剛力〉5に対するO君のロールは4、ナレーターのロールは18。O君の小勝利(Minor Victory)です。魔の馬はO君の宣言どおり、以降の継続対決でエッジが8増えます。

 魔の馬は一声いななくと、かぎ爪の生えた脚を力一杯振り下ろして、敵兵に叩き付け始めます。

例2:傭兵隊長、敵の背後を突く

 陽の天蓋の傭兵隊長ヴォレックスは、敵軍の伏兵を事前に察知することで、麾下の重装歩兵団の方陣戦闘を有利に運ぼうとしています。

 プレイヤーであるKさんは、ヴォレックスの〈待ち伏せ看破〉10を使って、彼の〈シールドウォール戦闘〉の強化を行います。伏兵に対して有利な位置を確保するため、「エッジ+10」の強化を宣言。抵抗値は5です。〈待ち伏せ看破〉10に対するKさんのロールは6、ナレーターのロールは17。Kさんの小勝利です。ヴォレックスはKさんの宣言どおり、以降の継続対決で+10のエッジを受け取ることができます。

 西の谷間に沿って伏兵がいることを察知したヴォレックスの部隊は、静かにその背後まで回り込みました。彼の命令一下、方陣の重装歩兵団は無防備な敵軍に向かって押し寄せます。

例3:宣教師、蛮族に教えを垂れる

 ルナーの宣教師コスティオは、無知な蛮族にルナーの教えを広めるために、聖典の中からいくつかの説話を引用して説法することにしました。ナレーターは、これには1回のAP交換を1週間と数える継続対決で解決するとしました。

 プレイヤーであるWさんは、コスティオの〈原典を引用する〉19を使って、彼の〈説法〉の強化を行います。なるべく効率よく教えを浸透させるために「エッジ+4」の強化を宣言。抵抗値は10です。〈原典を引用する〉19に対するWさんのロールは20(!)、ナレーターのロールは1(!!)。Wさんの完全敗北(Complete Defeat)です。強化は逆の効果を発揮してしまい、コスティオは−8のハンディキャップを負ってしまいます。

 ルナーの説話は、野蛮な民衆にはいまいちピンとこなかったばかりか、彼らの神をおとしめるものだとして反感まで抱かせてしまいました。コスティオはこれ以上の布教を続けるべきか悩みます。

例4:衛士、決死の守りを固める

 エルマルの衛士“不屈の”ビヨルンは、主立った者が不在中の村を襲ってきた山賊の迎撃に立ち上がりました。彼は命に代えても村の人々を守ると決意を固めます。

 プレイヤーのN君は、ビヨルンの〈槍と盾の戦闘〉の能力を、彼の関係〈氏族への忠誠〉17で強化しようとします。多勢でかかられてもひるまないよう、「エッジ+6」の強化を宣言。抵抗値は15です。〈氏族への忠誠〉17に対するN君のロールは1、ナレーターのロールは16。N君の大勝利です。ビヨルンは、以降の継続対決において宣言の2倍、つまり+12のエッジを得ることができます。

 ビヨルンの心に衛士としての使命感が燃え上がります。門の前に仁王立ちになった彼は、やみくもに襲いかかってくる山賊どもを獅子奮迅の戦いで撃退することでしょう。


強化の失敗について

 正直なところ、最低限敗北をしただけで逆のペナルティ、ハンディキャップをくらってしまうというのは、いささか厳しいように思います。かなりハイリスクなので、余分にロールを行うよりは、強化せずにいこう、という雰囲気が出てしまう懸念があります(実際、最初のプレイではいまいち強化は使ってもらえなかったです)。

 私案としては、「大敗北」で逆の効果を、「完全敗北」で2倍の逆効果をこうむるようにしたほうが、プレイヤーがより手軽に強化を使えるようになるのではないでしょうか。


Home

inserted by FC2 system